まだやってんですか、と言われたら返す言葉もないのだが、まだKeychron K11 Proをカスタマイズし続けている。
前回は全てのキーキャップをフルハイト型に交換して悦に入っていたわけだが、せっかくロープロファイルのキーキャップもあることだし、これを組み合わせたらさらに文章入力に最適化できるのではないか。
そう思いついたのが夜中の12時頃で、そこから居ても立ってもいられなくなってベッドを抜け出してひたすらキーキャップを抜き差しして試行錯誤した。その結果、かなり日本語入力に特化することができたのではないかと思っている。
キーを2層構造にするという発想
まず出発点は、ShiftキーやCommandキーなどのモディファイヤーキーは文字キーに比べれば格段に使用頻度が下がるので、ここは低い方が使いやすいんじゃないか、というところであった。
そこでまず、アルファベットキーの周囲にあるキーを低くした。ただその中でスペースキーとEnterキーは日本語入力する上で欠かせないので、ここだけは高いままとした。記号キーも文章を書く上ではそれほど使わない。これも低いキーキャップに差し替えた。
▲上から見てもわからないが、段差が結構ある
▲アルファベットキー以外を低くしてみた
しばらくそれでテストしていたのだが、よく考えたら「<」と「>」キーは句読点で使用するため、頻度が高い。これは高い方がいいだろう。また「ー」キーも意外に使う。いわゆる「音引き」である。これは筆者がカタカナ用語を多用するからだろう。
▲音引きや句読点入力のキーは高くした
その一方で、「X」「C」「V」キーは、日本語入力ではほぼ使わない。小書き文字を入力する時には「X」を使うことはできるが、大抵は「ちゃ」や「りょ」など、直前の子音の次に「H」を入力すれば解決できる。
「C」は「K」があれば使わないし、「V」は「ヴァニラ」「ヴァージニア」など「ヴ」を入力する時以外には使わない。むしろカット、コピー、ペーストというショートカットで使用するだけである。これはCommandキーも低くした関係で、同じ高さの方が使いやすい。
そうなると「Z」をどうするか悩ましいところだが、「ざ」行の入力では必須なので、これは高いキーで残すことにした。Command+ZでUndoを使うが、やり直すという作業はよく考えて慎重に行なう作業なので、段差があってもそれほど不便はないという考えである。
ESCキーは高いまま残したが、これは使用頻度が高いからではない。「ー」キーを高くしたことで、これとESCで数字キーを挟むことで、位置をわかりやすくした。10キーをブラインドタッチできる人は多いが、上部の数字キーまでブラインドタッチで入力する人は、実際少ないのではないかと思っている。「1」と「0」の位置が手探りでわかれば、入力もしやすいのではないかと考えたからだ。
▲最終的なレイアウトはこういう形に
6キーだけ高くするというのもトライした。Alice配列の特徴で左右の分かれ目が6と7の間にあるので、これまでKinesisで5と6が分かれ目だったクセが抜けず、5と6を誤入力してしまうからである。
ただ実際に使ってみると、数字入力は割と連続して行なう事が多いことから、1つだけキーが違うことでかえって使いづらいということがわかった。現在はすべて低いキーで統一している。
▲6キーだけ高くしてみたが、さすがにこれは今一つだった
見た目はキモいが超使いやすい
実際使ってみると、バカみたいに入力しやすい。なにしろ使うキーだけがすべて同じ面にあるので、文章を書くだけならめっちゃ最適化されているのである。Enterキーが出っ張っているのもいい。また「ー」キーを残したのも正解だった。
キートップを交換した際、キースイッチ3つぶんのキーの入力がイマイチ取りこぼすという過大があり、シリコンテープを間に詰めることで一応は解決したのだが、元々のオリジナルキーキャップに戻したことで取りこぼしへの不安がなくなった。
本当は左右に分かれたスペースバーもキーアサインを変えて別の機能に割り当てようと思っていた。KinesisはEnterキーが右手親指にあるからだ。そこでKarabiner Event Virewerを使ってキーコードを調べてみたところ、右スペースと左スペースは、同じキーコードを発信していた。つまり、左右の区別がない。
確かにこれまでのキーボードにはスペースバーが2個あるという発想がないので、そもそもキーコードを振り分ける要素がないのかもしれない。ちなみにBキーも2つあるが、これも同じキーコードを発していた。残念ながら別の機能への割り当ては難しいようだ。
しかしこうして俯瞰してみると、キモいことはキモい。ただ実際に文章を書く時に使用するキーなんて、実はこれぐらいだったんだなという感慨もまたある。
これまで妙なキーボードもたくさん買ってきた。色で機能を差別化したものや、独自の色配列で発注できるキーボードはあるが、キーの高さで機能の差別化を図ったものはないだろう。過去使用した中では、Detalux SpaceSaverというキーボードはEnterキーだけ高いというものがあったぐらいで、キーボードが激しくコモディティ化した現在においては、流通しているものはほとんどないだろうと思われる。
▲「VARMILO」というサービスではオリジナルキーカラーが発注できる
▲Enterキーだけ出っ張っていたDetalux SpaceSaver
一方でキーキャップだけが簡単に手に入るようになった今、こうした高さによるキーの差別化が簡単にできるようになった。おそらく見る人が見れば「わかる」と言われるだろうが、普通の人から見たら「なにこれ?」というものだろう。
どう考えても世界に1つしかないキーボードは、タイピングのたびに非常に高い満足感を与えてくれる。
※この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年1月22日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。コンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もあります。