イーロン・マスクの脳インプラント企業「Neuralink」実験動物の扱いめぐり当局が調査(ロイター報道)

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Munenori Taniguchi

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イーロン・マスク率いる脳~コンピューターインターフェイス開発企業 Neuralink に対し、米国の動物福祉法に違反するとの疑いで米国の政府当局が調査に入っているとReutersが報じています。

Neuralinkが先月30日に開催したイベント「show and tell」で、マスク氏は脳インプラント手術を受けたサルが「考えるだけでコンピューターにテキスト入力している」とする動画を公開。「6か月以内には人への臨床試験を行いたい」との意向を示し、いずれは自身にもこの脳チップを埋め込むことを希望していました

ReutersがNeuralinkの内部文書の内容として伝えるところでは、同社は2018年以来、280頭を超えるヒツジ、ブタ、サルを含む、合計1500頭以上の動物を殺してきたとのこと。もちろん、この数字が即、Neuralinkが違法行為をはたらいていることを示しているわけではありません。いずれの実験による動物の死亡例も、米国農務省 (USDA)の審査においては法律違反とは判断されていません。

ただReutersは、20人以上の現職および元従業員への文書とインタビューから、動物の実験方法に対する社内の反対があったとし、開発を急ぐマスク氏の圧力が実験の失敗につながったと報告。そしてこの時期に当局の調査が行われることになったと伝えています。たとえば、マスク氏は数年前から従業員に対し、頭に爆弾を取り付けられていると思って働き、業務の進歩がなければ「経済的な失敗」によって会社を閉鎖することになると警告していたと元従業員は述べているとのこと。さらにあるときは、麻痺患者の歩行機能を回復させるインプラントを開発したスイスの研究事例を社内メールで配布し「とにかくわれわれは後れをとっている。不愉快だ!」と述べたとのことです。

このようなプレッシャー環境にあって、Neuralink従業員の間では、落ち着いて作業を進める雰囲気が失われている可能性があるかもしれません。内部文書では、豚86匹と猿2匹を使った4つの実験で、人為的ミスが疑われる結果が出ていたことが判明したと報告されています。そして、これに伴う再実験でさらに多くの動物が天に召されることになりました。これが事実ならば、実験に使われた動物たちは、本来なら避けることができた痛みや苦しみを不必要に与えられたと言えそうです。

今年2月には、動物擁護団体の「責任ある医療のための医師会(PCRM)」が、Neuralinkによる実験が引き起こした問題で6頭のサルが安楽死させられていたことについて「侵襲的な脳実験に使われたサルの扱いに関する、動物福祉法の明らかな、かつ悪質な違反」だと非難しています。ちなみに安楽死させた理由は、脳チップそのものの問題や、外科的接着剤の扱いに関する合併症、その他の感染症などとされています

PCRMからの非難に対し、マスク氏は11月30日のイベントで「われわれは細心の注意を払っており、インプラントを行う際もデバイスが探索的でなく、確認的であることを常に望んでいる」と答えていました。ところがReutersは、内部文書の記録から「探索的手術」との記述が多数発見されたと述べており、Neuralink内部では10月に、従業員に対して「探索」という言葉の使用を禁止する通達が出されていたとも伝えています。


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《Munenori Taniguchi》

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