モナシュ大学の心臓の専門家らは、世界的な人気を誇る歌手のテイラー・スウィフトの音楽が心臓や血管の健康促進に役立ち、彼女の曲に合わせて心肺蘇生法を行うことをファンや他の人々に教えることで、潜在的に命を救える可能性があると考えています。
モナシュ大学の学内機関であるモナシュ・ビクトリア心臓研究所所長のスティーブン・ニコルズ教授は、「心臓発作を起こした人の4分の1は、そもそも病院にたどり着く前に手遅れになります」とし、「そこに居合わせた人が心肺蘇生法を行うことができれば、生存率が大幅に改善できることが分かっています」と述べています。
そして、「テイラー・スウィフトの音楽は、いまの時代に最も人気があり、影響力のある音楽のひとつです。音楽は効果的な心肺蘇生圧迫を維持する上で極めて重要な役割を果たします。よく知られた曲も時代につれて変わってゆくため、トレーニングに最適な1分あたりの拍数(BPM)を持つ新しい曲を特定することは極めて重要です」としました。
心肺蘇生法は、心停止した人に酸素を供給し、血液を循環させる緊急救命処置であり、患者の胸部に1分あたり100~120回圧迫する必要があります。つまり、100~120BPMの楽曲が心肺蘇生法に適していると言うことができます。
長らく、心肺蘇生法に適した音楽としては、ビージーズの大ヒット曲「ステイン・アライブ」が紹介されてきました。しかし、いくら大ヒット曲とは言え、リリースから47年が過ぎようかというこの曲を知らない世代も増えているはずです。
ビクトリア州心臓研究所は、若い世代の人たちが親しみやすく、効果的に心肺蘇生法を行うことができる音楽として、テイラー・スウィフトのどの曲が良いかを調査し、合計54曲をSpotifyプレイリスト化しました。
こうした取り組みは、オーストラリア蘇生協議会(ARC)や、アメリカ心臓協会(AHA)も支持しており、AHAはX(Twitter)を通じてこれを紹介しています。
ニコルズ教授は、「人々が愛するものを活用し、それを使って人々が自信を持って誰かを救うスキルを習得できるようにすることができれば非常に強力です」と述べました。
ちなみに、オーストラリア・メルボルンでは2月11~13日にかけて、学術カンファレンス「Swiftposium 2024」が開催されていました。
このカンファレンスには、オーストラリアとニュージーランドから6つの大学の研究者らが集い、様々な分野でテイラー・スウィフトが与えた影響などについての研究を発表しました。
モナシュ・ビクトリア心臓研究所の研究者もこのカンファレンスに参加し、上記のSpotifyプレイリストの紹介と、スウィフトにインスピレーションを得た心肺蘇生法のデモンストレーションを行ったとのことです。
なお、日本では心臓マッサージに適した曲として、「アンパンマンのマーチ」がよく知られています。