Twitterが仕様変更、DM開放でも送信はTwitter Blue課金ユーザーに限定「高度なAIボットの群れに対抗」「支払いは認証手段」

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Ittousai

Tech Journalist. Editor at large @TechnoEdgeJP テクノエッジ主筆 / ファウンダー / 火元

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Twitter がダイレクトメッセージ(DM)まわりの仕様を変更しました。

従来はいわゆる「DM開放」(DMオープン)に設定した相手には誰でも連絡できましたが、仕様変更後は有料プランのTwitter Blueに加入しないとリクエストの送信ができなくなります。

仕事の連絡や情報提供を受けるため「すべてのアカウントからダイレクトメッセージを受信する」(DM開放)を選んでいたとしても、送る側がTwitter Blue有料ユーザーでないかぎり、相手からDMのリクエストは届かないことになります。

追記: 日本時間2023年6月15日朝の時点では再びリクエスト送信可能になったようです。ただし変更の撤回なのか、変更に伴うテスト中の一時的な挙動なのかはまだ分かりません。

Twitter ダイレクトメッセージの仕組みと「DM開放」設定

DMは原則的に、いわゆる相互フォローを含め「自分をフォローしている相手にはDMを送れる」仕組みです。

受ける側から言えば、自分で選んでフォローした相手からは届く仕組み。

ただしこれだけでは、不特定の相手から広くDMで連絡を募りたい場合や、フォロー関係にならず一時的にやりとりしたい場合に不便なため、「すべてのユーザーからメッセージを受信する」いわゆるDM開放 / DMオープンの設定が用意されていました。

今回の仕様変更からは「すべてのユーザーから」設定の相手でも、DMのリクエストを送信できるのはTwitter Blue加入者のみになります。

送る側としては、強い理由があれば月額課金と電話番号認証などをクリアしてTwitter Blueに入ってリクエストを送る判断もできるものの、気軽に送れた従来よりは大きくハードルが上がることになります。

受ける側としては、そもそも広く情報提供や連絡を受けたいから望んでDM開放を設定しているのに、相手側のコストが高くなり、届く情報や機会が制限されることになります。

(「すべてのユーザーから」なのにTwitter Blue加入者限定なのは混乱するため、いずれ設定の名称が変わるか、オプション項目が増えるかもしれません。)

ダイレクトメッセージ仕様変更の理由

仕様変更の内容としては以上です。ここからは、なぜそのような変更をしたのか、どのような変化があるのか、ついでにTwitterの状況について。

表向きの、あるいはオーナーであるイーロン・マスク氏の主張によれば、今回の変更はボットによる迷惑DM(spam)に対抗するため

月額課金と電話番号認証、アカウントを作成して30日以上といった Twitter Blue 加入のコストを支払わせることで、ボットによるspamが難しくなる、支払いはBotを弾くための手段という理屈です。

spamとボットはソーシャルメディアに限らずインターネットが抱える大きな問題であり、Twitter も様々な対策を講じてきました。

たとえば「DM開放」を設定した場合でも、ダイレクトメッセージの一覧がspamで埋もれて使い物にならないといったことを防ぐために、フォローしていない相手からのDMは別画面の「メッセージリクエスト」一覧に届きます。

「メッセージリクエスト」一覧から相手のアカウントやリクエスト文面を確認した上で、許可したもののみがダイレクトメッセージの一覧に入り、やりとりができる仕組みです。

明らかにspamであったり攻撃的な内容は機械的にフィルタされるため、「メッセージリクエスト」までも届きません。

すでにこうした対策があるなかで、またそもそもDM開放はリクエストの選別コストを考慮しても連絡が欲しいアカウントが自発的に設定するものであることを思えば、送信をTwitter Blue課金アカウントのみに限定するのはなかなか思い切った施策です。

「知らない人からDMが届くのは嫌だから歓迎」という反響もありますが、そもそもDMは原則として自分が自発的にフォローした相手からしか届きません。

知らない人から届く場合は、知らない人をなぜかフォローしているか、知らない人を含む不特定多数からのDMが届くよう自分で「すべてのユーザーから」を設定した場合かと思われます。(フォロワーが欲しくて「フォロバ100%!」アカウントをフォローし続けて相手を覚えていないとか)

