Amazon Prime Videoで、実写ドラマ『Fallout フォールアウト』1stシーズン全8エピソードの配信がスタートしました。
実写『Fallout』 は、ベセスダ・ソフトワークスの人気ポスト・アポカリプスSFゲームシリーズをAmazonが映像シリーズ化した作品。
元となるゲーム『Fallout』をまったく知らなくても問題なく視聴できる脚本となっていますが、ゲームのほうの予備知識も前提程度は知ってから観たい人のために、ここでは基本の世界観や名称などをご紹介します。
(ドラマ版本編のストーリーに関係するネタバレはありませんが、過去のゲームシリーズを進行すると明かされる情報などは一部含んでいます。)
まず、元となったゲーム「Fallout」シリーズは1997年より開始したゲームタイトルで、シリーズ初期の1、2、TacticsについてはPC版のみリリースされました。その後、フランチャイズをBethesdaが買い取り、新たなシリーズとして2008年に「Fallout 3」 を発売しました。
最大の特徴は、TPS視点による3Dビジュアルのオープンワールドになったこと。以降はこのスタイルを踏襲し、日本でも知名度が爆上がりしました。
その後は開発会社が異なる外伝的な「Fallout:New Vegas」や、最新作の「Fallout4」、オンライン版となる「Fallout 76」が発売されるなど、今なお人気のシリーズとなっています。
Falloutシリーズのポスト・アポカリプス世界
世界観としては、もしも核戦争が起こったらその後の世界はどうなるか?そんな誰もが想像するIFを主題に、独自の要素も含めたユニークなポストアポカリプス世界を構築しています。
Falloutの世界とわれわれの歴史の大きな差としては、21世紀後半までソ連が崩壊せずに残り続けていたことと、一方で音楽などアメリカのカルチャーはわれわれの1950年代くらいになっていることがあります。
そのため、本作では1940年代~60年代のジャズやブルース、スウィング、ロカビリー、ロックンロールといった昔の音楽がラジオから聴こえてくるなど、現実の冷戦期に核戦争への不安から作られたSF作品のような、レトロフューチャーな雰囲気も合わせ持っているのが面白いところです。
核戦争勃発はもうひとつの2077年
そのような架空の歴史が続いた2077年10月23日。中国、ソ連、アメリカなど全ての核保有国による核戦争が勃発し、この戦争により世界中の文明が崩壊した設定になっており、そこから数年~200年ほどが経過して、あらゆる物や価値観などが変化したポスト・アポカリプス世界がゲームの舞台です。
なお最新作「Falout 4」のプロローグでは、2077年10月23日に主人公を操作して、2077年当時の一般家庭の暮らしをプレイできるだけでなく、核戦争勃発の瞬間までも目撃できます。
核で滅びた世界はどのようになっているのでしょうか?例えば、核による放射能汚染は本作の象徴的な出来事と言えます。世界の各所には未だに放射能に汚染された地域が多数残っており、こうしたエリアには何の装備もない状態では気軽に足を踏み入れられません。
お約束の放射能巨大化昆虫やミュータントも
冷戦期レトロSFでありがちな設定として、あらゆる生態系が放射能汚染により激変しているのも特徴です。
特に分かりやすいのは昆虫類が巨大化していること。アリやサソリ、さらにはあの悪しき魔物、G (ゴキブリ)も巨大化しており、荒れ果てた荒野をうろうろしています。
余談ですが、「Fallout 3」が発売された頃、ゲーム内に登場するGが理由でゲームを続けられずやめてしまった人を筆者の周囲では多く見かけました。
多くの昆虫たちはこちらの敵となりますが、中には知能を持った動物や昆虫もいるようです。
放射能を浴び続けることで大多数の人間は死んでしまいましたが、中には不老の存在「グール」と化して生き残った人たちもいます。
グールには人間の頃の記憶や意識を持っている人たちもおり、こうしたグールとは交流できる場合もある一方、知能が失われ怪物となってしまった人たち(フェラルグール)もいます。
ゲーム中ではグールたちと交流する場面もありますが、その多くは敵として倒す必要もでてきます。
