24時間AIハッカソン優勝チームインタビュー。AI活用のポイントやハッカソン挑戦者へのアドバイスを訊きました

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PCショップのドスパラの運営元であるサードウェーブが主催する「24時間AIハッカソン Powered by GALLERIA」。一般公募のチームが限られた時間でAIプロダクト開発に挑む企画です。9月に東京大会が開催され、5月の大阪、7月の福岡と3大会の優勝チームが決まりました。

11月開催の「AIフェスティバル2024 Powered by GALLERIA」では、「24時間AIハッカソン 優勝チームの集い」としてこの3チームが一堂に会します。それに先立ち、テクノエッジで各大会の優勝チームにオンラインインタビューを実施しました。

ハッカソン参加を決めたきっかけやチーム編成、準備のポイントや当日の予期せぬトラブル、そして今後の大会参加に興味がある人へのアドバイスをお伺いしています。



■ 24時間AIハッカソン、大阪・福岡・東京大会を制したのはこんなチーム

大阪24時間AIハッカソン優勝チーム『たこ焼きテクノロジーズ』代表の三上さんから。『たこ焼きテクノロジーズ』についておしえてください

三上さん:私が経営する会社で昨年からインターン生を受け入れていまして、『たこ焼きテクノロジーズ』は社会人3名と学生2名の混合チームとなっています。

会社ではIoTやAIを製造業に導入する業務をしておりまして、生成AIに非常に興味があったことから参加しました。

大阪24時間AIハッカソン 2024優勝チーム『たこ焼きテクノロジーズ』三上氏(右下)

普段のお仕事でAIは活用されていますか?

AIの業務化は、まだスタートしたばかりだと思っています。IoTで製造業のデータを取るのは割とビジネスとして成り立っているのですが、AIはまだまだですね。AIのためにGPUを買ったりすると、特に何か儲かることもなく赤字です。

興味本位でずっと技術を追っていて、その界隈で有名な方ということで、今回のハッカソンの司会もされたAI研究家の清水亮さんはずっとウォッチしています。清水さんが大阪に来られることで、私の中で参加が確定したような形です。

続いて、福岡大会優勝チームの『捗dle(はかどる)』の窪田さん

窪田さん:捗dleは福岡の大学生、1年生1人と3年生2人で参加しました。3年生の2人はすでに友人で、Xで興味ある人いる?と呼びかけたところ、1年生の子がやりたいといって3人集まった感じです。

福岡大会優勝チーム『捗dle』窪田さん(中央右)

学部が情報工学部情報工学科で、AIに関連する演習もあるのですが、学校ではそこまで進んでいません。ただ個人ではモデルを触ってみたりはしていて、そういうところをハッカソンでも出せたかなと思っています。

最後に、東京24時間AIハッカソン優勝チーム『異業種データサイエンス研究会』井伊さんはいかがでしょう

井伊さん:Facebookで5000人超のコミュニティ『異業種データサイエンス研究会』を運営しておりまして、そこで集まった仲間が、実は大阪大会にも異業種データサイエンス研究会(関西)として参加していました。東京では、異業種データサイエンス研究会(関東)で参加しました。

私は定年退職後フリーランスをしておりまして、その他のメンバーは製薬企業でバリバリのAI部門のチームリーダーやっている方、それとスタートアップでLLMとか、AIに取り組んでいる方。あとは医師免許を持って研究されている方で、データサイエンスやAIを研究に活かしたいと思っている方、そんな4名で参加しました。

異業種データサイエンス研究会(関東)井伊さん(中央)・審査員 小林さん(左端)・司会 清水さん(右端)

日ごろからAIを使っているかと言いますと、バリバリやっています。というのは、私はAIを教える仕事やAIの案件を受けていて、啓蒙活動にも非常に関心がありまして、大体月に2回くらい、COMPASSでAIやデータサイエンスの無料のセミナーをもう5年ほど続けています。個人で継続してやっている中では、かなり長いほうじゃないかなと思っております。

■ AIハッカソンに参加を決めた理由

『たこ焼きテクノロジーズ』三上さん:生成AI系をずっとウォッチしていまして、Xで清水亮さんもフォローしています。大阪で24時間ハッカソンをやるというポストを見て、「ああ、これは清水亮さんに直接会える。旅費もかからないし、これは参加だな」と(笑)。

