PCエンジン系列互換機のAnalogue Duo、まさかの年内に着弾。もともと発表されたのは2020年10月でしたが、今年5月に突然予約受付を開始していました。
そこから7か月……というのは、発表から出荷まで年単位は珍しくないメーカー Analogueの時間感覚に慣れた人にとっては「早!」と口を突いて出るレベルでしょう。
Analogueは高品質なレトロゲーム互換機で知られるメーカー。レトロゲームを遊ぶ方法は色々とありますが、Analogueの互換機は回路を変更できるプロセッサであるFPGAを使い、実機のハードウェア構成そのものを再現することで、高い再現性と低い遅延を実現します。
なにより実機と互換性のあるスロットやポートを備えることで、「実機のカートリッジやカード、ディスクや周辺機器」が丸ごと持ち越せる信頼のブランドです。
製品の評価が高いだけに、新ハード(と言っていいのか?)の予約は毎回が修羅場にして争奪戦。ゲームボーイからアタリLynxまで携帯ゲーム機を網羅した互換機 Analogue Pocketも、限定版が出るたびに予約合戦に参戦しては惨敗続きでした。
Analogue Duoも無理かなあと臨んだ当日、すんなりと予約に成功。Analogueのサーバーが重くなる様子はみじんもナシ。なぜだ、PCエンジン互換機は血みどろの奪い合いになるんじゃないの? 自分がメガドライバーだった頃、メガCD発売当日に朝イチで店に駆けつけたら、1人も客が並んでなかった記憶を思い出しました……。
PCエンジンDuoよりはるかに小さい、ただしコントローラは別売り
さておき、Analogue Duoは小ささと薄さにビックリしました。「PCエンジン実機を現代の技術でリメイクしたら」はPCエンジン miniで形になっていましたが、こちらはHuカードを挿すスロットあり、CD-ROMを読み込むドライブあり、入出力やインターフェース周りも込みでコンパクトにまとめたなあと。
もっともCD-ROMドライブは、元祖のフタをパカッと開けるトップローディングではなく、前面からディスクを挿入するフロントローディングに変更。最後にゲーム機のフタを開けたのはドリームキャストが最後だったか。今やフロントの方が最先端なんですね(かなり過去の話です)。
本体のほか、同梱品はHDMIケーブルやUSB-Cケーブル、USB電源アダプタといたってシンプル。コントローラは付属せず、公式サイトでも8BitDoのPCエンジン風Bluetoothゲームパッドを別売りとして推奨しています。しまった、同時に注文し忘れた。
¥3,890
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
¥3,769
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
そこで手元にあった8BitDoの別製品や日本のHORI製(Nintendo Switch用)などUSB有線コントローラを接続してみたところ、どれも問題なく操作できたりします。もっとも、モノによっては十字キー、あるいはアナログスティックのみが方向キーとして認識されたりと、動作がまちまちのようです。
そしてPCエンジン用のゲームパッドを接続できるポートは左側面にありました。NEC HEの純正ゲームパッド(6ボタン)を接続すると、バッチリ認識! 端子部分がタテ長のため、取り回しが良いとは言い難いものの、システムメニューもゲームプレイも操作できます。
また現代のゲーム機ならではの要素が、SDカードスロットでしょう。最近スマホやNintendo Switchで親しまれているmicroSDではなく、フルサイズのSDカードの方ですが、たいていmicroSDには変換アダプタが付いているので問題ないでしょう。
SDカードはゲームのセーブやスクリーンショットの記録、ファームウェアアップデート等に利用します。
Analogue DuoはPCエンジンソフトのメーカー等を網羅したデータベースを内蔵しており、実機のカードやディスクを読み込ませることで、該当のエントリーが有効になりゲーム機の中に手持ちゲームをブラウズできるライブラリが増えてゆく仕組みがあります(ソフトをコピーするわけではなく、あくまでカタログ)。
このライブラリ機能にはサムネール画像が設定できますが、権利関係のためかユーザー側がスクリーンショットやパッケージ画像等を用意する仕組みになっており、この画像もSDカードに置いて読み込ませます。
最も難度が高いのは「HuカードやCD-ROMを実家から発掘」かも
