「Notion AI」「note AIアシスタント」はワークフロー効率化に使えるか。ドキュメント制作支援AIをプロライターはこう見る(小寺信良)

テクノロジー AI
小寺信良

小寺信良

ライター/コラムニスト

  • facebook
  • X

18年間テレビ番組制作者を務めたのち、文筆家として独立。家電から放送機器まで執筆・評論活動を行なう傍ら、子供の教育と保護者活動の合理化・IT化に取り組む。一般社団法人「インターネットユーザー協会」代表理事。

特集

2月23日に、ドキュメンテーションサービスのNotionがドキュメント制作支援AIを正式発表した。すでに同日から全ユーザーが使えるようになっている。

Notion AIに関しては、こちらの記事で方向性についてまとめているので、参考になるだろう。

記事によれば、アルファ版ユーザーが期待したのは「著者ではなく編集者」だったという。つまり記事を書いて欲しいのではなく、書いた記事あるいはこれから書く記事についてサポートして欲しいということである。

提供される機能としては、

1. テキストを要約する
2. 翻訳・文章を長くする/短くする
3. テーマを与えてアイデアを得る

の3つに分類できるという。

筆者は普段、Notionはニュース記事のクリッピングや取材時のメモ書きなどに利用している程度だ。まあアレだ、昔Evernoteでやってたことをそのまま乗り換えただけである。だが日常的に使用しているツールで文章作成支援AIが使えるのは大きい。早速試してみた。


※この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年2月27日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。コンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もあります。



どう使う?「テキスト要約」

プロのライターとしてテキストの要約が必要なシーンというのは、実はあまりないかもしれない。職業文筆家としては、人が書いた文章を一応隅々まで読んで自分なりに咀嚼するのも仕事のうちではある。だが議事録やインタビュー起こしなど、まだ整理されていない文章のサマリーがAIで読めるのは楽である。

以前、大阪でシーマに取材した際の約1時間半のインタビュー起こしテキストが手元にあったので、これで試してみた。文字起こし自体は、音声ファイルを「Notta」というAIサービスに食わせてテキスト化したものである。

文章を全選択して右クリックすると、「AIに依頼」というメニューが出てくる。そこに「このインタビューのうち、中継に関する部分をまとめて」と依頼した結果がこの文章だ。

中継に関する話題は、山の中のキャンプ場中継やゴルフの中継などで取り上げられました。中継に必要な回線がない場合は、持つ動いたワークを利用することも検討されました。また、中継に関するネットワーク構築には、ネットワーク屋さんの協力が必要であるとの意見もありました。また、バックアップに関する話題もあり、バックアップを真剣に作ろうとすると、1セット全てのものが必要となることが分かりました。

さらに、中継を行う際には、事前の準備が非常に重要であることも指摘されました。入出力を作っておかないと、映像の機械が故障した場合に対応できないことがあるため、準備に時間をかける必要があります。また、中継に関するニュースを作り、中継者や視聴者などに共有することも大切だとの意見もありました。

このように、中継には様々な面での課題があることが分かりました。しかし、技術の進歩によって、モバイルバッテリーを利用した中継やSRTの伝送など、新しい手法も出てきており、今後さらなる進化が期待されます。

一方筆者がこのインタビューを元に書いた記事がこちらである。

AIによるサマリーは、インタビューの趣旨としては間違ってはいないものの、人間、特に筆者が面白いと思ったポイントにはかすりもしないという結果になっている。もっと大事なとこがあるだろう、と突っ込まざるを得ないが、まあ専門的な知識がないと話が読みの取れない部分が多数あり、まさに業界のことを何にも知らない大学生のインターンを連れて行ったらこうなりました的なまとめになっている。

インタビューの中でどこに食いつくかが、聞き手・書き手の個性になるわけで、そこがまるっとAIに変わるという事にはならないだろう。逆に客観的に大事なポイントは指摘してくれるので、そこを相手が言いたかったこととして捉えてみるのは、あながち間違ってはいないかもしれない。

「翻訳」機能はかなり使える

これまで外国語の記事翻訳には、DeepLを利用してきた。ブラウザに拡張機能を入れておけば、文章を選択した時点でDeepLのアイコンが出てくるので、それをクリックすると対訳が表示される。

一方Notion AIの場合は、URLを指定して「これを翻訳して」と書き込むだけで翻訳してくれる。先日MetaがInstagramに「ブロードキャストチャンネル」を追加したというプレスリリースが出ていたので、これを翻訳させてみた。

その結果が以下である。

Instagram、放送チャンネルを導入し、クリエイターがフォロワーとの接続を深める

Instagramは、クリエイターがフォロワーとの接続を深めるための新しい機能として、放送チャンネルを導入すると発表しました。

この新しい機能を使用すると、クリエイターはライブストリームを定期的に配信し、フォロワーが参加し、コミュニティを形成することができます。また、フォロワーは放送中にコメントを投稿し、クリエイターとリアルタイムで交流することができます。

Instagramは、この新しい機能により、クリエイターがフォロワーとより強いつながりを築き、コミュニティを育成することができると述べています。

放送チャンネルは、今後数週間以内にすべてのInstagramアカウントに展開される予定です。

この新機能は、Instagramのクリエイターコミュニティにとって一歩進んだものとなります。クリエイターは、今まで以上にフォロワーとの交流を深めることができるようになり、ライブ配信を通じてより多くの人々に到達することができます。