しかも賞金が出るのは、AI系の大会では多分初なのではないかと思います。若い学生を募ると、清水さんに会えるんだったら参加したいという学生が多く集まりました。1チーム5名までだったのですが、5名を超えてしまったので2チーム作りました。

『捗dle』窪田さん:うちのチームも、AIそのものは多分みんなそれぞれ興味があったと思うのですけど、代表の佐藤が一緒に出ないかと声がけして、3人集まったのが結成の経緯になると思います。

佐藤がXで「出るけど誰か興味ある人いないですか?」と投稿したところ、DMが多く来たという感じです。AIのハッカソンをあまり聞いたことがなかったし、賞金も出るので、行ってみよう、やってみようと、本当にチャレンジみたいな感じで参加してみました。

異業種データサイエンス研究会(関東)』井伊さん:以前に清水亮さんが長岡で「AI×図書館ハッカソン@長岡」をされていて、そこに研究会のメンバーも参加していました。

そのメンバーが大阪24時間AIハッカソンにも参加したいけれど仲間がいないということで、別のコミュニティの方から声をかけていただいて。私もFacebookで声をかけて、なんとか大阪であと2人集まり3人のチームで出場しました。

そこから、じゃあ東京大会にも出ようと。私は岐阜県の飛騨地方に住んでいるのですが、こういう機会に東京に出て、みんなといっしょにやろうと。そういう経緯で、東京では力を入れて、かなりモチベーションの高いメンバーを集めて参加しました。

■ 24時間で結果を出すこと。環境構築の準備は必須

実際にAIハッカソンに参加してみた感想は?

三上さん:せっかく清水さんにお会いするということで、また 「継之助」(NVIDIA A100 80GB/8基搭載のAIスーパーコンピューター)の助けを借りられるので、とにかく使いこなしてやろうといいますか、ほとんど全部ローカルで動かしたいなと思いました。

そこで1週間前から結構準備しまして、ローカルで動くモデルで最近の技術はだいたい準備した状態で挑みました。

準備には枯れた技術で、Node-REDというIoTでよく使うツールとAPIで、ローカルLLMのサーバーを構築して、繋いだらすぐにアプリができる状態にしておきました。

準備した結果はどうでしたか?

三上さん:トラブルが出まくりましたね。やはり提供いただいているドスパラさんのGALLERIAを使いこなしたいけれど、セットアップの『Windowsへようこそ』からやりたくはないなと思い、Ubuntuの外付けのUSBブートのSSDを用意して、挿したらすぐにAI環境が稼働するように準備はしていました。

しかし外付けのUSBブートがなかなか起動しなくて、めちゃくちゃ焦りました。1時間くらい抜き差ししたり、ケーブルを交換したりしていました。やっぱり外付けのSSDブートは結構きついなと。もうM.2交換させてくれみたいな感じにはなりました(注:大会のレギュレーションで貸出マシンのOSの削除、本体の分解、開封は禁止となっていました)。

なので、そこが一番苦労したといいますか、一番焦ったところです。なんとか動いたのですけど、1時間苦労するぐらいだったらWindowsを0から構築したほうが早かったかもしれません。ただ、他のチームの発表を見ていると、発表の時にWindowsの更新がかかったりしていましたね。

『たこ焼きテクノロジーズ』三上さん

ローカルにこだわった挙句、GALLERIAと継之助をローカルで使いこなすのにすごく苦労しました。ただ、ふたを開けてみたら、(他のチームは)ChatGPTのAPIオンパレードで。その辺なんかルールがあったらまた面白いなとは思っています。

ローカルで動かすか、APIで行くか。会場で環境構築をどうするかもポイントなんですね。

三上さん:AIとなるとLINUX、Ubuntu、Dockerですので、やっぱり最初からUbuntuクリーンインストールからセットアップのほうが早いかなと思いました。

これから参加する人への助言にするなら、会場で触る環境を事前に徹底的に調べて、準備もパターンを用意する感じでしょうか。

三上さん:そうですね、ローカルで動かす場合だったら。APIだったら全然そんなことはいらないのですけど。

『捗dle』チームの窪田さんは、実際に参加してみてどうでした?

窪田さん:自分たちも、「継之助」とか性能がめちゃめちゃ良いコンピューターを使いたかったのですが、やっぱり環境構築が全然うまくいかなくて、結局自分らで持ってきたパソコンを使いました。

環境構築もそうですし、自分と1年生の子はハッカソン自体参加するのが初めてだったので、場の雰囲気に慣れるところも自分たちでは苦労しました。

雰囲気はどうでした?

