米国空軍テストパイロットスクールと国防高等研究計画局は(DARPA)、昨年2月にAIによる自律飛行を実現したX-62A可変飛行安定性試験機(VISTA)を用い、有人のF-16戦闘機との模擬空中戦に成功したと発表しました。
DARPAの空中戦革新(Air Combat Evolution:ACE)プログラムの一環として、人工知能アルゴリズムを搭載したX-62A VISTAは、2023年9月に行われた飛行試験で「大規模な機首対機交戦」による防御と攻撃の両方の機動を試し、有人パイロットが操るF-16に対し時速1200マイル(約1900km)で2000フィート(約610m)の距離にまで接近したと説明。X-62A VISTAにも、不測の事態に対処すべくパイロットは搭乗していましたが、エドワーズ空軍基地上空で行われた模擬交戦中に介入する機会はありませんでした。
一般にドッグファイトと呼ばれる視界範囲内での敵機との交戦は、非常に複雑な操作が必要となるものです。X-62Aが人間を上回る技能を披露したのかどうかは不明ですが、DARPAと米空軍は、AI制御によるジェット機が試験飛行中の訓練規則に違反することもなく、安全に飛行でき、さらに模擬的とはいえ戦闘も可能であることを示したとして、この実験を「画期的な進歩」と評価し、また人工知能が航空宇宙分野で安全に使用できることを証明できたとしています。
「空中で自律型人工知能システムのテストを開始するにあたっては、空中戦が解決すべき問題としてありました。私たちが学んで来たすべての教訓は、自律システムに与えられる、あらゆるタスクに当てはまります」とテストパイロットスクールの主任テストパイロット、ビル・グレイ氏は述べています。
X-62A VISTAは、F-16D ブロック30をベースに改良が重ねられてきた試験機であり、今後もさまざまな顧客の研究に貢献し、重要な学術的知見を提供するために用いられるそうです。