『鉄拳8』アクセシビリティ設定に称賛も、一部は頭痛や発作の危険と専門家。原田氏「試しもせず誤解」「全員の特性に合わせたものではない」

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Munenori Taniguchi

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現在デモ版を無料配布中の格闘ゲーム『鉄拳8』が、いわゆる色弱を含め、さまざまな視覚特性のプレーヤーでも遊びやすくするアクセシビリティ設定で話題になっています。

フィルターによりキャラクターを単色のシルエットにしたり、コントラストを高めて視認しやすくするなど様々な設定が可能で、これまで遊びにくかった、遊べなかったプレーヤーにも門戸を開くものとして称賛を浴びました。

しかし12月27日、ゲームに関するアクセシビリティの専門家でX(Twitter)ユーザーのイアン・ハミルトン氏は、色覚設定オプションの一部がユーザーに頭痛やめまいを引き起こすと指摘しました。

これはSJS | Gatterallという名のXユーザーが投稿した、『鉄拳8』のアクセシビリティ設定のひとつを使用した動画に対しての発言で、この動画ではゲームキャラクターのシルエットが縦縞と横縞で塗りつぶした状態でプレイしている様子が映し出されます(動画へのリンクは省略しました)。

ほかにもいくつかのスクリーンショットを投稿したSJS | Gatterall氏は、これらの設定を用意したことを称賛する意図で投稿した様子ですが、ハミルトン氏はこの縞模様のフィルターがかかった動画が「悪名高いポケモンのエピソードと同じように、プレイヤーを入院させる(あるいはさらに深刻な状況に至る)可能性がある」と述べました。

鉄拳プロデューサーの原田勝弘氏はこうした反応に対して「ごくごく一部ではあるものの、われわれが試みているアクセシビリティオプションについて誤解されている方や、デモプレイを試すことなく、動画を見ただけで意見を述べている方がいます」と前置きしたうえで、ゲームに用意された設定に関して「色覚特性の異なるプレイヤーのために複数種類のオプションを用意しており、他にもエフェクトや全体の明るさを調整する機能を提供しているため、それらを考慮するとかなりの幅の調整ができるようになっています」と説明。そして「これらのオプションがすべてのプレイヤーの色覚をカバーするものだと主張したり 宣伝したことはありません」「世界中のすべてのプレイヤーの色覚に対応しているわけではないことを理解しています」と述べています。

具体的に指摘を受けた太い縞模様のフィルタについては言及しない一方で、「TEKKEN8や、TEKKEN7 のアクセシビリティ版(非売品)の開発以前から、いくつかの研究機関やコミュニティと協力してこの設定の開発に取り組んできました」と説明し、専門家の視点も取り入れつつ開発を進めている機能であることを強調しました。

これに対してハミルトン氏は、誤解していないしデモプレイも試したと反論し、具体的な設定の改善点にも言及しています。

一方、Xbox Game Studiosのアクセシビリティ担当者であるタラ・ウェイク・フォルカー氏やEAのアクセシビリティ担当シニアGMのジェームズ・バーグ氏は、ハミルトン氏がXに投稿した問題の縞模様フィルターの動画について「それを見た人が何人も頭痛などを訴えている」と指摘。アクセシビリティについて議論する人々が安易に動画をシェアすれば、SNSの自動再生などでたまたまそれを見た無関係なユーザーにまで影響がおよぶ場合もあるため、SNSでシェアするのはやめるよう人々に求めました。

バーグ氏はこの特定のフィルタが頭痛などの危害を及ぼす原因について、太い縞模様のパターンが画面上で動くと、画面の特定の領域が高い周波数で点滅することになり「見えないストロボ」同様になる、人間の視覚にとって好ましくない説明。

その一方で、原田氏に対して「取り組みの意図は素晴らしい。『鉄拳』がより人々にとってアクセスしやすくなるのは素晴らしいことだ」「平八最高 :)」と述べつつ「イアンとタラのアドバイスをぜひ参考にしてください。われわれはこれが成功するのを見たいと思っています」と述べました。

一連の議論は、まだ発売されていないゲームの色覚設定オプションについてのものです。問題の画面設定は通常、プレイヤーが意図的にそれを選択しなければ目に触れるものでもありません。しかし、その動く様子が不特定多数が見るSNSにシェアされたことで、世間の反応が大きくなってしまった面もあるように思えます。

一方で、荒い縞模様のキャラが画面を激しく動く様子は、見ていると目がチカチカする感覚に陥りそうなのも事実。最近のゲームは冒頭で光過敏性発作について警告することが多くなっていますが、視覚・色覚設定の中でも特定の表示オプションについては、個人ごとの視覚特性や耐性によっては逆効果になると警告することを含め、改善を検討する余地もあるのかもしれません。

様々な意見が取り入れられ、ゲームがさらに素晴らしいものになっていくことに期待したいところです。

鉄拳8は1月26日にPlayStation 5、Xbox Series X|S、PC版が発売予定です。現在は各プラットフォーム向けのデモ版が無料配布されています。

(編集部追記:太い縞模様のマスクの危険性について指摘したハミルトン氏が、ゲーム系フォーラムResetEraのスレッドでアクセシビリティ専門家の立場からもう少し詳しい説明を加えています。関連部分をまとめると、

・縞模様のマスクは、1色覚(旧称の全色盲)の場合、色ではなくパターンで識別できるようになる効果はあるが、キャラクターのテクスチャが失われて逆に視認が難しくなる。効果の量を調整するスライダーはあるが、一方に動かせばもう一方の効果が弱まる。

・高コントラストの縞模様は、(明暗に敏感な)1色覚で光過敏のプレーヤーにとってあまり良い選択とはいえず、今回の映像で吐き気や偏頭痛、発作を報告した多くのプレーヤーにはなおさら悪かった。(編注:ツイートでは、高コントラストの縞模様が動くことで脳には高速の点滅のような強い刺激を与えると説明)

・なかでも深刻なのは光過敏性発作。光過敏性てんかんは多い症例ではないが症状は重篤で、意識を失い体を痙攣させる強直間代発作では怪我も珍しくなく、稀な例では死に至ることさえある。

・「なら使うな」が解決にならない理由は、自分が光過敏性発作を起こす体質かどうかは最初の一回を起こすまで分からないことと、現在では意図しなくても動画配信サイトやソーシャルメディアの自動再生などがあり、何が目に入るか制御できなくなっていること。

・健康被害を避けつつアクセシビリティの問題を解決する手段としては、縞模様のかわりに輪郭の強調や、特に同キャラを選んだ場合に区別がつきやすい別のスキンを自動的に選択する、背景に適用した明暗の調整をキャラクターにも適用するなどが考えられる。

)



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《Munenori Taniguchi》
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