VAIO F14 / F16発表「愛される定番」目指す新機軸スタンダードノートPC

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橋本新義

橋本新義

IT系とゲーム系のフリーライター(タイプ:出オチ)

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PCとキーボードやディスプレイなどの周辺機器、スマートフォン、シューティングゲームなどを好むおじさん。隙あれば出オチやネタ、製品にまつわる余談やいい話を組み込もうとして記事が長くなる程度の能力を持つ。アイコンは漫画家『餅月あんこ』先生の筆による似顔絵です。

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VAIO株式会社が、個人向けノートPCの新2シリーズ『VAIO F14』『VAIO F16』を発表しました。F14(上写真)は14インチフルHD(アスペクト比16:9)液晶を、F16は16インチ1920×1200(16:10)液晶を搭載する、新しいベーシックモデルという位置づけです。

▲VAIO F16。キーボードはテンキー付きタイプ

同社はソニーからの独立後、ほぼ一貫してノートPCを――とくに高級なモバイル機を中心に――手がけていますが、今回の新製品はいわゆるホームノートPC的な、比較的廉価なモデルに。シリーズ名も、従来よりスタンダードモデルに冠される“F”が久々の復活となった格好です。

Web直販の受注開始日と店頭発売日は、少し先となる2023年6月予定。価格は、F14の直販(カスタマイズ)モデルが13万1800円から、店頭モデル(想定価格)が17万5800円から。F16は直販モデルが13万6800円から、店頭モデル想定が18万3800円から。
本体カラーは、F14とF16共通で『サテンゴールド』『ネイビーブルー』『ウォームホワイト』の3色です。

▲代表カラーとなりそうなサテンゴールド。昨今流行の、落ち着いたタイプのゴールドです

併せて、法人向けモデルとしてF14相当の『VAIO Pro BK』、F16相当の『VAIO Pro BM』も発表となりました。こちらは受注開始日は同じく2023年6月から。価格は現状で未公表。本体カラーは『ダークメタルグレー』1色です。



▲事前説明会で公開されたF14の内部。CPUがTDP 15W版(=比較的発熱少なめ)ということもあり、面積的な余裕のある設計です

さて、今回のFシリーズのジャンルとしては、TDP 15W / UシリーズのRaptor Lakeことインテルの第13世代Core iを搭載した、GPU内蔵タイプのスタンダードノートPCといったところ。重量は、F14が約1.34kg。F16が約1.65kgと、モバイル機ほど軽くはありません。

特徴は、従来のスタンダードノートPC――14~16インチ画面を搭載する、いわゆるホームノートPC――の価格帯を狙いつつも、上位モデルのような外観と基本装備などを重視したモデルである点。
つまり、技術的な特徴よりも、コンセプトが目玉となるタイプのモデルです。

▲こちらはF16の内部。マザーボードや冷却ファンをはじめ、主要部品はF14と共通です

そうしたモデルゆえに、VAIO側のアピールも「これまでのスタンダードノートPCとはひと味違った、新しい考えのモデル」であるという点が強くなっています。

そのいい例が、開発目標として掲げられたフレーズの中で紹介された「愛される定番を創る」「この時代に、普通の人が普通に使うPCとして、これならば間違いないといえるWindows PCの定番を創りたい」という姿勢。

つまり、現状で「ホームノートPC」「スタンダードノートPC」と聞いてイメージされる印象を払拭する、いわばニュースタンダードを狙うモデルと呼べるでしょう。

そして開発側が力を入れたポイントは『見やすい大画面』『必要十分な性能』『長持ちする品質・安心』『映りの良いカメラと聞き取りやすいマイク』の4項目。こうした点からも、昨今の需要を受けた新たなスタンダードを狙うという、位置づけの一端が窺えます。



▲VAIO F16(左)と現行モデルS15の外観比較。画面縦横比の違いが目立ちますが、外観デザインの近似性に注目

筆者が事前説明会で実機に触れてみて、そうした狙いがわかりやすいと感じたのが、本体デザインです。というのも、基本的な外観が、上位のモバイルノートPCであるVAIO SXやVAIO Zのシルエットを引き継いだ……というより、『ぱっと見では上位機種と同じに見える』水準となっていた点。

いわゆる一般的なホームノートPCでは、本体デザインもファミリー層に向けたものとなりがちですが、本機はそういった点がほぼ感じられません。言い換えると「安価なモデルだけれど、本体デザインは上位機種と同じ」という、良い意味でのApple製品のような方針となっているのです。

