インターネットミームをもとにした映像作品「The Backrooms」の映画化が発表されました。監督には17歳のVFXアーティスト、ケイン・パーソンズを起用しています。
Backroomsは、2019年に画像掲示板4chanから広まった都市伝説(クリーピーパスタ)。最初に投稿されたイメージは、黄色い単調なデザインの壁で区切られ、天井に蛍光灯が設置された誰もいない屋内空間というだけのものでしたが、ここに当時のスレッド住民やRedditユーザー、SNSユーザーが「不気味さ」や「不穏さ」の要素を含むテキストやショートストーリーを加えていき、いつしか広く知られるインターネットミームのひとつに成長。見慣れたもののように思えるが現実的な在り方から微妙に逸脱しており、結果として不自然さや不安を喚起する「リミナルスペース」の代表例となりました。現在はBackroomsをテーマとした映像作品やゲームタイトルが数多く誕生しています。
2022年1月にKane Pixels名義で当時16歳のパーソンズが投稿した「The Backrooms (Found Footage)」という動画もその中の一つ。Backroomsに迷い込んだ人物が残したという設定の映像で、出口を探して無数の部屋をさまよう様子や、徘徊する異形の存在(Entity)との遭遇が画質の粗いPOVで描かれています。この動画は投稿後ひと月ほどで1000万回を超える再生回数を記録し、Backroomsが世界に認知されるきっかけの一つとなりました。
パーソンズは現在までに「The Backrooms」シリーズとして16本の動画を投稿しており、そのいずれもが数十~数百万回視聴される人気を得ています。
エンタメ/映画メディアのDeadline Hollywoodが報じたところによれば、映画の製作にはA24、Atomic Monster Productions、Chernin Entertainment、21 Laps Entertainmentの4社が参加しており、脚本は「DMZ ニューヨーク非武装地帯」や「ウエストワールド」でプロデューサーを務めたロベルト・パティーノが担当するとのこと。公開時期については未発表ですが、パーソンズは夏休みを使って監督を務めるということで、近々の製作開始が示唆されています。
先述のように、ミームとして広く知られるようになったBackroomsは、「SCP」のようなシェアワールドコンテンツとして多くの派生作品が登場しています。パーソンズが投稿しているThe BackroomsシリーズはBackroomsを扱った最も有名な派生作品の一つであり、その特徴は「Async」という架空の企業(あるいは研究機関)が登場するという点です。
パーソンズがこれまでに投稿したThe Backroomsシリーズの作品はAsync関係者視点の記録映像という体裁をとることが多く、この中でAsyncは、1980~90年代にかけてポータル実験のようなものを行って「こちら側」からBackroomsに接続することに成功しており、きわめて広大なBackroomsの空間を利用して住居やオフィス、工場、倉庫などの商業利用を計画していたことが明かされます。記録映像は、この商業化を前提とした調査の過程で、行方不明者の発生や不審物の発見、異形との遭遇などを記録した内容です。
今回映画化されるBackroomsの内容については現時点で何も明らかになっていませんが、監督としてケイン・パーソンズを起用した以上、「Kane PixelsのThe Backrooms」と関連した内容になる可能性は十分考えられます。本作の続報についても楽しみにしたいところですが、まずはKane Pixelsのチャンネルで予習して、ファンの考察を眺めてみるのも悪くないかもしれません。