逆相をぶちまけて音を封じ込めろ。オープンなのに音漏れしない新発想イヤースピーカー「MWE001」を試す

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小寺信良

小寺信良

ライター/コラムニスト

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18年間テレビ番組制作者を務めたのち、文筆家として独立。家電から放送機器まで執筆・評論活動を行なう傍ら、子供の教育と保護者活動の合理化・IT化に取り組む。一般社団法人「インターネットユーザー協会」代表理事。

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いわゆる「耳を塞がない系」のオーディオ製品は、以前なら安全のためのスポーツ用途骨伝導イヤフォンぐらいしかありませんでしたが、このコロナ禍でリモート会議に超便利じゃんということが発見されて以来、爆発的に製品が増えていきました。骨伝導はお馴染みShokzをはじめBoCo、Philips、Cheero、ナガオカなどが製品化しています。

一方耳にひっかけて小型スピーカーを鳴らすというオープンイヤースピーカーは、ambie、Oladance、ビクターから出ていますが、「サングラス型」が登場して以来、なんだか話が変わってきた感があるところです。

そんな中、オープンイヤー方式ながら音漏れの防止に注力した製品「MWE001」のクラウドファンディングが、 GREEN FUNDINGにて始まっています

▲リモートワークやオンライン会議に最適なパーソナルイヤースピーカー「MWE001」

開発したのはNTTソノリティという、2021年9月創業のNTT100%子会社で、NTTで開発した先進的な音響信号処理技術を事業展開するために設立されました。「MWE001」はそのコンシューマー向け製品第1号ということになります。

キーになる技術は、「PSZ」(パーソナライズド・サウンド・ゾーン)。耳で聴くために放出される音と、逆位相の音を外へ向かって放出します。いわゆる「音漏れ」する音は、この逆相の音によって打ち消されますので、音漏れが大幅に少なくなる、という原理です。「音が漏れないように密閉する」のではなく、「出て行った音を消し込みにいく」という発想がユニークです。

元々はNTTグループで導入した、リモートワークを基本に自由に働き方を選択できる「リモートスタンダード制度」を活用するために開発されたということで、基本的にはリモートワーク時の音楽再生やリモート会議で使える製品に仕上がっています。

構造としてはシンプルな有線スタイルで、Y字型分岐の先にLRのユニットがあります。ユニットは「の」の字の先にドライバが取り付けられた構造で、耳穴方向へ音を出す穴が1つ。一方アーム部の両脇に、逆相を放出する穴が2つあります。

▲「の」の字型フレームの先にドライバ

▲アームの付け根部分に逆相放出口

▲裏面はシリコン素材で柔らかい

装着は耳たぶの上から巻き込むように取り付けます。耳穴の上から音が降りてくるスタイルとなります。耳に当たる部分にシリコンクッションがあるため、当たりが柔らかいのがうれしいです。重量は片側4gぐらいしかないので、耳たぶへの負担はほとんどありません。

▲耳たぶへ巻き付けるように装着

別途アーム部の根元部に取り付ける固定補助具が付属しますが、固定がユルいなという方は取り付けるといいでしょう。これはあってもなくても音質には影響ありません。

通話用マイクは、といいますと、R側のケーブルの途中にあります。いわゆるEarPods方式ですね。ではさっそく試してみます。

▲R側のケーブル途中にマイク

驚異的な音漏れ防止性能

まずは音楽再生から。オープンイヤースピーカーは、どうしても耳穴から離れたところから音を出す関係で、低音が弱まる傾向があります。MWE001もその例に漏れず、低音は若干大人しめです。骨伝導と同程度、という感じでしょうか。

その代わり中域から高域にかけての明瞭度が高く、明るい音です。耳穴がオープンになっている開放感もあり、仕事中にBGMとして楽しむ用途としては、ちょうどいいバランスです。

当たり前ですが、耳を塞いでいないので、周囲の音は問題なく聞き取れます。話かけられても普通に会話できますし、料理など音が頼りの家事も、装着したまま問題なく行なえます。

さて気になる音漏れを調査してみましょう。ウォークマンに接続して最大音量にしたところで、マイクを使って音漏れを集音してみます。比較対象がないとアレかと思いますので、骨伝導の人気モデル、ShokzのOpen Run Proもテストしてみます。サンプル音源に使用するのは、フリー音源提供サイト「DAVA-SYNDROME」で公開中の、「Flehmann」氏による「With You」です。

MWE001-音漏れテスト

インピーダンスが違うだろとかいろんなツッコミもあろうかと思いますが、一応どちらも最大ボリュームでどれだけ、ということで定量化したということでご納得ください。自分で使ってるとどれぐらい音漏れするのか、なかなか客観的にはわからないところですが、こうしてテストしてみると骨伝導でも最大音量ではそれなりに音漏れするのね、とともにMWE001の音漏れの少なさは驚きです。

通話性能も試してみます。編集担当の松尾公也さんとZoomで会議してみました。

MWE001-マイクテスト

昨今のTWSでは、通話時にノイキャン用のマイクを使ってビームフォーミングでマイクの指向性を口元に向けるといった方法が主流になりつつありますが、MWE001はマイクが口の近くにぶら下がっているので、そうした細工なしで明瞭な音声収録を実現します。また接続がアナログなのでBluetooth特有の遅延がなく、会話しやすいのは地味ながら大きなポイントのように思います。

日常使い、とくに隣に人がいる中でこっそり音楽聴きたい、でもコミュニケーションはとりたい、という方にはちょうどいいアイテムではないでしょうか。ただ昨今のスマートフォンは、アナログのイヤフォン/マイク端子を廃止する方向にありますので、アナログ・ワイヤードの製品は使いづらくなりましたね……。現状はパソコンと組み合わせるのがベストソリューションと言えそうですが、今後ワイヤレス製品にも期待したいところです。

《小寺信良》
小寺信良

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18年間テレビ番組制作者を務めたのち、文筆家として独立。家電から放送機器まで執筆・評論活動を行なう傍ら、子供の教育と保護者活動の合理化・IT化に取り組む。一般社団法人「インターネットユーザー協会」代表理事。

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