AI普及で人間の役割は「発想力」へ。東京24時間AIハッカソン 2024イベントリポート

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PCパーツショップのドスパラの運営元であるサードウェーブが主催する「24時間AIハッカソン Powered by GALLERIA」は9月14日から15日、「東京24時間AIハッカソン 2024」を開催しました。

2023年11月に秋葉原で第1回が開催された24時間AIハッカソンですが、2024年には5月に大阪、7月に福岡で開催済み。今年3回目となる東京24時間AIハッカソンは、池袋のeスポーツ施設LFS池袋で開催されました。

▲左から、審査員のソニーグループ小林さん、Business Insider Japan伊藤編集長、司会の清水さん

ハッカソンとは、エンジニアやデザイナー、プログラマーなど主にソフトウェア開発関係者がチームを組み、特定のテーマに対して短期間で開発を行い、その成果を競うイベントのこと。似たようなイベントにアイデアソンがありますが、アイデアを競うアイデアソンとは違い、ハッカソンでは成果物が求められるのが特徴です。

大阪大会、福岡大会では会場の都合により、会場でのハッカソンは18時まで、翌日は9時からとの制限がありましたが、今回の東京大会では24時間完全継続方式での開催でした。また、参加チームも8チームと今年最多となりました。

各チームの発表

そんな東京24時間AIハッカソンのテーマは「超」。このテーマに沿って、各チームが様々なアイデアを形にしていきました。

「肩乗せ型おしゃべりスピーカ」:ゆるunity電子工作部

言葉でのコミュニケーションは、時として思わぬ誤解を与えてしまうもの。同じ内容でも、言い方ひとつでまったく違う意味に捉えられてしまうということもあります。

そうした問題を解決し、誤解の壁を超えて、対面のコミュニケーションをサポートするツールが「肩乗せ型おしゃべりスピーカ」です。

簡単に言ってしまうと、装着者の発言をAIが誤解の生まれないよう適切な表現に改めて音声で伝えてくれるというものです。

肩乗せ型スピーカかつ対面コミュニケーションなので、「装着者の生の発言も相手に聞こえてしまうのでは」という指摘もありましたが、将来的にはマスク型にするなどで解決できるかもしれないとしていました。

▲肩ではありませんが、腕に装着されているのが今回制作されたデバイスです

「Motion Mentor」: AIすこすこ軍団 from つくば

「自分を超える = 筋トレ」ということで、AIによるリアルタイムインストラクターアプリが「Motion Mentor」。トレーニングの様子をAIが認識し、姿勢などについてアドバイスをしてくれたり、選んだトレーナーの声で応援してくれたりするサービスです。

完成度が高く、モーションのデータを増やせばさまざまな動作に対応できるそうです。スマホアプリになれば、ヘルスケア分野などでもニーズが高そうですが、現状ではリアルタイム性を確保するのが難しいようです。

今回はPCのローカル上で動作させていたため、遅延は問題になりませんでしたが、スマホのローカルで処理できるようになれば、今後の発展性は大いにありそうです。

「超未来の付喪神ジェネレータ」:異業種データサイエンス研究会(関東)

今のGPT-4を超えた先、GPT-7や8の時代にはどのような世界になっているのかを想像したとき、きっと全てのものしゃべってくれるのではないか。というコンセプトで制作されたのが「超未来の付喪神ジェネレータ」。

缶コーヒーと紅茶、どちらを選ぶか迷っていると各々がアピールしてきたり、ビジネス応用として「よく振ってから飲んで」「アルコールが入っているから子供が飲んではだめだ」など飲み方の注意をしてくれるといった内容が紹介されました。

簡単に動作するサンプルも作成されており、審査員からはARアプリとして実現できそう、大手広告代理店が開発していそうなどのコメントもあり高評価でした。

「AI仲介型コミュニケーションインフラ」:チームオウルズ

AIが仲介することで、コミュニケーション不全の解消を目指したという「AI仲介型コミュニケーションインフラ」。声から精神状態を分析したり、ユーザーの自己申告に基づいた情報を反映し、表現を柔らかくして他人や自分を傷つけることがないようなコミュニケーションを実現します。

入出力端末にLooking Glass Goを使うなど、意欲的な内容ではありましたが、残念ながらドライバーインストールの問題などがあり、不完全な形で時間切れとなってしまいました。

「超感情リンク」:量子飛行

離れて暮らす恋人同士や家族間では、お互いの感情がわかりにくいという問題があります。そこで、喜びやストレス、不安などの感情を簡単に共有できるサービスを目指したのが「超感情リンク」です。

ビデオ通話で顔を見ながら話せば済むのでは、という気もしますが、画面越しでは細かな感情の機微を読み取るのは難しいもの。また、自身の言葉や文字で感情を伝えるのも容易ではありません。超感情リンクでは、AIが顔の表情から感情特徴量をリアルタイムに認識し、人の代わりに相手に伝えます。