FEV(Forced Evolutionary Virus)と呼ばれる戦前に開発していた人工ウィルスの存在も厄介です。このウィルスに侵された人たちは、一般人の数十倍の怪力を得たものの、知能が低下し体も巨大化したスーパーミュータントに変わってしまいます。
ゲーム中では殆どのスーパーミュータントはこちらの敵として行く手に立ちはだかりますが、中には知能がしっかりしており、友好的なスーパーミュータントと仲間になる場合も。「Fallout 1」ではFEVの起源も明らかになります。
フォールアウト世界の文明
社会が崩壊した状態のため、地上に生き残った人たちは小さな街を作り、街単位で自衛しながら生活を営んでいます。
なぜ自衛が必要かというと、前述のように巨大化した野生生物などの襲撃から身を守るため。さらに荒野には殺しや略奪、人肉喰いなど、あらゆる悪事で生計を立てる、ならずもののレイダーたちが闊歩しているためです。レイダーたちの襲撃から身をまもるためにも、こうした街は自衛が必要になります。
他にも戦前のアメリカ軍の装備などを回収して利用する武装組織「B.O.S (Brotherhood Of Steel)」もゲーム内では定番の存在です。
B.O.Sはシリーズではいつも強力な武装集団として登場します。特に巨大な垂直離着陸機「ベルチバード」や、メンバーたちが装着する「パワーアーマー」と呼ばれる強化外骨格のようなアーマーはめちゃくちゃカッコよく、ゲームの象徴的なビジュアルにもなっています。
ゲームでは実際にパワーアーマーを入手して利用できますが、プレイするなら実際に装着する様子までもがリアルに再現された「Fallout 4」が特におススメです。
なお、ゲームではシリーズ毎に前述した以外にも様々な組織が登場しますので、ドラマオリジナルのユニークな組織が登場するかもしれません。
巨大核シェルター Vault は多数存在
人間は地上だけでなく、核シェルターに入っていた人類も存在しています。この核シェルターは「Vault」と呼ばれており、Vault-Tecという会社がアメリカ各地に建造した設定です。
「Fallout 3」では、正にこのVaultの1つである「Vault 101」の中で生活を営んでいた主人公がある日、突然Vaultを出てしまった父親を追って外界に出る導入です。
ドラマでもある理由でこのVaultを出た主人公ルーシーが外界の状況を知り、荒野の中で生きていく展開が描かれます。
なお、主人公たちが着ている青色のダサい(クールな)上下一体型のスーツはVaultジャンプスーツと呼ばれる、Vault内の住人向けに用意された衣装です。
Vaultの裏話としては、全てのVaultが何かしらの実験施設であることがゲームでは明らかになります。実験が失敗した施設は、核の脅威を乗り越えたにもかかわらず住民は全滅するなど、悲惨な末路を辿ることが殆どです。例えば「Fallout 4」で主人公たちが収容された「Vault 111」では冷凍催眠の実験をしており、主人公の子供と主人公のみが生き残りましたが、残りの人たちは全員死んでしまっています。
レトロで未来的なガジェットやテクノロジー
本作に登場するコンピュータ端末はやたらと古めかしく、全ての端末がキーボードのみで操作する80年代のパソコンのような物ばかりです。
ディスプレイは緑一色のグリーンディスプレイですが、膨大なデータを扱えたり、数百年起動し続ける寿命の長さなどを見ると、現実の技術とは違う進歩の過程を想像させます。
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主人公が腕に装着する「Pip-Boy」は主人公の体調などを確認できる携帯端末です。内蔵の核分裂バッテリーを使用する事で半永久的に動作し、本体の耐久性もかなり高く作られています。ゲーム内でも主人公のステータスやスキルが確認できる端末として登場します。
そして、ロボットやAI周りの技術は現在より遥かに進んでいたようです。不格好な昔のブリキの玩具のような形状の2足歩行のロボットや、移動の際に常に空中を飛ぶ召使ロボットなどが登場しますが、いずれも人間と普通に会話できるくらい優れたAIを備えています。
一方で命令に絶対服従の仕掛けが用意されているようで、主人がいなくなっても健気に自身の役割をこなし続ける気の毒なロボットも見かけます。
