AIは、チェスのようなボードゲームの大半ではすでに人間よりも強くなっています。これはさほど驚くことではありませんが、そこに反射神経や手先の細かな操作が必要になるゲームだったらどうでしょうか。
チューリッヒ工科大学の研究者Thomas Bi氏とRaffaello D’Andrea氏は、物理的なスキル、手先の器用さ、力加減が必要なラビリンスゲーム(縦横2つのつまみでボードを傾け、ボールを穴に落とさずにゴールまで導く迷路ゲーム)を人のスピードではとても追いつけない速さでクリアするAI「CyberRunner」を発表しました。
CyberRunnerはカメラで盤面のイメージを取得しながら試行を繰り返すことでアルゴリズムがつまみを動かし、ビー玉をゴールに導く方法を学ぶようになっています。研究者らはこのAIが「ゲームを理解するにつれて、どのようにしてビー玉を動かすのがより有望かを認識していく」として、実際にゲームを行うごとにCyberRunnerは優秀になっていったと語っています。
なお、AIはときおり、ビー玉に壁や穴を飛び越えるショートカットを発見して使うようになったものの、それらはルール違反として再び使わないよう手動で調整しています。
しかしそれでも、CyberRunnerは約6時間の学習の間にメキメキと腕を上げ、同じ時間を練習に費やした人間ではとても追いつくことのできない、14.48秒という速さでビー玉をゴールに送り届けられるようになりました。
実験に使われた迷路ゲームのBRIOの記録としては、研究者らの認識する限り世界最速の人間による記録である15.95秒を超える数字です。
研究者らはCyberRunnerをオープンソースとして公開しています。タカラトミーの「アスレチックランド」ゲームや、エポック社の「スーパーマリオ大迷路ゲームDX」を誰よりも速くクリアするようAIを鍛えてみるのもアリかもしれません
Thomas Bi,Raffaello D'Andrea " Sample-Efficient Learning to Solve a Real-World Labyrinth Game Using Data-Augmented Model-Based Reinforcement Learning "
https://doi.org/10.48550/arXiv.2312.09906