Boston Dynamicsは、およそ11年前に米国防高等研究計画局(DARPA)の資金援助を得て開発したヒューマノイドロボット「Atlas」を引退させることを明らかにしました。
Atlasは災害などにおける不明者の捜索や救助活動を念頭に、起伏の激しい場所や人には危険な場所に立ち入って様々な作業をこなせるよう設計・開発されました。
Atlasは油圧式の力強く瞬発力ある関節を持ち、パルクールを得意とするほど機敏な動作が大きな特徴です。Boston Dynamicsはその運動能力の高さを示すさまざまな動画をYouTubeで公開し、世の中を驚かせました。
今回発表された動画はこれまでにAtlasが見せてきた運動能力を示しつつ、その訓練の風景も織り交ぜたものとなっています。いつもは華麗な身のこなしでその軽やかな動きを誇示していたAtlasですが、この半分NG集と化している動画では、その身軽さに至るまでに幾度もとなく躓いたり転倒したりしていたこともわかり、物事の習得のために試行錯誤を繰り返す人間っぽさを感じてしまうかもしれません。
Boston Dynamicsは動画の解説文で「ほぼ10年にわたり、Atlasは私たちの想像力を刺激し、次世代のロボット工学者にインスピレーションを与え、この分野の技術的な障壁を飛び越えてきた」とその足跡を述べています。Atlasは最近も、工場で重量物を運べるよう、手の先に者をつかむ機能を追加している様子が伝えられていました。
しかし最終的に、当初の目的だった人命救助活動などに参加することはなく、人間に取って大変な作業を肩代わりする仕事に就くこともかなわなかったようです。
また動画の解説文の後半には「いま、油圧式のAtlasロボットはくつろぎ、リラックスする時間を迎えた」と述べられています。わざわざここで「油圧式」という言葉を使うあたり、Atlasに代わる電動アクチュエーター式のヒューマノイドロボットを用意しているのだろうかと気にもなります。実際、他社で生身の従業員たちとともに作業をこなす目的で開発されているヒューマノイドロボットはいずれも、電動アクチュエーター式のものです。
とはいえ、とりあえず今は、動画の最後で深々と一礼するAtlasの姿に「お疲れ様」の意味でいいねを送りたいところです。
ちなみに、Boston Dynamicsが生み出したロボットの「Spot」はいくつかの職場を獲得し、巡回警備などの業務に就くこともありました。