米サンフランシスコ・ベイエリアのスタートアップ企業Earthgridが、従来の技術に比べ100倍高速に、そして最大98%も安価に地下トンネルを掘り進めることが可能なプラズマ式掘削ロボットを開発しています。
Earthgridはこのロボットで米国全土を網羅する地下ネットワークを構築し、エネルギー、インターネット、電力といった公共インフラの地下埋設化を行いたいと述べています。
既存のトンネル掘削機は巨大な回転式の掘削ホイールで地中をガリガリ削っていく力技スタイルな代物ですが、この方法は岩盤の硬さに大きく工期が左右され、切削ヘッド交換やメンテナンスも頻繁に実施しなければならないなど、コストもバカになりません。
2018年、スタートアップ企業のPetraは高熱を発するプラズマトーチヘッドを動かし、岩石を溶かして穴を掘る方法をテストしていました。しかし、この方法では溶けた岩、すなわち溶岩を処理しながら穴を掘り進める必要があり、最近ではPetraは高温ガスの噴射で起こる核破砕(Spallation)現象によって穴を掘り進める方法を採用しています。この方法なら固い岩盤に突き当たっても作業が停止することがありません。
今回紹介するEarthgridの掘削ロボットRapid Burrowing Robot (RBR)も、やはり当初のPetraと同様にプラズマトーチを使用する方式を採用しています。しかしPetraと違うのはロボットの先端に取り付けられた回転する円盤(リグ)にプラズマトーチをフィボナッチ螺旋状(巻き貝のような構造)に並べ、一斉に噴射し、掘削した土石を後方に掻き出しつつ目的の大きさのトンネルを掘り進められるところ。
Earthgridの創業者トロイ・ヘルミング氏は、特許申請書類のなかでRBRの仕組みについて解説しています。それによると、1m径の穴を掘る低コスト構成の場合は、消費電力500kWのプラズマトーチ72個を使用し、補機類を含めた総使用電力は約40MW、1メートルあたり300ドル程度で掘ることができるとのこと。
また、径を3倍に広げて実用的なサイズのトンネルを作るには、フロントリグの後ろにもっと大きな「マザーリグ」を設置する必要があり、さらに2車線を収容する10m径の車道用トンネルを掘るなら、マザーリグの後ろに第3ステージとなる「ファザーリグ」まで設置できるとされます。このサイズになると、必要な電力量は1.38GWにまで膨れ上がるものの、トーチ単体の出力をもっと大きくしたり、供給電力源をパワーアップすれば、RBRは1日あたり最大1kmの速度で実用的なトンネルを掘り進められるとしています。
現在、Earthgridはシードステージでの資金調達段階にあるとされ、RBRもまだ開発中です。ただ、ヘルミング氏はLinkedInへの投稿でニューヨーク州、フロリダ州、ワシントン州で公益事業会社として認可されたことを明らかにしており、12の州で公共トンネル用地への立ち入り権を得ていると主張しています。
そして、来月にはRBRの初号機が完成し、カリフォルニア州リッチモンドで最初の試験掘削を開始する予定になっているとEarthgridは述べています。このプラズマ式掘削ロボットが目論見どおり機能するかは、最初の試運転である程度わかるでしょう。もしヘルミング氏の言うとおりの性能を発揮するのなら、イーロン・マスクのThe Boring Companyは何らかの対抗策を考えなければならないかもしれません。