デモでは、感情を読み取り、LINEアプリに通知する様子が紹介されました。

「夢をもう一度見る」:Evo Tech

見ていた夢をもう一度見たいと思ったことがある人は多いでしょう。その願いを叶えようというのが「夢をもう一度見る」というサービス。ようするに、見ていた夢を音声入力し、それに基づいて動画を生成するというものです。

単なる動画生成AIでは、と思わなくもないですが、プロンプトを基に夢っぽい表現をすることを工夫したとのことでした。

「kokoronokoe」:チームdual

“超”発表というコンセプトで登場したのが「kokoronokoe」。AIが顔の表情を読み取り、心の声を代弁してくれるというサービスです。

表情を読み取って効果音とともにテロップで流したり、内容を読み上げたりという様子がデモされていました。読み上げ音声にも感情が反映されるなど、細かな部分も作り込まれていたのが印象的でした。

本音が分かってしまうのはいいことなのかという疑問もありましたが、リモート会議開始時のアイスブレイクなどで使うと場が和むのではないかとのことでした。

「マンガde解説」: pipon

世の中には読まなきゃいけない文書、読んだほうがいい文書などがあふれていますが、その全てを読むのは難しいもの。AIを使った要約などもありますが、それすら読めないというのが実情です。そこで、文章をマンガ化してしまえばいいのではというのが「マンガde解説」のコンセプトです。

デモでは、ロキソニン錠の注意書きを1分ほどでマンガ化していました。マンガにしては文章が長いなどの指摘もありつつ、今後の可能性に期待したくなる内容でした。

優勝は「超未来の付喪神ジェネレータ」

最終の審査は難航しましたが、優勝は異業種データサイエンス研究会(関東)の「超未来の付喪神ジェネレータ」に決定しました。「超」というテーマに沿っており、この先の展開にも期待できるということ。また、ハードウェアも作成し、デモも作り込まれていたという点が評価された結果でした。

優勝チームの井伊さんは、「(チームの)4人で知恵を絞って、技術的なことだけではなくて世界観というのを最初から考えていた。そうしたことが評価されたのかなという気がします」と語ってくれました。

なお、今回の東京大会で優勝した異業種データサイエンス研究会(関東)、大阪大会のたこ焼きテクノロジーズ、福岡大会の捗dle(はかどる)の計3チームは、11月8日~9日に秋葉原で行われる「AIフェスティバル2024 Powered by GALLERIA」にて、「24時間AIハッカソン 優勝チームの集い」として一堂に会します。

ハッカソンの裏話や、もしかしたらその後のプロダクトの進捗なども聞けるかもしれません。

AIフェスティバル2024 Powered by GALLERIA 公式サイト

「AIでハッカソンの敷居は下がり、自由な発想がカギに」

AI研究家であり、24時間AIハッカソンの司会も務める清水亮さんに、AIハッカソンの講評を伺いました。

東京大会について、今年のハッカソン全体について講評をお願いします

 東京大会に限らず今回のハッカソンは福岡、大阪ともにレベルが高く、ハッカソンでAIを活用しつつも、AIの活用方法そのものもAIにサポートしてもらう、というような形が増えたように思います。その結果、ほとんどのチームが完走するという成果に繋がったのではないかと考えています。

優勝チームと作品「超未来の付喪神ジェネレータ」についてはいかがでしょう?

 東京大会の優勝チームは、異業種データサイエンス研究会(関東)チームの「超未来の付喪神ジェネレータ」でした。この作品は単にAIを使っただけでなく、AIを使って本来は魂の宿っていないものに魂を宿らせ、人間や他の物体と会話させるという自由な発想から生まれていて、今後広告プロモーションや新しいタイプのユーザーインターフェースなど、大きな発展性を秘めた秘めた点が審査員に評価されたと思います。

AIハッカソンは実装力も重要ですが、実装はかなりAIに頼ることができるので、他のハッカソンに比べるとAIをどう使うかという発想によって大きな差が出るようです。

今後、来年の大会に応募しようかな?と考えている人にひとことお願いします!

 プログラミングをほとんど全部やってくれるAIのある現代では、昔のようにプログラミング経験豊富なハッカーだけが参加できるハッカソンではなくなってきています。

むしろ自由な発想で与えられたテーマを楽しむ、弄り倒す、といったところが鍵になっていて、敷居がぐんと下がっています。24時間ずっと会場にいる必要があるわけでもないので、地方では特に若い女性の参加者が目立っていました。今後もぜひ気軽にご参加いただきたいと思います。

AIフェスティバル2024 Powered by GALLERIAでは、ほかにもAIに関するトークセッションや、第三回AIアートグランプリの最終審査会なども行われます。会場はベルサール秋葉原。入場チケットは2000円ですが、1枚で2日間入場可能です。

AIフェスティバル2024 Powered by GALLERIA 公式サイト
《AIフェスティバル 実行委員会》

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