11月23日、米国で「自転車用のオートマチックトランスミッションシステム」の特許出願が公開され、注目されています。
自転車の駆動機構は19世紀に発明されて以降大きく変化していません。より高速・快適に走るための多段変速化と、それを進化させた内装変速、電動変速といった機構が開発されては来たものの、ギアをシフトする操作は依然として手動で行わなければなりません。
個人発明家のHaven Mercer氏が出願中のこの技術は、自転車をこぐ力に応じてチェーンリング(ペダル側のギア)と、後輪側のギアを拡大縮小する機構で成り立っています。
チェーンリングは通常の円形ギヤではなく、小さな8つのギアがアーム上の支柱で軸とつながった格好をしています。この小さなギアを支えるアームはペダルをこいでいない状態、またはさほど強くこいでいない状態では大きく展開しますが、強くペダルを踏み込んでトルクをかけようとすると、軸方向に小さく畳まれる形になります。つまり、通常の変速でいえば、ギアの段数を下げるのと同じ方向に自動的に変形するということです。
またリアハブのほうは、ペダルを強く踏み込むと力がかかり、全体の径が大きくなります。リアのギア下には、2つのチェーンテンショナーがあり、前後ギア径の慎重収縮に合わせてチェーンのたるみを吸収します。
この機構を開発したMercer氏は、通常の多段変速付き自転車の場合、基本的に自分でギア操作を考えて適切にレバー操作をしないといけないことや、高いギアで走行中に急遽停止した場合、ギアを低くするのに手間がかかるようなことを無くしたいと考えて、これを考案したとのことです。
なお、本人はこの自転車用オートマチック変速機のプロトタイプを装着した自転車に自ら乗り、きちんと機能することも確認済みとのこと。ただし、まだまだ数多くの調整作業が必要であるとも語っています。
Mercer氏は「自動車がオートマチックトランスミッションを搭載し、より多くの人が車を運転しやすくなったのと同じ道を自転車もたどると、いつも想像していました」と述べ、このシステムが将来的には通勤車からマウンテンバイクのようなスポーツ車、電動アシスト自転車まで、様々な形態の自転車に適用できるとしています。
ただ、冒頭に述べたとおり現在は特許出願が公開された段階であるため、Mercer氏は引き続き特許の審査プロセスに専念するとしています。そして特許が取得できれば、それをライセンスしたり売る可能性もあるとしています。