AIフェスティバル2024を振り返る。AIで消えるアートとコードの境界線

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11月上旬に秋葉原で開会されたAIフェスティバル 2024。「AIをもっと身近に、もっと楽しく」を旗印に、インテル・NVIDIA・マイクロソフトほかAIプラットフォーマーの出展、メディアアーティスト落合陽一氏による基調講演、第三回を迎えたAIアートグランプリの受賞作発表、24時間AIハッカソン優勝チームの集いなど、AIの最先端が一堂に会するイベントです。

PC業界の黎明期からアートとテクノロジーの領域に携わってきた編集者であり、第一回AIアートグランプリを受賞したアーティストでもある松尾公也氏が、あらゆる分野を変えつつあるAIの最前線と、AIフェスティバルという場が意味するものについて振り返ります。


AIフェスティバル2024では、第一回AIアートグランプリ受賞者としてパネルディスカッションに参加しました。

第二回AIアートグランプリを受賞した快亭木魚さん、佳作受賞のKATHMIさんと、AIアートに取り組む姿勢について話し合ったのですが、自分の場合はその前の、落合陽一さんによる基調講演の興奮が冷めやらず、かなり熱く語ってしまった気がします。

落合さんの話で興味深かったのは、AIに限らず、テクノロジーの進化と自分がやろうとしていることの交わる部分を予測して取り組んでいくかというところです。大阪万博でのパビリオンなど、数年後の技術の進化を予測して、その時点で実現可能なものを計画し、実践していかねばならないわけですから。

生成AIは日進月歩であり、AIアートグランプリにしても、1年前のテクノロジーでは不可能だったことがいとも簡単に達成可能だったりします。締め切りがあと数日遅かったらあの技術を入れられたのに……といった悔いは多くの参加者が抱いていたのではないでしょうか。

そんななかでアーティストは、また自分のようにアートの世界とは縁遠い人間も含めて、創作に取り組んでいく人たちはどのような悩みを抱えているのか、そして、その解決策をどう探っていくのか。これは大きな問題です。

AIフェスティバル 2024のセッションでは、アート、ビジネス、テクノロジー、各方面からの様々な議論が繰り広げられました。それぞれここでしか聞けないようなAIに対する取り組み方のヒントが得られて、全セッションに出ていれば大きなインプットになったのではないでしょうか。

セッションを聞くだけでなく、会場にはIntel、NVIDIAといったAIプラットフォーマーや、AIアートグランプリのファイナリスト、東京・大阪・福岡で開催されたAIハッカソン優勝者によるブースが設けられており、生の技術動向や、アーティストによる直接の解説を聞く機会も得られました。

24時間AIハッカソンの優勝者セッションでも感じましたが、AIの場合には、アートだけ、プログラミングだけ、といった境界線を引くことは無意味なことかもしれません。


落合陽一さんのAIアートは2つの世界をマージしたものですし、AIハッカソン東京大会に優勝した『異業種データサイエンス研究会(関東)』の作品「付喪神ジェネレータ」は、さらにAIアートグランプリでも入賞を果たしています。


『異業種データサイエンス研究会(関東)』の井伊さんが優勝者セッションで語った、「リップシンクもさらにいいのが出てきたり、音声に感情を入れてやるとか」という発言は、自分のAI作品制作でも非常に共感できるものです。

今年1月に、台湾の台北当代芸術館に自分のAI作品が展示される機会がありました。キュレーターの2人へのインタビューで、自分がアーティストを名乗ってもいいのだろうかと尋ねたときには、彼らが以前キュレーションした作品の作者はアーティストというよりもエンジニアだったが、「それは重要なことではありません。重要なのは、人々の心に触れられるかどうか」と答えてくれました。「AIフェスティバル」が「フェス」を冠しているのは伊達じゃありませんでした。

AIアートグランプリは、自分が受賞した2023年3月から3回目となりました。わずか1年半の期間で、応募作品のクォリティの上がり方は凄まじいものがあります。ファイナリストの誰が受賞するかは正直、自分もまったく予測できませんでした。

そんな中、グランプリを受賞したのは、elimさんの「象牙のナイフ」。AIアートグランプリは最終審査でのプレゼンがものを言います。自分が受賞したのもそのおかげだと思うのですが、elimさんのパフォーマンスは目を見張るものでした。技術的解説だけでなく、最後には観衆の前で見事なラップを披露しました。

それもそのはず。彼は本職のラッパーであり、自作曲のリリック、ミュージックビデオを自ら作り、ラップももちろん自分自身のもの。血肉である創造物をAIで具現化していったわけです。この辺り、妻の歌声を再現することを目的とした自分と近いものを感じ、とても嬉しくなりました。

AIフェスティバル終了後、審査員、出演者、ファイナリスト、ブース出展者が歓談する場を設けられたのですが、そこでも熱心な議論が戦わされていました。そこで、審査員である漫画家・イラストレーターの安倍吉俊さんとAIクリエイターの皆さんとの対話を興味深く聞いていたのですが、おそらくそこで感じられたであろうことを、安倍さんが後日、YouTubeでまとめられていました。

あなたはいつ生成AIを使いますか?

生成AIの時代、自分の欠落した部分こそが長所になっていくという考え方。AIは人をエンパワーするものだという、最近考えていることと合致するもので、今回の入賞者の皆さんからも感じ取れました。

これだけのインプットがあるイベントはそうそうないと思います。次回、また参加するのが楽しみです。

《AIフェスティバル 実行委員会》

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