開発者イベントWWDC23で、アップルはWindowsゲームをApple Silicon搭載のMac向けに移植するためのツールキット「Game Porting Toolkit」を発表しました。
このツールキットにはWindowsゲームをmacOS上で動作させるエミュレーション環境(互換レイヤー)であるCrossOverのコードを採用しており、開発者はWindowsゲームがMacでどの程度動くのか確認できます。
すでにApple Silicon搭載Mac向けには『バイオハザード ヴィレッジ』や『No Man's Sky』(一部のインテルMacにも対応)といったゲームが移植されていますが、あくまで例外的なもので、PCゲームといえばWindows版がデフォルトという状況は長らく変わっていません。
しかし、新たに発表されたGame Porting Toolkitなら「Macで実行する際のゲームのグラフィック機能の使用状況と潜在的なパフォーマンスの可能性を簡単に確認できる」と、アップルのエンジニアリングプロジェクトマネージャー、Aishwarya Srinivasan氏は説明しています。
このツールキットではx86命令セットをはじめ、キーボード、マウス、コントローラー入力、オーディオ再生、ネットワーク、ファイルシステム、Direct3Dに関連する あらゆるAPIをmacOSのAPIに変換します。DirectX 12を使用する最近のWindowsゲームの動作もサポートしており、WWDCではこのツールキットによってDirectX 12ゲームの『The Medium』がMacで動作する様子がデモされました。『The Medium』は今年2月に、Macへの移植が発表されています。
もちろん、Windows用のゲームに互換レイヤーを噛ませただけで、なんの問題もなくMac上でゲームが動作することはほとんどなく、開発者側で問題を確認して修正する複雑な工程を経なければなりません。
もし最初から複数のプラットフォームをターゲットにして開発をする場合なら、クロスプラットフォームのゲームエンジンを使用することでその複雑さをある程度軽減することはできるものの、それでもmacOS上でのデバッグ作業やパフォーマンスの最適化作業は避けることができません。
ちなみにRedditには、M2 Max搭載のMacで、このツールキットを使って『Diablo IV』や『ホグワーツ・レガシー』『Marvel's Spider-Man Remastered』を動作させている動画などが投稿されています。
Hogwarts Legacy on M2 Max
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AppleGamingWiki Discord Users Posting their DX12 Testes - Credit djinn - Spiderman M2 Max ~30FPS -
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一方、TwitterにはM1プロセッサーを搭載したMacBook Proで『Cyberpunk 2077』を動かしている動画も上がっていますが、こちらはフレームレートが13fps前後と、そのままではパフォーマンス的に少し厳しそうです。
ともあれ、Apple Siliconによって処理能力と共にグラフィック性能も大きく向上したMacには、今後AAAタイトルを含む数多くのゲームがWindows方面から移植される可能性が高くなっています。開発者にとってGame Porting Toolkitは便利なツールになるはずです。
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