Instagramは、これまでにも様々な新機能を導入してきました。たとえば、ステッカーやフィルター、ストーリーズなどがあります。これらの機能は、Instagramのユーザーにとって魅力的であり、人気を博しています。

放送チャンネルの導入により、Instagramはさらにユーザーベースを拡大することができるかもしれません。今後も、Instagramはそのユーザーベースを拡大するために、新しい機能を導入していくことが期待されます。

この文章のうち、「この新機能は、」以下の文章は、AIの「続きを書く」機能で書かせたものである。ページ全文が翻訳されなかったので「続きを書く」を試してみたのだが、この部分の文章は原文にはない。AIがどこかからか情報を拾ってきて作り上げたものである。

捏造ではないが、これがプレスリリースにそのまま書かれていると勘違いしてしまいがちだ。ページの途中までしか翻訳されなかったのは、ページの構造としてここでいったん切れているからだろう。

全文を翻訳したかったら、一旦Notionに記事をクリッピングして、そのページ内でAIに「この文章を翻訳して」と依頼すると、クリッピングされたレイアウトを守りながら翻訳してくれる。

▲サイトのレイアウト通りに翻訳してくれる

クリッピング機能との合わせ技で、これは結構使い出がありそうだ。

「文章アイデア支援」も悪くない

3つ目はテーマを与えて、それについて何を書くべきか、アイデアを出してくれる機能だ。AIに、「デジタルカメラを使った動画撮影のコツについて書きたい」と依頼した結果がこちらである。

- 手振れを防ぐ撮影方法についてのアドバイス
- ズームを使った撮影のコツと注意点
- 音声のクオリティを上げるためのマイクの使い方について
- 暗い場所での撮影についてのアドバイス
- 動きのある被写体の撮影についてのテクニック
- カメラの設定の調整方法についてのアドバイス
- 長時間の撮影に対するバッテリー寿命の延ばし方について
- 撮影シーンに合わせたフレーミングの方法について
- 編集時に役立つ撮影テクニックについてのアドバイス
- 撮影前のチェックリストとして確認すべきポイントについてのアドバイス
- 撮影後のデータ管理についてのアドバイス
- 背景のボケを生かした撮影方法について
- 照明を上手に使った撮影方法についてのアドバイス
- カメラの三脚を使った撮影方法についてのテクニック
- 外部ストレージの活用方法についてのアドバイス
- 色調補正やエフェクトのかけ方についてのアドバイス
- カメラアングルによる撮影方法についてのテクニック
- スローモーション撮影の方法と注意点についてのアドバイス
- イメージセンサーやレンズの選び方についてのアドバイス
- 撮影の際のライティングについてのアドバイス

要素としてはなかなか悪くないのではないだろうか。一般人が知りたいようなものが網羅されており、いわゆる「教えて」系の短期集中連載の立案で、誰かと相談しているような感覚になる。

実は同様の機能がnoteにもあるので、同じ質問をしてみた。

▲noteによる記事執筆支援の結果

内容の洗練具合からすればまだNotionには及ばないが、こちらはまだβ版である。これから学習が進むことでレベル的にはすぐ追いつくだろうが、何を学習したかによって結果は異なってくるはずなので、両方を使ってバランスを取るというのも悪くない方法だろう。

こうした記事作成支援機能は、ライターにとっては良きアシスタントであり、たとえ月額1000円ちょっと払っても全然惜しくはない。

他方でもっとAIに入ってきて欲しいジャンルは、日本語変換だ。macOSの標準変換やATOKなどを使っているが、未だ同音異義語の誤変換には悩まされている。たとえば定年後の再就職の話を書いているときに、「しょくたく」と入力したらそれは「嘱託」の事だろう。だが「食卓」を第一候補に挙げてくるのは、単純にそちらの変換頻度の方が高いからだ。今書いている文章全体をスクリーニングして文意を読み取っていれば、「嘱託」と書きたいことはわかるはずである。

また誤って「たくしょく」と入力してしまった場合には「もしかして嘱託?」ぐらいのサジェスチョンはして欲しいところである。

自分に代わってAIに文章を書いてほしいというニーズは、それほど高くない。だが書くにあたっての支援は、まだまだ深掘りしていけるジャンルである。あんまりやりすぎるとなんだかAIに書かされている気分になってしまうが、人がやって「面白い」という部分は残して、「辛い」と思う部分をAIが担当してくれるというのが、理想的なあり方なのではないだろうか。

《小寺信良》

小寺信良

小寺信良

ライター/コラムニスト

  • facebook
  • X

18年間テレビ番組制作者を務めたのち、文筆家として独立。家電から放送機器まで執筆・評論活動を行なう傍ら、子供の教育と保護者活動の合理化・IT化に取り組む。一般社団法人「インターネットユーザー協会」代表理事。

特集

BECOME A MEMBER

『テクノエッジ アルファ』会員募集中

最新テック・ガジェット情報コミュニティ『テクノエッジ アルファ』を開設しました。会員専用Discrodサーバ参加権やイベント招待、会員限定コンテンツなど特典多数です。