ドラマはゲーム版より後の時代
ドラマの舞台は2077年から約200年後。ゲーム「Fallout 3」や「Fallout 4」よりも後の時期の話となっているので、それぞれの作品で登場した要素がドラマでも登場するかもしれません。
なお、ゲーム内で語られてきた「史実」についてですが、シリーズ自体はほぼ全てがマルチエンディングとなっており、プレーヤーの選択で未来が大きく変化します。
しかしシリーズが6作品と少ないこと、それぞれ舞台を変えていることもあってか、全体的な整合性はかなり保たれています。
少なくとも、ゲームの各作品内で致命的な矛盾を感じることはありませんでした。そうした「史実」がドラマではどうなるのか?本編に先駆けて公開されたトレーラーをチェックしてみます。
まずは巨大なVault内の風景や、Vaultジャンプスーツを着て動き回る人たちの姿が確認できました。Vaultの扉が開いて主人公が外界へと旅立つシーンでは、Vault外側の扉に33のナンバーがあります。
このナンバーのVaultは過去のゲームには登場しておらず(※)、設定はドラマ向けに新たに作られたものです。なお、Vault33がロサンゼルスにあるという情報は既に公開されています。
(※ ドラマシリーズの配信前に、オンラインゲームの Fallout 76 でプロモーションとして Vault 33のアイテムが配られたことはあります)
荒れ果てた世界を歩く主人公。朽ちた建物の中には巨大な昆虫が動いている姿が確認できます。また、外界の住人が主人公に対してVaultに帰るように促すセリフが確認できます。
その後は犬が巨大な昆虫を食い殺すシーン。この辺りの雰囲気は正にゲームのFalloutのテイストが存分に感じられて最高です。
カットが切り替わると、なんとB.O.Sのベルチバードが!そしてベルチバードに搭乗して、生身の状態のB.O.Sメンバーとパワーアーマーが登場!こちらの期待通りの登場にテンションは上がります。
さらに短いカットが連続する中では5台のパワーアーマーが歩いているシーン、レコード盤のような物が収納されたジュークボックスに血が飛び散るシーン、Vaultジャンプスーツを着た人たちが多く登場する、Vault内のシーンと続いていきます。
そして主人公は、飛行機の先端部の残骸がある小さな街を訪れます。
その後はドラマ版の主要キャラクターの一人、カウボーイハットを被ったグールが登場します。廃墟の中をショットガンのような銃をぶっ放しまくって暴れ回るカットが見られます。
他にもコンピュータで制御された設置型のマシンガンタレットや、宙を浮く家事ロボットが寝たきりの人間を連れて逃げるカット、さらにはサンショウウオの一種から突然変異したとされるガルパーの不気味な姿などが確認できます。
驚愕だったのは、その後、B.O.Sの戦闘シーンなどを挟んで空に浮かんだ巨大な飛行船が出てきたこと!この空を飛ぶ巨大な物体は、その形状から見ても、恐らく「Fallout 4」で登場したB.O.Sの空中要塞「プリドゥエン」だと思われますが、どこまで盛り込むつもりなのか!?
最後は恐らく運命の日、2077年10月23日の核戦争の様子が流れます。
このように、世界観はゲーム内で語られてきた「史実」を忠実に再現しており、ゲーム版のファンであっても安心してドラマを楽しめそうです。
ドラマ版フォールアウトは「正史」
原作ゲームのプロデューサー兼ディレクターであり、ドラマ版の製作総指揮にも名を連ねるBethesdaのトッド・ハワード氏(Todd Howard)は、ドラマ版の出来事は全てFalloutシリーズ公式のカノン(正典)の一部と見なしていると語っています。
Bethesda Softworksもゲームの過去シリーズとの矛盾などがないようにドラマ版の脚本をチェックしており、いわばドラマ版が「Fallout 5」のようなメインシリーズの1つとして捉えているため、本作はある意味でゲームの続編のように、世界の続きを楽しんで観られる内容です。
なお、日本語字幕/吹替についてですが、FalloutシリーズとTESシリーズの解説動画を多く投稿しているYouTuberのきんたん氏が今回のドラマ版Falloutの日本語字幕、吹替用語の監修を行なっているとのことで、用語周りの誤訳などを気にする事なく、安心して視聴できそうです。