中国メーカーのZTEは、ZTEジャパンを通じて傘下のnubiaブランドを、オープンマーケットに本格展開していくことを表明しました。
その第一弾として、「nubia Flip 5G」と「nubia Ivy」の2機種を3月14日に発売しています。
前者は、2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona 2024で発表されたばかりの端末。ZTEとして初の縦折りフォルダブルスマホになります。
nubiaは、元々ZTEの子会社として設立されたメーカー。いったんZTEからスピンアウトしたあと、現在は子会社としてグローバルに端末を展開しています。
高級ブランド的な位置づけだったこともあり、本家ZTE以上に攻めた機能を搭載した端末をラインナップに持ちます。
海外の展示会ではZTE内のブランドという扱いが強く、日本でもキャリア向けモデルを手がけているZTEジャパンを通じて端末を販売しています。
かつては、ハイエンドモデルの「Axon」や、ミッドレンジモデルの「Blade」をシリーズ展開し、キャリアやオープンマーケットで端末を販売していたZTEですが、B2B(キャリアビジネス)に集中するという戦略の変化があったと言います。
結果として、キャリア向けには端末を開発していた一方で、オープンマーケットでの販売は見送られていました。
ZTEとしては、今後、ハイエンドモデルの軸足をnubiaに移していくとのこと。その一環として、グローバルでnubiaブランドを拡大させていく戦略を取っていると言います。
日本のオープンマーケットに“再参入”したのは、そのため。キャリア市場と比べて規模の小さいオープンマーケットですが、「マーケットフル対応で、SIMフリー市場も取っていく戦略」(ZTEジャパン 取締役 副社長 モバイルターミナル事業最高責任者 黄凱華氏)に転換したというわけです。
高級ブランドとして展開しているnubiaですが、端末ラインナップはハイエンドモデルに特化しているわけではなく、エントリーレベルの端末からそろっています。
日本で発売したnubia Ivyも、そんなモデルの1つ。チップセットはメディアテック製の「Dimensity 700」で、メモリも6GBと少なめ。
メインカメラはピクセルビニング対応の5000万画素センサーですが、そのほかは200万画素のマクロカメラと深度測定用カメラと、スペックは抑えられています。
同社初の縦折りフォルダブルスマホとなるnubia Flip 5Gも同様で、ハイエンドモデルというわけではありません。
チップセットは、クアルコムの「Snapdragon 7 Gen 1」。デュアルカメラではありますが、片方は200万画素の深度測定用で、実質的にはシングルカメラに近い仕様。
円形のサブディスプレイが特徴的で、すりガラスのようなデザインも洗練されていますが、フラッグシップモデルというわけではありません。
ZTEの黄氏も、「グローバルの多彩な機種の中から、コスト見合いも含めて(2機種を)選択した」と語ります。
特にnubia Flip 5Gは、縦折りフォルダブルスマホとしては国内最安の7万9800円で販売されています。
縦折りフォルダブルは、サムスン電子の「Galaxy Z Flip」や、モトローラの「razr」が市場に投入されている一方で、いずれもハイエンド寄りで価格も10万円オーバー。
廉価モデルとも言えるモトローラの「razr 40」に関しても、本体価格は12万円を超えています。こうした中、7万9800円という価格はフォルダブルスマホとして“激安”と言っても過言ではありません。
コストを抑えられている背景には、キャリアモデルと共通化を図っている部分もあるようです。
nubia Flip 5Gは、ワイモバイルが2月に発売した「Libero Flip」とほぼ同型。メモリやストレージは増え、カラーリングも異なるものの、スペック的にはほぼ共通と言っていいでしょう。
nubia Ivyに関しても、23年12月に発売になったワイモバイルの「Libero 5G IV」とほぼほぼ同型です。2機種とも、おサイフケータイに対応できているのも、こうしたベースがあったからと言えるでしょう。
ワイモバイルのLibero Flipがグローバル発表より早かったのは驚きですが、こちらはメモリが6GB、ストレージが128GBと少ない代わりに、本体価格を6万3000円に抑えており、フォルダブルスマホの価格破壊を実現した端末として注目を集めています。
一方で、オープンマーケットは市場規模の大きさの割には参入しているメーカー数が多く、売れ筋となるミッドレンジモデルは激戦区になっています。
OPPOやXiaomi、さらにはモトローラといった海外メーカーに加え、シャープやソニー、さらにはサムスンもオープンマーケットで端末を販売しています。MVNOで販売されている実績はありませんが、キャリアを介さず購入できるという意味では、AppleもGoogleもライバルになります。
こうした状況の中、nubiaブランドでどこまで戦っているのかは未知数です。厄介なのが、これまでキャリアに展開してきたのとは別ブランドになってしまうこと。
ワイモバイルではLiberoというキャリアブランドで端末を発売してきたため、nubiaだと、ゼロから知名度を獲得していかなければなりません。
子ども向けケータイや、ドコモのワンナンバーフォンのような“企画モノ”に強かっただけに、ZTEという名称自体が浸透していないおそれもあります。
オープンマーケットは、価格やスペックだけでなく、ブランド力もモノを言う市場。低価格なフォルダブルスマホはインパクトが強いものの、知名度不足な感は否めません。
現状では、IIJmioやHISモバイルなどが取り扱いを表明していますが、タッグを組むMVNOの数もさらに増やしていく必要がありそうです。