Twitterが、米国で最も著名なネオナチのひとり、Andrew Anglinのアカウントを復活させました。Anglinは白人至上主義者向けのサイト「The Daily Stormer」を運営する人物で、2013年以来、約10年間にわたりTwitterに追放処分にされていました。
AnglinはTwitterアカウント復活後さっそく、直前にイーロン・マスク直々にアカウントを再凍結されたラッパーの「Ye」ことカニエ・ウェストに対して「ヒトラーが好きだと言ったところで、たいしたことではない」「そんなことは誰も気にしない。そいつは80年前に死んだ」と擁護するツイートをしています。カニエは陰謀論者として知られるアレックス・ジョーンズの番組に覆面姿で現れ、ヒトラーへの「愛情」やホロコーストはなかったとする持論を述べていました。
今回のAnglinのアカウント復活はおそらく、凍結・追放になった背景事情にかかわりなく、イーロン・マスク氏が述べた「法を犯したり、あからさまなスパム行為をしていない」ユーザーを対象として行っている一般的な「general amnesty(直訳では大赦、または恩赦)」措置を無作為に適用したためではないかと考えられます。
ただ、Amglinは2019年にモンタナ州でユダヤ系住民に対する組織的な嫌がらせ行為のため、1400万ドルの罰金が科されています。しかし彼は裁判所の判決に応じず、また居住地その他必要な情報の開示も拒んでいます。
また、自身がネオナチであることを公言する人物をプラットフォームに戻したことで、ふたたびTwitterに対して広告主、政府関係、公民権団体からの批判が噴出する可能性もあります。Twitterは12月1日に「自分たちの安全性に関するポリシーは変わっていない」と主張し、ヘイトに満ちた行為、虐待行為、Twitterの定めたルールへの違反を協力に取り締まっていると主張していました。
なお、Twitterはマスク氏の「恩赦」によって10月27日以降1万2000人を越える凍結・追放アカウントを復活させてきたと言われています。また、それらのなかにはすでに何人かの白人至上主義者の名前も発見されています。
イーロン・マスク氏は先週、自身が引き継いで以降のTwitterでは「ヘイトスピーチのインプレッション」が以前より1/3にまで減少したと主張しました。
しかし、デジタルヘイト対策センター(CCDH)による調査では、マスク氏体制のTwitterは以前に比べ、黒人に対するヘイトが含まれるツイートが急増、1日平均1282件から3876件に増加しており、さらにマスク氏の上記発言の週には1日平均4650件にまで達したと報告しています。
一方、米国最大のユダヤ人団体である名誉毀損防止同盟(ADL)も、マスク氏体制になってからの「nワード(黒人を差別する呼称)」の使用数は2022年平均の3倍に、トランスジェンダーや同性愛者への中傷もそれぞれ62%、58%の上昇を見せているとし、「プラットフォーム上での反ユダヤ的投稿内容が増加する一方で、反ユダヤ的内容の投稿のモデレーションは減少した」と報告しています。