窪田さん:ほかのチームを見ていると「わ、なんかできそうだな」と思ってしまって、ちょっと委縮しそうになったのですが、代表の佐藤は大学生になってから色々ハッカソンに参加していたので、すごく頼ってがんばりました。

■ アイデア出しと実装の時間配分も大事

作品については、トラブルや困った点はありましたか

窪田さん:今回、始まってからその場でテーマが発表される形だったので、事前にチームでどういうテーマが来るのか、別の大会のテーマだとどんな感じになるのかなと、色々想像して準備していました。

福岡大会は「熱」というテーマだったのですが、熱と出たときに「うーん、わからないなぁ」みたいな(笑)。自分らでどう作り上げていくかに結構時間を割いてしまって。決まったあとはすぐに作り始められたのですけど、それまでは色々大変でした。

最初の2時間くらいはパソコンに触らずに、ずっと紙にアイデアを書いていたのですが、途中で2つに分岐してしまって。佐藤の方は画像解析でパート モデルを使いたいという方向だったのと、もうひとつ『熱』テーマにあわせてヘッドバンギングをゲームにするちょっと変な感じのアイデアとに分岐してしまい、収拾をつけるのにすごい時間がかかりました。

三上さんの『たこ焼きテクノロジーズ』は、テーマが発表されてから作業開始までどれくらいかかりましたか

三上さん:学生主体にやらせようとしましたので、2時間くらいポストイットにいっぱい貼って書きまくっていました。大阪では「夢」というざっくりとしたテーマだったので、まとまるまでに結局2時間かかりました。

もういい加減作るぞと発破をかけたり、そんなに壮大な夢を語っても現状のLLMでできることは知れてるぞと言ってなんとかまとめさせました。

限られた時間のなかで2時間を使ったのは結果的にどう出ましたか

24時間すべて会場を使えれば良かったのかもしれないですけど、大阪大会は会場が専門学校で18時には終了でしたので、開始から2時間使ってしまうともう15時で、あと2~3時間くらいしか実機に触れません。

一応はVPNをGALLERIAに張りまして、帰って自分の会社の事務所から遠隔で開発する予定だったのですけど、それもUSBブートでトラブルがあったり、途中で応答がなくなったりしてすぐ終わってしまって。なので、やはり初日にある程度形にすることはめちゃめちゃ心がけました。

(注:福岡と大阪は専門学校を借りて開催していた都合上、夜は18時まで、朝は9時からという制限がありました。)

井伊さんはどうでしょう

井伊さん:私、実は2か月くらい準備をしていました。このためだけではないのですけども、AIの新しい技術はいち早く論文を読むだけではなく、手を動かすことを心がけて、それで色々教材を作って教えるというサイクルを回しています。

LLMはAPIを使っても色々できるのですが、それではちょっと味気ないだろうということで、大阪のたこ焼きテクノロジーズさんと同様にローカルで動かす、それもファインチューニングのRAGも実装しておいて、状況に応じてデータをちょっと入れ替えればできるところまで事前に作り込んでいました。

東京大会の場合は、少し「継之助」を事前に使える時間が長かったようですが、割り当てられたDockerにコードも全部アップロードして、データだけ差し替えたら動かせるというところまでもっていきました。

それから、ひな形になるようなアプリも2つくらい作りました。私がコーディングの80~90%したのですが、メンバーもみんな一応動かせるようにハンズオンを実施しました。

また、ちょうどたまたまNVIDIA RTX 4090搭載のノートパソコンが格安でオンラインで出て、ハッカソンに持っていきたいなと思って買ってしまいました(笑)。アプリ実行はそっちでやると。

継之助は1週間使い倒して、普段はクラウドでColab Proの100(CU)の40GBとかよく使っているんですけど、80GBが使えるってことで、LLMのちょっと大きめのCalm-3 22b(サイバーエージェントが公開している日本語LLM)ぐらいのモデルまでファインチューニングが、これぐらいの時間でできるんだなってことまで試しました。

実際にはもっと小さいモデルでしたが、そこら辺をやっていたので、夜は飲みに行って二次会まで行って帰ってきて、酔っぱらって夜中3時にプログラムしていました。そして、実は7時ごろには全部出来上がっていました。まあ、技術的なことは準備しておけばできると。

