ソニー、ユニバーサルなど複数の音楽レーベルが、Internet Archiveを音楽著作権の侵害で訴えました。これはInternet Archiveが数年前から始めている、古いSP規格で発売されていたアナログレコードをデジタル化する「Great 78」プロジェクトを対象としています。
現在、アナログレコードとして知られるのはLP盤と呼ばれるもので、材質がポリ塩化ビニール、ターンテーブルの回転数は33rpm(径の小さなドーナツ盤は45回転)と定められています。一方、SP盤は酸化アルミニウムや硫酸バリウムなどの粉末をシェラックと呼ばれる天然樹脂で固めて作られており、78rpmの蓄音機で再生されるために作られたものでした。
SP盤は1960年代に生産が終了しているため、現在新たに発売される作品はほとんどありません。また保管されている作品も時代の流れとともに廃棄や破損、劣化などで失われつつあると考えられます。
Internet Archiveは、2017年に「Great 78」プロジェクトを開始し、これらSP盤の収集・提供を受けて作品をリマスター処理、96kHz/24bitのデジタル音源として公開しています。
しかし、ソニー・ミュージック・エンタテインメントやユニバーサル・ミュージック・グループといった音楽レーベルは、このSP盤をデジタル化して公開する行為が著作権の侵害であるとしてInternet Archiveを非難しており、このたびの訴訟が起こされるに至りました。
音楽レーベル側は、このプロジェクトにはフランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、マイルス・デイビス、ルイ・アームストロングといった音楽界の巨匠たちによる「アイコニックな録音」2749作品が含まれ、さらに多くの作品が著作権を侵害する形で公開されていると主張しています。また、2749作品というのは確認できた数であり、さらに多数の著作権侵害が含まれる可能性があるとしています。
Great 78プロジェクトは、あくまで「78rpmレコードの発見、研究、保存」が目的だと述べています。しかしレーベル各社は、こうした主張に対して「これらの録音は既に音楽会社によって承認された数多くのサービスを通じてストリーミングやダウンロード販売などで提供されている」とし、記録媒体はともかく「録音物そのものは失われることも、人々から忘れられることも、破壊されることもない」と反論。保存と研究という限定的な目的の範囲を逸脱し「Internet Archiveは著作権に関係なく、あらゆる人に音楽への無料かつ無制限なアクセスを提供しようとしている」としました。
なお、この訴訟ではInternet Archiveがすべての著作権保護物を削除するとともに、著作権を侵害する作品1つあたり最大15万ドルの損害賠償を支払うことが求められており、総額は最大で約3.7億ドルにのぼる可能性があります。
ちなみに、米国では2018年にMusic Modernization Act(音楽近代化法)が成立し、1972年以前の音楽の著作権が、2067年まで保護されることになっています。