写真画質の向上目指しライカと協業しているシャオミが、ソニーの1インチセンサーであるIMX989を搭載し、カメラ機能を超推している「Xiaomi 12S Ultra」を発表した際、雷軍CEOは「今回はDXOMARKには評価してもらわない」とわざわざ言及しました。
DXOMARKはスマートフォンを含むカメラの評価をスコア(数字)で出すことで知られている企業。近年ではiPhone、Galaxy、Pixelの新機種がDXOMARKで勝った負けたといったニュースをよく目にします。シャオミはそれまではDXOMARKの高スコアを誇示していました。
▼1インチセンサー搭載Xiaomi 12S UltraのDXOMARK評価は、旧モデル11 Ultraを下回っている
▼6月28日にbilibiliのシャオミ公式アカウントにアップされた動画でDXOMARKでの評価をしないと語る雷軍CEO
この動画ではbilibliリスナーから「ライカというお守りを得たからにはDXOのスコアも上がるんでしょうか」という質問があり、それへの回答が、今回はDXOMARKは使わないというものでした。「お金を払って製品のベンチマークを依頼してないのなら、12S Ultraのスコアは低く出るんじゃないの?」と心配する声が上がっており、DXOMARKの公式Weiboは即日、「自分たちは消費者のために公正な評価をしている」というコメントを発しました。
▼シャオミ雷軍CEOの発表後、即座にWeiboで公開されたDXOMARKのコメント
DXOMARKはフランスに拠点を置く同名企業によるカメラ評価サービスですが、世界10大スマホメーカーのうち7つが中国拠点。つまり、多くのクライアントが中国にいることから、中国版のサイトやSNSでも活発に活動しています。
「お金でレビューの点数を買う」というのは中国でよく聞く話なので、DXOMARKはよけいに疑惑払拭のためのアクションを急いだのかもしれません。
▼DXOMARK中国版公式サイト。中国企業としてサイトの運営に必要なICP番号も取得している
DXOMARKその後、8月8日に「自分たちで購入して12S Ultraのテストを行っている」、8月25日はCEOがビデオで「お金で点数を買えるわけがない。自分たちには100名を超えるエンジニアと16の実験室で科学的な評価をしている」と矢継ぎ早に公式Weiboで発表しました。
▼DXOMARKの発表に、Xiaomiファンらしいアカウントから「嘘をつけ、Honorの評価が高すぎるだろう」というコメントがつけられている
そして、8月30日夜になってXiaomi 12S UltraのDXOMARK評価が発表されました。冒頭で紹介した通りスコアは138の世界第5位。
138というスコアはiPhone 13 Pro Maxよりも高い数値で充分に高画質ではありますが、旧機種の11 Ultraよりも低い数値に疑惑の目を向けるユーザーもいます。筆者は12S Ultraを所有していて、Mate 40 Proや13 Pro Maxと比べたことがありますが、ハッキリと優劣はつけがたいレベル。
DXOMARKに限らず、画質評価は画作りなどフィーリングによる評価が多く、完全に客観的なレポートだけで組み上げるのは難しいものです。また、シャオミに限らず中国製のカメラ製品はハードウェアのリリース後にソフトウェアアップデートで大きく調整してくることが多いので、現時点の評価が旧モデルを下回ることに、一定の合理性はありますが、この数カ月のやりとりはガジェット好きの憶測を呼ぶのに十分な火種となりました。
▼元OPPOのVIPがコメントして火に油を注ぐ
12Sのスコア発表後、OPPO前副総裁の沈义人氏が、DXOMARKのWeiboに「DXOMARKの点数が買えるというのは間違いだが、彼らの有償サービスでコンサルティングを受けると、どうスコアが上がるかは指導してもらえる」とコメントしたことで、事態はさらにヒートアップ。コンサルティングをしているのだから当然といえば当然なのですが。
これを、DXOMARK vs. ライカというアングルで見ると面白いかもしれません。DXOMARKの指導どおりにやるのはライカ的に受け入れがたいものもあるだろうし、両方を天秤にかければライカブランドのほうがDXOMARKより強いからシャオミがDXOMARKを切るのはまあ理解できるのですが、非情な話ではあります。
当のシャオミや雷軍CEOはDXOMARKのスコア発表後も沈黙を守っていますし、12S Ultraは中国国内のみの販売なのでこの話が中国大陸の外に出てくるかどうかはわかりませんが、スマホカメラの性能評価を巡る騒動はしばらく続きそうです。