また今回の仕様変更後も、「spamが」届かなくなるというよりも、「Twitter Blue加入者以外からのDMリクエストすべてが」届かなくなるため、結果的にBOTによる spam もなくなる状態です。)

Twitter Blueテコ入れの側面も

なぜこうした判断に至ったのかは、マスク氏がそう判断したからとしか言えません。マスク氏はTwitterの買収が成立する以前から、TwitterはBotが蔓延しておりまともに機能していない、しかもAIの発達でますますBot対策は難しくなっていると強調してきました。

一方、また別の見方をすれば、有料プランのTwitter Blue加入者を増やすことがイーロン・マスク氏にとって、Twitterの経営にとって最重要という側面も同時に成り立ちます。

ざっくりいえば、Twitter はイーロン・マスク氏による買収前から「やっと黒字の年も出てきたけど、赤字の年も続く」程度で、必ずしも収益性が高いビジネスだったわけではありません。

マスク氏は買収を宣言したのち、「TwitterはBotが蔓延しており正当な評価額が出せなかった」等の主張で破棄しようとしたものの、結局は約束を履行するよう訴訟を起こされ、かなりの高値掴みで買収を余儀なくされた経緯があります。

また買収の形式から、莫大な借り入れで調達した資金の利子返済だけでも、もともと収益性が高くなかったTwitterにとっては非常に重い負担となる、つまり仮に買収前と同じように運営できていたとしても厳しい状態です。

ビジネス的に非常に厳しい状態のスタートとなったうえに、マスク氏の判断で過去に差別発言等で凍結されたアカウントを「恩赦」復活したことや、有料プランTwitter Blueの目玉として認証バッジを従来の認証条件抜きで提供したらなりすましが多発して広告主の多くが逃げ出すなど、経営的には余計に厳しい状態が続いていました。


マスク氏が就任した途端に従来の従業員の大半を解雇したのも、単なる合理化というより、多少は機能不全になってもコストを抑える必要があったことが理由です。

このように、広告に依存しない収益の柱を作ることがTwitterにとって喫緊の課題であることから、認証バッジ以外にもTwitter Blue の特典を増やす、あるいは一般ユーザーを不便にして相対的にBlueを魅力的にする施策も続いています。


たとえばリプライの表示順で優先する、デフォルトで表示される「おすすめ」タイムラインでFF外からおすすめされるためにはBlue加入を必須にするなど。

イーロン・マスク氏はTwitter買収よりも以前から、高度なAIが人類に危害を加えるリスクを主張してきたため、「またマスクがAI脅威論を繰り返してる、結局はspam対策もう無理!でTwitter Blueの宣伝したいだけでしょ」といえばあまりに一面的で皮相な見方です。

しかし現にTwitterを立て直すためTwitter Blueを売らねばならない強い理由があること、Botの可能性がある一般ユーザーにできることを制限しても有料プランを売ることが一石二鳥の解決策になりうることを、有能なビジネスマンであるマスク氏が考えていないというのもまた無理があります。

いまリクエストの選別に困っていない、コストをかけても広く情報を募りたいアカウントには「Twitter Blueに加入していない相手からのリクエストも受ける」第三のオプションを提供することや、それもBlue特典にすることも可能性としてはあるかもしれません。しかしそうしたオプションは、Twitterにとってはわざわざ手間をかけたうえにTwitter Blue加入のインセンティブを自ら減らすことになります。

さらにいえば「月額有料プランへの加入者は人間、それ以外の無課金ユーザーはBotと同じ」扱いにする一連の施策以外にも、従来型のBot検出にはもちろん継続して取り組んでゆくものと思われますが、それすらTwitterにとっては「無料でBotが滅んだらむしろBlue加入者が減って困る」構図になっているとも表現できます。有料プラン以外のBot対策部門が削られないことを祈るばかりです。

《Ittousai》
Ittousai

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