それよりも、アイデアのところに時間をかけました。さらにメンバーの役割をちょっと分けて、私はいろいろ環境設定とかで、他の3人のメンバーはソフトだけでなく物理的なモノも作りたいと思って、家電量販店にガジェットを買いに行ったりしていました。

とにかく全員参加でアイデア出しのところを徹底的にやろうと。あとは、決まったら作るのは割と早く作れると算段していましたので、アイデア出しは二転三転して4~5時間ぐらいはかけていました。

相当準備をして、コードも触って、で、テーマの方に合わせるというか、調整するような感じだったのですね

井伊さん:もちろん、このやり方には良し悪しがあると思います。あらかじめ何か準備していたら、その範囲内のものしか作れないということもあります。

当日アレンジした部分も少なからずあるのですけども、一応動くものとしては、キャラクターがしゃべるアプリを作っておいて、それをベースに当日のテーマに合わせていろいろやることを考えていました。

コーヒー缶が喋る、ペットボトルのお茶が喋るコンセプトにしたので、面白い動きをするとか、キャラクター作り、世界観などに大半の時間を使って。プログラミングはほぼ、私とモデル作りの人が初日の夜にやったぐらいです。

今の時代、それこそChatGPTなどを使えば技術的に高度なことができます。それよりも、やはりアイデアであるとか世界観とか、AIをどう風に社会実装するのかとか、そういう部分を作り上げたいなとあらかじめ考えていて、その通りできたのが良かったですね。

■ AIハッカソンに挑戦する人へのアドバイス

三上さん:アドバイスとしては、やはり事前に使えるAI技術を準備しておいた方がいい。現地ではテーマに合わせて調整といいますか、コンセプトの合わせこみといった感じです。

あとは、何が何でも2時間前までにはもう全て動く状態にして、最後の2時間はプレゼンを練習すること。やっておいた方がポイント高いかなと思いました。あとは、学生と社会人混合のチーム構成は割と楽しくできましたってところですね。

窪田さんからも、何かこれからAIハッカソンに出ようかな?と思った人にアドバイスや経験談があればお願いします

窪田さん:自分たちは学生だけで参加したのですが、AIにちょっとでも興味があれば、参加してみたらいいと思います。さっき世界観みたいな言葉がでてきましたけど、「技術を使って何をするのか」が、AIハッカソンで審査されるポイントだと思います。

自分たちはヘドバンを画像認識でカウントするゲームのようなものを作ったのですが、発表でスライドの音がうまく鳴らなくて。代表の佐藤がパソコンに向かって首を振っている映像が無言でずっと流れるという、すごくシュールな時間があって(笑)。そういうくだらなさのような、AIを活用して何をしてるのというところを見られると思うので。自分たちみたいに、チャレンジしたい人は参加してみたらいいんじゃないかって思います。

井伊さん:うちの研究会からは大阪大会にも出たということで、どんな雰囲気だったかは肌感覚ありました。なので、準備をしておけばアイデアに集中できるなってことで、われわれはじっくり準備しましたが、勢いで出るのもすごくいい体験になると思います。

周到な準備がなくても、技術的なことはその場で自分たちで発見してやる、24時間あれば色々調べてということも可能だとは思います。

ただ、4~5人メンバーが集まった中で、最低1人はPythonだとか、AIのモデル動かしたとか、なにか経験がある人が入ってないと不安だとは思います。そういう人が1人いれば、後はアイデアとかそっちの方が重要なんです。

ぜひ皆さんも1人、ちょっとプログラミングとか詳しい人を立てて、後の人たちは勢いで参加したら、楽しい経験ができるかなと思います。

ありがとうございました!


優勝3チームが集結する「24時間AIハッカソン 優勝チームの集い」は、ベルサール秋葉原で11月8日・9日に開催するイベント『AIフェスティバル 2024 Powered by GALLERIA』内のトークセッションとして実施予定です(11月9日(土)12時15分~)。

『AIフェスティバル 2024 Powered by GALLERIA』ではこのほか、落合陽一氏をはじめ豪華ゲストによるAI技術・ビジネス・クリエイティブが学べるトークセッション、第三回「AIアートグランプリ」最終審査会や、最先端のAIスタートアップや事例が学べるブース出展など様々な企画を用意。AIに関わる様々な人、興味ある人が集まりコミュニケーションできる場です。

AIフェスティバル 2024 powered by GALLERIA
《AIフェスティバル 実行委員会》

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