米GMが、マイクロソフトとの広範な協力の一環で、OpenAIが開発する人工知能チャットボット「ChatGPT」に使われている技術の自動車への搭載を検討しています。
GM副社長のスコット・ミラー氏は、Reutersに「ChatGPTはあらゆるものに組み込まれるだろう」と述べ、このChatGPTの技術からなるAIチャットボット機能を用いることで、たとえば自動車の取扱説明書に記載されている機能の使い方を説明させたり、ガレージドアの開閉コードなどの機能を操作したり、カレンダーからスケジュールを取り込むといったことができるとしています。
さらに考えられる使用例としては、たとえば近年の自動車はスペアタイヤが省略され、パンク修理キットを使うようになっているケースが増えていますが、このキットの使い方を、自動車に音声会話でたずねるといった使い方も考えられるでしょう。また、見たことがない警告灯がインパネに表示されたときなども、慌てずにクルマに尋ねれば、その意味を回答してくれるようになるかもしれません。
GMの広報担当者はReutersに対し、この技術による変化は「音声コマンドの進化といった単一の機能だけにとどまらず、将来のクルマが全体的に新しいテクノロジーを伴い、はるかに高い能力を持つようになることが期待できることを意味する」とコメントしています。
ChatGPTの大規模言語モデルが処理するのはテキスト情報ですが、Whisperと称する音声認識モデルでマイク入力をテキストに変換し、出力をVOICEVOXのようなテキスト読み上げツールで組み合わせることで、音声対応のChatGPTを作りあげることが可能です。GMはそのような仕組みを自動車に搭載することで、現在の音声AIアシスタントよりも幅広い能力を持たせようと考えています。
これが実現すれば、いまよりも自然な会話ができ、しかも有能なAI音声アシスタントを搭載するクルマが市販されることになりそう。1980年代の海外ドラマ『ナイトライダー』を観たことがある人なら、主人公マイケル・ナイト(デビッド・ハッセルホフ)とナイト2000(通称K.I.T.T.)とのやりとりに近い会話ができるようになることを想像できるでしょう。
ただ現段階では、大規模言語モデルは会話の流れの解釈と、主にインターネット上の情報に基づいてトレーニングされたデータセットに依存しており、しれっと、紛らわしい誤情報を会話に含めてしまうことがあると報告されています。また、大規模言語モデルによって、K.I.T.T.のような自然な会話ができるAI自動車を作ることはできても、自動車そのものの操作、自動運転に関わる部分を担わせるのは難しいと考えられます。現状では、自動車メーカーは音声アシスタント方面ではなく、独自のAIハードウェアの上に自動運転技術を開発しています。
ちなみに、ナイト2000のベース車両はポンティアックのファイヤーバード・トランザム。ポンティアックはGM傘下のブランドのひとつで2010年に廃止されているものの、GMが流暢に話す車載AIを開発した暁には、ぜひあの黒いトランザムも復活させ、それに搭載してほしいところです。
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