【動画】から傘お化け風の「1本足ロボット」が木の枝に飛び移る能力を獲得。、リスに着想

テクノロジー Science
Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

ウェブライター

  • X

ガジェット全般、サイエンス、宇宙、音楽、モータースポーツetc... 電気・ネットワーク技術者。実績媒体Engadget日本版, Autoblog日本版, Forbes JAPAN他

特集

カリフォルニア大学バークレー校(UCB)の研究者たちは、小さなリスが不安定な木の枝から枝へと軽やかに飛び移る動きを再現することができる1本足ロボット「Salto」を開発しました。

自然界に存在する動植物から着想を得た生物模倣ロボットには様々なものがあります。UCBの研究者たちが、なぜわざわざリスの動きをマネし、さらに1本足でそれを再現しようとしたのかという疑問はだれもの頭に浮かぶところでしょう。実はUCBはもともと、Saltoの開発を2016年から開始していました。それはけんけん遊びや飛び石のように、限られた範囲内から限られた範囲内へと、ぴょんぴょん飛び移れるようにすることで、様々な地形環境を移動できるように設計された小型ロボットでした。

跳躍を繰り返して移動する方法ならば、整地されていない荒れた地面や、岩場や河原のようなゴツゴツした地形であっても、自由に移動することができます。また、跳躍する高さが十分にあれば、低い場所から高い場所へと飛び移り、しだいに高所へと移動することも可能になります。

このような動作を最適に、しかも少ないエネルギー消費で行えるようにと考えられた結果が1本足ロボットだったわけです。2018年に公開されたSalto-P1の動画は、そのコミカルな動きや姿が、さながら「から傘お化け」のようで印象的でした。

その後も、世界の大学や研究機関は様々な目的や発想に基づく、様々な生物模倣ロボットを開発してきました。その最たるものは、ここ最近実用化しつつあるヒト型ロボット(ヒューマノイド)かもしれません。一方で、人にはできないような動作を実現するために生物の動きを模倣するロボットも研究され続けています。


UCBが今回発表したのは、リスが木の枝から枝へと飛び移る動作をSaltoに応用して再現するという新しい研究です。UCBの統合生物学教授ロバート・フル氏は、「リスは自然界で最高のアスリートだ」と述べ、「リスの機動性と逃走能力は信じられないほど高い。このアイデアは、動物が並外れた運きを実現するために幅広い行動のバリエーションを取り得る制御方法を定義し、その情報を使ってより機敏なロボットを作ろうとするものだ」と研究について説明しています。

すでにSaltoには平らな地面で跳躍し、パルクール的な動きをしたり、着地する能力を備えています。今回の研究において課題に据えられたのは、特定の地点つまり細い棒に向かって跳躍し、そこに着地するということでした。

論文の共同筆頭著者で、現在はイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の助教授を務めているジャスティン・イム氏は「たとえば石けり遊びをしていて、足を特定の場所に着地させたい場合、着地した場所にしっかりと固定して一歩も踏み出さないようにしたい」「たとえば前方に倒れそうなときは、腕をくるくる回すかもしれないが、倒れないようにまっすぐ立ちとうとする動作もおそらく必要になる。もし後ろに倒れそうになれば、うまく倒れないようにするために、腕を後ろにくるくる回すかもしれないが、それで足りなければしゃがみ込む動きも、おそらく必要になる。これがわれわれがロボットに教え込んだ動作だ」と、そのロボットの動きについての基本的な考え方たを説明しています。

目的の動作を実現するため、研究チームはリスがジャンプして枝に着地する際の様子を、センサーおよびハイスピード映像で捉えて分析しました。その結果、リスはまず枝に前足をかけ、そこで衝撃の多くを吸収します。その後、前足に足に力を加えて身体全体が枝から行き過ぎたり、枝に届く前に落下しそうになるのを防いでいました。

研究チームはこれらの分析を踏まえて、Saltoがすでに備えていたバランス維持用の電動フライホイールに逆回転機能を追加し、Saltoの足が枝を掴んだときに衝撃を吸収するできるようにしました。さらに、枝に対して全体の動きが行き過ぎだったり足りなかったりした場合のために足の部分のトルクを大きくする改造も実施しました。

これらの改良により、Saltoは足でつかむ能力がないにもかかわらず、枝に飛び乗って数回バランスをとることができたとイム氏は述べています。そしてイム氏は「今後の研究では、枝にかけるトルクを制御する能力をもっと大きくして着地能力を高めるとともに、より高性能な他のグリッパーを研究するのも面白そうだ。枝だけでなく、複雑な地形の地面にも着地できるかもしれない」とコメントしています。

3月19日に科学誌「Science Robotics」に報告されたこの研究により、将来的にSaltoが、深い森林を枝から枝へ飛び移ることで森林や樹冠内の環境変化を監視したり、構造物のトラスや桁間を飛び移るようにして移動する鳶職人のようなロボットの開発における基礎的な技術として役立つことが期待されます。




THEビッグオー Blu-ray BOX
¥27,746
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《Munenori Taniguchi》

Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

ウェブライター

  • X

ガジェット全般、サイエンス、宇宙、音楽、モータースポーツetc... 電気・ネットワーク技術者。実績媒体Engadget日本版, Autoblog日本版, Forbes JAPAN他

特集

BECOME A MEMBER

『テクノエッジ アルファ』会員募集中

最新テック・ガジェット情報コミュニティ『テクノエッジ アルファ』を開設しました。会員専用Discrodサーバ参加権やイベント招待、会員限定コンテンツなど特典多数です。