イーロン・マスクが、11月29日に予定していたTwitter Blue有料プランの加入受付再開をさらに延期しました。期間は「なりすまし防止策に確信が持てるまで」。
あわせて、審査なしで誰でも購入できる「認証済み」バッジと、企業など組織の認証バッジで色を変えることになるだろう、と述べています。
「認証済み」バッジつきの有料プランTwitter Blueは、イーロン・マスクがTwitterのCEOに就任して最初に手掛けた施策のひとつ。以前からあった有料プランを月8ドルに値上げするとともに、企業等の公式アカウントと同じ青い「認証済み」バッジを誰でも本人確認なしでつけることができ、ツイートの優先表示や広告半減といった特典が得られる内容でした。
Twitter、月8ドルで認証マークの販売を開始「あなたもセレブや企業や政治家のように青いチェックマークが持てます」
従来の認証済みバッジは著名人や企業、報道関係者など、偽アカウントやなりすましの被害が多い特定のアカウントに対して、Twitterが本人確認済み公式の意味で付与していました。
しかしTwitterを買収したイーロン・マスクは、従来の認証済みアカウントを(旧)Twitter社によって不透明なプロセスで選ばれた特権階級であり、不当な既得権益を得ているだけでなく、手に負えないほど不正が蔓延しているとして繰り返し非難するとともに、「持てる者と持たざる者、貴族と平民のような従来の仕組みはクソ」「民衆に力を」と称して、有料プランに入れば誰でも、支払手段を登録するだけで本人確認なしで同じ青い認証済みバッジをつけられる仕組みをアピールしていました。
Twitter、旧「認証マーク」は本人確認なしで誰でも購入可能に。著名人は新設の「公式マーク」で区別
これまでは本物の公式アカウントか区別する目印だった青いチェックマークが、誰でも審査不要で手に入るようになれば、いたずらや詐欺などの目的で既存の著名人や企業のふりをするなりすましが増えることはTwitterユーザーからも懸念の声があり、実際に社内でもスタッフがイーロン・マスクに成りすまし多発の危険性と広告ビジネスへの悪影響を説く報告書を提出していたことが分かっています。
社外の懸念や社内の諫言はスルーして11月9日より加入受付を開始した新Twitter Blueですが、やはり警告どおりになりすましが横行し、単なる悪ふざけだけでなくTwitterの主な収益源である大手ブランドのイメージを損なうものや、誤情報で企業の株価に影響を与えるものもあったために、Twitter は約2日で新規の加入受付を停止していました。
Twitterで「認証済み」偽アカウント急増、新Twitter Blue有料プラン受付を停止
イーロン・マスク、停止中のTwitter Blue認証済みバッジ販売は11月29日再開「万全の体制で」
イーロン・マスクはその後「盤石の体制で」11月29日より受付を再開すると予告していたものの、盤石にはまだ届かないことを悟ったのか、新たに「なりすまし防止策に確信が持てるまで」と具体的な期限を定めず再延期にしたという経緯です。
イーロン・マスクとしては、Twitterはただでさえ赤字が続いていたうえに、買収の資金調達で莫大な利子が発生するために、なんとしてもコストを下げ、収益源を確保することが至上課題です。
全スタッフのほぼ2/3を解雇した大規模レイオフも、コストが掛かりスケールしない本人確認を廃止したうえで「あなたもセレブや政治家と同じ青いチェックマークが持てます」と認証済みバッジを目玉に有料プランへの加入を急いだのも、こうした理由があります。
イーロン・マスク氏はなぜTwitterの収益化を急ぐのか(集中連載「揺れるTwitterの動きを理解する」第1回)
新Twitter Blue有料プランは、そもそも本人確認を省いてコストを下げ多数のユーザーを加入可能にする狙いのため、本質的ななりすまし対策はなかなか難しいところです。これに対してイーロン・マスクは、「おそらく」個人と組織で別の色のマークを導入することになるだろう、としています。
有料で認証済みバッジが購入できる状態になった際は、従来の公式アカウントの認証済みバッジ(青いチェックマーク)はそのまま、課金ユーザー印として別の色やデザインのバッジを用意すれば良いのでは?という当然の疑問を多くのユーザーが抱きましたが、結局は似た手段を導入するようです。
(最初から別のバッジを用意しなかった理由としては、イーロン・マスク的には既存の認証済みアカウント全体を資格が疑わしい不当な既得権益層であり排除すべきと主張してきたこと、Twitter Blueに加入しなければ従来の公式アカウントからも認証済みバッジを剥奪して有料プランへの加入者を増やす目論見があったこと、「民衆に力を」「あなたもセレブや政治家と同じ青いチェックマークが」と宣伝して購入を誘ってきた以上、変えづらかったことが考えられます)
「従来の認証済み公式アカウント」と「有料でバッジを買った課金ユーザー」で区別するのではなく、個人と組織で分類するのでは、なりすまし被害が大きい著名人等は取り残されているような気がしますが、Twitterにとってなりすましが問題なのは広告主である大口の企業アカウントが出稿を引き上げることと考えれば、個人とそれ以外で分けるのは合理的なのかもしれません。
実際に、本人確認なしの有料「認証済み」バッジ販売と同時期に試験導入した識別UIのひとつ「公式ラベル」は、従来の認証済みアカウントのうち、広告料金を支払っているアカウントに対して(優先的に)与えられてきました。