スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は、地形の場所でも走破できる変形ロボット「GOAT」を開発しました。
近年、スラングとして良く用いられる「GOAT」という言葉は「Greatest Of All Time」の頭文字を取ったものですが、EPFLのそれは「Good Over All Terrain」つまりどんな地形にも対応するという意味です。
GOATの外観は、スポークだけの車輪のような回転脚4つを、ポップアップテントの骨のような、弾性グラスファイバー製の円形の骨組みにくくりつけた格好をしており、その中心には交差する 2 本の弾性グラスファイバー ロッドとワイヤーで、弁当箱のような本体ボディが吊られたような格好になっています。
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本体の内部には小型のコンピューター、バッテリー、ジャイロや加速度センサー、GPSなどを統合したIMU(慣性計測装置)、電動ウインチが収められています。そして、このウインチは本体を固定しているワイヤーをたぐり寄せ、全体をひしゃげるように変形させることが可能です。この変形の具合で車輪の配置が変わり、どんな地形でも走破できるようになるという寸法です。また開発チームは、この設計は柔軟でありながら耐久性に優れていると説明しています。
たとえば、舗装された路面のような平坦な場所なら、車輪を結ぶワイヤーは陸上競技のトラックのような楕円形になり、各コーナーに車輪が配置されて自動車のようにスムーズかつ高速で走行ができるようになります。
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一方で、山間の岩場のような、大小様々な岩石で覆われた場所などの場合は、より真円に近い形状に広がり、走行安定性を高めます。さらに、急な下り坂にさしかかったときは、GOATはボール状に丸まり、文字通り斜面を転げ落ちることでエネルギーを消費せずに移動、バッテリー消費を節約します。さらには筏のように水面を渡ることもできます。
GOATは、IMUがあらゆる地形のセンシングを行うため、周囲環境を視覚的に捉えるカメラは搭載せず、それによって重量や消費電力を抑えています。開発チームはカメラを搭載しないことについて「周囲環境に関する知識が非常に限られている場合でも、環境を活用し最適な経路つまり最も抵抗の少ない経路を見つけることができる」からだと説明しています。
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これらの技術を確認するフィールドテストでは、山岳地帯、水上、都市部を横断する4.5kmの経路をGOATが自律的に移動できました。報告によると、汎用性、エネルギー効率、堅牢性において、GOATは従来のロボットやマルチモーダルロボットよりも優れた性能を発揮したとのことです。
開発チームは「能動的な再構成と受動的な適応の組み合わせを活用」することで、GOATが「自然の多様性を凌駕できるかもしれない」と述べました。
GOATをさらに改良していくことで、将来的に環境監視、災害現場における生存者捜索、月や火星あるいはその他の惑星に送り込んで、現場での地上探査といった用途に使用できるようになることが可能になると期待されます。
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