AIスタートアップのHumaneは同社初で唯一の製品であるAi Pinを2023年11月に発表、2024年4月に出荷し始めたばかりでしたが、早くも会社の売却を検討中であるとの報道があります。
Humane Ai Pinはピンバッジのように胸元に装着でき、音声入力やタップ、ジェスチャーで対話型AIを操作するコンセプトのウェアラブルデバイス。
AIはマイクロソフト・OpenAIとの提携により、内蔵のセルラー通信機能を通じてクラウド上の最新AIプラットフォームを利用できます。
具体的な使い方としては、音声によるAIとの会話でメッセージを作成し送信したり、翻訳デバイスとして使ったり、搭載するカメラでAIにものを見せて質問するといったことが可能です。
液晶やOLEDのようなディスプレイは搭載していないものの、小型プロジェクターを内蔵しており、手のひらなどに映像を投影することもできるようになっています。
これまでにないフォームファクターで、全く新しい体験を提供するということから、Humaneは著名な投資家からの2.3億ドルもの資金調達に成功しています。
瞬間最大風速的な話題を世の中に提供しましたが、実際に試してみた人々の感想はさほど芳しくなかった模様です。
たとえばタッチコントロールによる操作が難しい、動作がいまひとつ遅い、AIに質問しても返答が帰ってくるのに数秒間かかる、返ってきた答えも見当外れな場合があるといった感想があがっていました。
バッテリー駆動時間が短く、使っていると温度が上がりすぎてしまうという物理的な問題もありました。また700ドル(約11万円)という価格も強気すぎたかもしれません。
■手のひら投影型AIデバイス「Humane Ai Pin」で未来っぽい体験を始めた。動画付きファーストインプレッション | テクノエッジ TechnoEdge
今回、Bloombergが「この件に詳しい関係者」から得た話として伝えたところでは、Humane社は現在事業の買い手を探しており、売却の可能性をはかるために財務アドバイザーと交渉しているとのことです。
まだ売却を決定したわけではないということですが、Humaneは7億5000万ドルから10億ドルでの売却先を探しているとされます。
スタートアップ企業が派手なデビューを飾り、その知名度を大きく上げたのちに大企業に買収され、創業者は大金を手にして新たな事業を開始するというのは近年よくあるパターンですが、Humaneに関してまだ製品を初めて出荷してから1か月しか経っていません。
Bloombergは、いまはまだ売却の可能性を模索しているごく初期の段階だとしており、取り引き完了まで話が進まない可能性もあると述べています。