耳をふさがないヘッドホン『nwm ONE』発表会・試用レビュー。装着感と通気性は抜群、 オープンなのに迫力の低音と音漏れ低減(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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 空間に音場を作るPSZ(パーソナライズド・サウンド・ゾーン)技術を引っ提げ、NTTからスピンアウトしたNTTソノリティが、新たなヘッドホンを発売しました。

 同社はnwm(ヌーム)というコンシューマー向けブランドでイヤホンを製品化してきましたが、今回投入するのは「nwm ONE」というフラッグシップモデル。初のオーバーヘッド型です。販路はAmazonや家電量販店など。オープン価格ですが、Amazonの直営店では3万9600円で販売されています。


NTTソノリティは、オーバーヘッド型スピーカーのnwm ONEを発表した。写真左は同社の坂井博社長、右はアンバサダーを務める磯村勇人さん

(▲画像:nwmシリーズとして初のオーバーヘッド型。デザインもシンプルにまとめている)

 オーバーヘッド型のヘッドホンというと、耳の周りをすっぽり覆って、外音をシャットアウトするのが一般的。この形状のため、顔にしっかりフィットしていれば音漏れも防げます。これに対し、nwm ONEはヘッドバンドにリング状のパーツがつき、そこにスピーカーがぶら下がっているような形を採用しています。

(▲画像:通常のヘッドホンとは異なり、耳を一切遮蔽しないデザイン)

 通常のヘッドホンであればパッドがある部分がスカスカで、スピーカーも耳から少し離れた位置に配置されています。音が全力で外に漏れてしまいそうな形状ですが、それを防ぐのがPSZ技術。スピーカーの回りから、逆位相の音を発生させ、音を空間に閉じ込めることで周囲への音漏れを遮断します。

(▲画像:音を閉じ込めるPSZ技術。NTTソノリティは、この技術を生かすために生まれた企業だ)

 実際、nwm ONEをかけている人の耳元まで近づいてみましたが、音はまったく聞こえてきませんでした。これなら、電車で隣に座った人に音が聞こえてしまったり、静かなエレベーターの中で派手に音楽を鳴らしてしまったりといった心配がありません。耳の周りがスカスカにも関わらず、ここまできっちり音漏れを防いでいるのには驚きました。

 一方で、イヤホン型とは異なり、ドライバーが大型のため、迫力は十分。nwm ONEでは、音漏れが少ない中広域用の12mmドライバーと、低域用の35mmドライバーをそれぞれ搭載しており、音漏れ防止と音の迫力を両立させたといいます。

(▲画像:12mmの中広域用ドライバーとは別に、35mmのウーファードライバーを搭載)

 この形状のメリットは、圧倒的な着用感の良さにあります。一般的なヘッドホンとは異なり、耳の回りを遮蔽しなくてもいいため、顔に強く押さえつける必要がなくなります。そのため、リング状のパーツは、圧が弱め。耳が押さえつけられることもなくなるので、長時間の利用にも適していると言えそうです。

 発表会に登壇していたファッションモデルの秋元梢さんは、ピアスをつけたまま装着しても痛くならないことや、髪が押さえつけられず、ヘアスタイルが崩れにくいことをメリットとして挙げていました。

試用してみた筆者も耳元まで髪が伸びており、通常のヘッドホンは髪の毛が挟まれる不快感がありましたが、nwm ONEではそれがかなり軽減されていました。

(▲画像:発表会に登壇した秋元梢さんは、大ぶりのピアスを着けても痛くないとコメント。実際、筆者も試したが、軽い着け心地で耳への負担が少なかったのが印象的だ)

 押さえつける力が弱いため、メガネとの両立も容易になります。通常のヘッドホンも、メガネを着けたまま利用できないことはありませんが、ツルの部分がグイグイ押さえつけられてしまうのが難点でした。

 また、耳の周りががら空きになるため、特にこの季節は、蒸れてベトベトになってしまう心配もありません。高温多湿の日本にこそ、向いた製品と言えるでしょう。逆に、真冬などに防寒用のイヤーマフ代わりに着けられるメリットはなくなってしまいますが……。

 「没入から共存へ」をコンセプトにイヤホンを開発しているNTTソノリティだけに、nwm ONEにも周囲の音を遮断するような没入感はありません。逆に、スカスカな見た目通り、周囲の音は丸聞こえになります。

実際、発表会でも、nwm ONEを装着し、音楽を流したままの状態でも、周りのスタッフの人と何の問題もなく会話することができました。

(▲画像:ゲストトークセッションは、音楽を流したまま進行。それでも普通に会話が成り立っていた)

 一般的なヘッドホンとはコンセプトが真逆のため、当然ながらノイズキャンセリング機能も搭載されていません。そのため、騒音の大きな場所でとにかく音楽にだけ集中したいという用途には向かないこともあります。例えば、飛行機での移動中だと、間違いなく周囲のうるささはそのまま残ってしまうはずです。

 とは言え、装着感が抜群にいいため、長時間移動での利用には適したアイテムです。イヤホンとは違い、音圧もしっかりあるため、ある程度音量を上げてしまえば、爆音の飛行機内でも音楽を聞くことはできそうです。長距離の国際線など、かなりの時間装着していたいようなシチュエーションでは、こちらの方が快適になることもあるでしょう。

 オープンイヤー型のイヤホンは、今急成長している分野。6月は、前年比で100%と、約2倍に市場規模が膨らんでいます。一方で、これまでは耳にかけるイヤホン型が中心で、音質が二の次になっていた側面があることも否めません。快適な装着感を維持しつつも、この課題に挑んだところにnwm ONEの独自性があると言えそうです。

(▲画像:急成長するオープンイヤー型イヤホン。nwm ONEは、この市場に殴り込みをかけた製品と言える)


《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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