アドビ(Adobe)の共同創設者であるジョン・ウォーノック(John Warnock)氏が8月19日、82歳で亡くなりました(Adobeによるプレスリリース)。
▲ジョン・ウォーノック氏(2022年撮影)
Xerox PARC在籍時にアウトラインフォントを使った電子出版を考案したウォーノック氏は故チャールズ・ゲシキ氏(2021年死去)とともにAdobe Systemsを創設。ベジエ曲線によるアウトラインフォントと図形を用いたプログラムとしてページを表現し、どのような解像度でも美しい出力ができるページ記述言語PostScriptを考案。Adobe創設時に故スティーブ・ジョブズ氏が出資したことで、LaserWriterにPostScriptが組み込まれ、のちに生まれた組版ソフトPageMaker(Adobeが買収)とともに、MacintoshとPostScriptを中核としたDTP(Desk Top Publishing)革命がスタートしました。
1987年に生まれて現在も第一線で使われているイラストレーションソフトAdobe Illustratorもウォーノック氏の考案によるものです。自身による解説ビデオも残っています。
ウォーノック氏はコンピュータグラフィックスの始祖であるアイヴァン・サザランド博士に学び、CGの基礎である陰面処理アルゴリズム(Warnock Algorythm)を考案したことでも知られています。
このアルゴリズムに関する本人の解説講演はこちら。
この3月25日に米ユタ大学で開催された、同大学のCGにおける業績を振り返るイベント「GRAPHICS SYMPOSIUM」で、ウォーノック氏はトリを飾る講演を行っていました。
「ゼロックスはスティーブ・ジョブズにPARCの成果物を見せるという最大の過ちを犯した」と笑いをとり、そのことがその後のAdobe Systems創業の助けとなった有名なエピソードについて語っています。ウォーノック氏のプレゼンテーションは3時間を過ぎたあたりからです。
▲3月25日の講演時のウォーノック氏
氏の業績は、彼が作り上げたページ記述言語PostScriptとそのプレゼンテーションシステムの完成形であるPDFでまとめられています。
▲共同創業者のチャールズ・ゲシキ氏と
Computer History Museumが、ウォーノック博士の半生を聞いた動画(2018年収録)を公開しています。