F1は2030年までにCO2排出のネットゼロを目指すことを目標に掲げ、F1マシンが使用する燃料も今シーズンから「E10」と呼ばれる、エタノールを10%混合した燃料に変更されています。
また今年6月には、2026年に導入される新しいパワーユニットの規格として、100%持続可能燃料を使用することを打ち出しています。とはいえ、CO2排出ネットゼロを実現するには、レースに使う燃料を特殊なものにするだけでは足りません。そこで、たとえば各国で行われるレースの転戦スケジュールを調整して移動にかかるコストや燃料消費を最低限に抑えたり、航空機輸送の際のコンテナの変更によって輸送効率を上げたりといったことが計画されています。
そんななか、F1に参戦している中でも最大規模のチームのひとつであるメルセデスAMG F1チームも、一部のレースで独自にCO2削減のための実験を行っています。
陸続きの欧州での転戦では、F1チームはマシンや必要な資材を運ぶため独自にトランスポーター(輸送トラック)を使用します。今シーズンは8月から9月にかけて、欧州でベルギー(スパ・フランコルシャン)、オランダ(ザントフォールト)、イタリア(モンツァ)と、3週連続でレースが行われましたが、このレース間の移動に、メルセデスチームは16台のトランスポーター(輸送トラック)を使用しました。
そして、これらのトランスポーターの燃料に、ディーゼル燃料ではなく、植物油脂由来のバイオ燃料(Hydrotreated Vegetable Oil:HVO100)を試験的に導入、使用した燃料の分析から、3連戦における貨物輸送で排出されるCO2がディーゼル燃料を使用した場合に比べて4万4091kgも削減できたと発表しました。これは割合でいえば89%もの排出量削減になります。
メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ウォルフ氏は「持続可能性はメルセデスF1チームのオペレーションにおける中核を成し、陸上輸送にバイオ燃料を試用することも、われわれのすべての行動や決定に持続可能性を組み込むというコミットメントのひとつです」と述べています。
各チームができることからコツコツとこのような取り組みを積み重ねることも、持続可能性のためには必要なこと。トップチームのひとつであるメルセデスが率先してこのような取り組みを行うことは称賛されるべきことと言えるでしょう。
ただF1は近年、年間のレース開催数を増やしており、9月20日には過去最多の24レースを組み込んだ2023年の年間スケジュールが発表されました。その結果、欧州におけるレース開催数の比率は低下し、せっかくのメルセデスの取り組みもF1サーカス全体の輸送におけるCO2排出にに比べると、さほど大きな効果ではないかもしれません。
ちなみに今年は、コロナ禍で中止されていたF1日本グランプリが3年ぶりに開催、10月8日に決勝レースを迎える予定です。昨年、7年ぶりの日本人レギュラードライバーとしてデビューした角田裕毅選手が初の凱旋レースでどのような活躍を見せるのかに注目が集まっており、またレース前には声優・歌手の水樹奈々さんによる国歌独唱が行われるとのこと。チケット売れ行きも好調なようです。