ここ数年、レトロゲーム機のミニ復刻版に慣れすぎていると、忘れがちなことが1つ。それは「ゲーム機を遊ぶには、ゲームソフトが必要」という事実です。PCエンジン miniなんて、最初から30本以上が内蔵されてましたからね。
実家に山ほどPCエンジン専用ソフトがある。HuカードもCD-ROMも無尽蔵に……という目論見は、帰省してから1分ほどで脆くも崩れ去りました。これまで買ったゲーム機やアクセサリ類、ソフトが折り重なった「地層」が深い、深すぎる。
最も浅い地層にあるのがドリームキャスト用ソフト。より新しいPS2やXbox 360ソフトはソフトケース収録で本棚に並べているのですが、GD-ROMやCD-ROMは薄いプラケースに入っているため「適当に積み重ねやすい」が仇になりました。掘っても掘っても初代プレステ止まりで、PCエンジンの地層にたどり着きません。
ようやく発掘できたのがHuカードは『妖怪道中記』のみ、他はCD-ROMが4タイトル。『プリンセスメーカー2』は48円で買った未開封品。「いつかやろう」から数十年経っていたようです。
さて、これらのソフトをAnalogue Duoにセット。カードスロットもCD-ROM挿入口もいずれもキツメで入りづらく、折れるのでは?とヒヤリとしましたが、少し力を入れるとどうにかセットできました。
まずアクション性強めの『妖怪道中記』は、特に入力遅延もなし。タメ攻撃が「ボタンを長時間押し」ではなく「方向キーを下入力」が独特の操作ですね。PCエンジンminiに未収録が心残りでしたが、ようやく現代のHDMI対応テレビで再会できました。
次に『ときめきメモリアル』。実名プレイはデフォルトであり、序盤のまったくパラメータを上げてない状態で帰宅デートに誘って「一緒に帰って、友達に噂とかされると恥ずかしいし……」(訳:貴様に私と一緒に帰る資格がない)をキメてきました。
『ヴァリス3』は最近Nintendo Switch向けに復刻されていましたが、プレイすると当時の「なぜ、不要な方向に操作性が独特なんだ?」という感想が蘇ります。「スライディング商事 下+RUN」とチュートリアルを工夫するより、普通に下+ジャンプボタンにしろよという。
そして『プリンセスメーカー2』。今回のレビューのために新品・未開封品じゃなくなりました。某オークションサイトで検索すると1800円程度なので、別に気にしません。おかげで、PCエンジン版プリメ2の画面を初めて見ることができましたし。
どのゲームでも、Nintendo Switch対応のゲームパッドを接続していれば、HomeボタンでAnalogue OSのメニュー呼び出しが可能。またHome+Run(スタートボタンないし+)を押せばスクリーンショットも撮影できます。
システムメニューでは画面の表示モードを「HDMIモード」「同期モード」(60Hz表示等)ごとに細かく設定もできますが、ただ快適に遊びたいだけなら、特にデフォルト設定から変える必要はないと感じました。
デフォルトではピクセルがはっきりした『Analogue TG16』モードで出力しますが、ゲーム中にHomeボタンと左右で表示モードのクイック切り替えに対応。
『CRT Trinitron』モードでは、アパーチャグリル方式のブラウン管を再現して、当時のテレビで見た感覚で遊べます。ほか携帯機のPCエンジンGTや、液晶一体型だったPCエンジンLTも、それぞれの実機液晶の特性を再現した表示が可能です。
総合的な印象は、どのソフトも一切Analouge Duo側の設定を変更することなく「ソフトを挿せば実機そのままに動く」という点は素晴らしい。SUPER CD-ROM2やアーケードカード、上位機種のスーパーグラフィックスなどもそのまま動きます。
代表的な人気作品の多くは復刻ハードに収録されたり、移植でも遊べますが、逆にあまり人気がない・マンガやアニメ等原作付きの版権ものゆえに移植に恵まれにくいタイトルを遊ぶには、このハード一択でしょう。
が、今のところ実機プラスアルファ部分の設定項目が少なく、ソフト的にボタンを連射設定にできなかったり(対応パッドを買えば済む話ですが)、すでにレトロゲーム復刻ミニハードや最新ゲーム機への移植版での巻き戻し/スピード調節機能に慣れきった身としては、少しストイックすぎるとは思います。
また、ステートセーブ(途中セーブ)は将来のアップデートで予告されているものの、最新ファームウェア(1.1b)ではできません。今や必須機能と言えますし、ハードウェアの告知から出荷までに時間がかかっていたのですから、間に合わせてほしかったところです。