▲F14の背面側。こちらもぱっと見だけでは、他シリーズとの差が感じられにくいデザインです

そして個人的に驚いたのが、細かく見ていくと、実はぱっと見では同じに見えるものの、VAIO SXやZのデザインと比べると細かなバランスが大きく異なっている点。

▲現行機と大きく異なるのが底面側の処理。上位モデルではくさび状に薄い手前側も、ほぼ同じ厚さなのです

実はこの“VAIOノートの基本デザイン”は、本来であれば本体手前側が薄くないと格好が悪くなってしまう系統です。そしてF14とF16では、SX系と比べた場合手前側がかなり厚くなっています(公称の厚みは、F14が19.5~19.7mm、SX14が13.3~17.9mm)。にも関わらず、細かな工夫で、全体のシルエットを上手に見せている。
いわば“プラスサイズのドレスのよう的な工夫”が多数盛り込まれているのです。



▲説明会での展示機はi7-1355U+RAM 16GBの上位構成でした

そして基本性能も、これからのスタンダードが必要とするであろう、かなりの高水準。
まず選択可能なCPUは、F14とF16共通で、Core i3-1315U(CPUコアは2P+4E)とi5-1335U(2P+8E)、i7-1355U(2P+8E)の3グレード。VAIO SXなどでは選択可能なCeleron系CPUは、PCに不慣れなユーザーを考慮してか、Web直販モデルでも選択にありません(ここは個人的に拍手を送りたいところです)。

なおRAMも最低8GB、標準構成的なCore i5店頭モデルでは16GB。SSDも256GBから1TBで、もちろんNVMe/PCI Express接続……と、こちらも「これから買うなら、これぐらいは欲しいよね」を満たす水準。
このあたりも「不慣れなユーザーにも向けた製品だからこそ、余裕の装備を」といった考えが伺えます。

▲Webカメラはモジュール部レベルでの新設計に。VAIO SX版(上)と比べて薄型にもなっています

そして注目点が、画質に配慮して新設計されたWebカメラ。HD解像度ながら画素ピッチ1.4μmと、暗所にも配慮したセンサーを採用。さらに暗所で目立ちやすいノイズを低減する『TNR機能』も搭載します。
加えて、取り付けはカメラを下向きに5度傾け、一般的な画面角度でちょうど顔が中央に映るレイアウトとしているなど、使いやすさにも配慮。さらにWindows Helloの顔認証もサポート。電源ボタン一体型の指紋センサーとの両対応です。

さらに電力設定には、ビデオ会議など、比較的CPU負荷の高い状態でもバッテリー駆動時間を延ばせる新機能『バッテリー節約設定』を搭載。「Microsoft Teamsのビデオ会議で10%の消費電力低減を確認できた」という、イチオシ設定です。

▲F14のキーボード面。パームレスト面はSXなどと同じアルミ一枚板で、触感は良い意味でほぼ変わりません

また、個人的に驚いたのがキーボードモジュール。上位モデルとなるVAIO SXやVAIO Zから引き継ぐモジュールを、指紋のつきにくいキートップなどを含めて、ほぼそのまま流用しています。同モジュールはVAIO SXユーザーから高い評価を得ているものですが、実機で触れてみても、軽快な打鍵感は確かに共通したものでした。

▲左側面にはmicroSDスロットと3.5mm音声ジャック、USB-A1基という配置。電源もこちらです
▲USB-Cを含め、主な端子は右側に。有線LANもこちらです

拡張端子は、USB Type-C(10Gbps、USB PD入力対応、DisplayPort Alt Mode対応)こそ1系統のみですが、USB Standard-A(5Gbps)を3基搭載し、さらに有線LAN(1000BASE-T)とmicroSDカードスロット、DC入力端子も搭載します(Type-Cが1基のみということもあり、付属ACアダプタは専用端子タイプです)。

本体サイズと重量は、F13が約322.9×221.5×19.5~19.7mm(幅×奥行き×厚さ)で約1.34kg。F16が約358.3×255.6×16.6~19.9mm、約1.65kg。バッテリー駆動時間は、両シリーズともに約16時間(JEITA測定法2.0)となります。


▲マザーボードは(CPUの消費電力が低めなので)非常にシンプル、かつコンパクト。接続ケーブルは衝撃を見越して長めにするといった工夫も

このようにVAIO F14とF16は、ホームノートPCとして売れ筋の一つとなる価格帯を攻めながらも、外観デザインや基本性能といった点で同ジャンルからの脱却を目指した……とも呼べそうな狙いのニューフェイス。

そうした狙いや次世代の定番を狙うといった野心的な目標を掲げつつも、外観ではあえて従来モデルと印象を揃えた点(当然ですが、裏を返せば新規性が薄い……という側面もあります)からは、良い意味でいわゆる“無印良品的”なところを狙ったとも感じました。

VAIOのノートとしては比較的廉価ながら、ともすれば上位機種以上に(コストバランスのシビアさなどから)気合いの入った新Fシリーズ。長く使うほどにじわりと良さが伝わってくるであろう仕上がりは、愛される定番となる可能性は十二分。気になった方には、ぜひショップ店頭などで触れて、楽しんでほしいモデルです。

《橋本新義》
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