ラッパーの「Ye」ことカニエ・ウェストが、六芒星と呼ばれる図形に、鉤十字を組み合わせたユダヤ人差別を想起させる画像をTwitterに投稿し、再びアカウントを凍結されました。
ウェストは10月上旬に、ユダヤ人に対するヘイト投稿を繰り返したことで、Twitterによってアカウントを凍結されていました。しかしイーロン・マスク体制になったTwitterは11月20日に凍結を解除し、ウェストはふたたびツイートを再開していました。
ところが12月1日、ウェストはTwitterで「レッテルを貼られるのはもううんざりだ。すべての人間は価値あるものをもたらした。俺はヒトラーを愛している」と述べ、さらにユダヤの象徴とされる六芒星にナチスの鉤十字マークを組み合わせたデザインの図形の写真を投稿しました。
イーロン・マスクは「表現の自由絶対主義者」を自称し、カニエ・ウェストのアカウントを復帰させた当人でもありますが、今回のウェストの投稿を観て「私はベストを尽くした。にもかかわらず、彼は再び暴力の煽動を禁じるわれわれのルールに違反した。アカウントは停止になる」とツイート。ウェストのアカウントは程なくして凍結処分されてしまいました。
凍結処分の判断には、この日ウェストが陰謀論者であるアレックス・ジョーンズの番組に出演したときの発言内容も加味されているのかもしれません。
ウェストはジョーンズの番組に黒いバラクラバ(覆面)を被って登場し、反ユダヤ的な発言を繰り返しました。さらにはヒトラーおよびナチスを称賛する言葉を連発。ナチス・ドイツがユダヤ人数百万人を虐殺したホロコーストを否定して、「俺はヒトラーが好きだ」とまで述べました。
また番組内では持参した「ビビ・ネタニヤフ」なるキャラクター(虫取り網かなにかに見える)と会話するなど、番組ホストのジョーンズを困惑させる一幕も。
こうした発言の数々はインターネット界隈以外でも波紋を呼びました。共和党のユダヤ人連合は「(ウェストの)ヒトラーを称賛する発言は、彼が卑劣で嫌悪感を抱かせる偏屈者であり、脅迫とナチス式の名誉毀損でユダヤ人コミュニティを標的にしたと言っても過言ではない」と述べ、これまでウェストを支持してきた保守派の人々に対しても「憎悪の使者を拒否」するよう呼びかけました。ちなみに、先日ウェストが買収を発表したSNS「Parler」の運営企業は、この日買収契約が解消されたことを明らかにしています。
カニエ・ウェストはしばらく前に、自身が双極性障害を患っていることを明らかにしています。Netflixが制作したウェストについてのドキュメンタリー番組でも、本人は精神衛生上の問題が続く苦痛について赤裸々に語っており、今回の発言ももしかしたら、本人ですら制御できないような状態での発言なのかもと思えなくもありません。
とはいえ、ここしばらくは一貫してユダヤ人を差別し忌み嫌う発言を繰り返しており、その上での鉤十字マークの投稿、マスク氏の支持する共和党内からの反発などもあり、アカウント凍結という対応をとらざるを得なくなったのかもしれません。