海外取材の合間に現地の家電量販店を訪れ、スマートフォンコーナーで面白そうなものを探すのが私の日課。2025年4月頭にドイツ・ハノーバーを訪れたときも、地元の家電量販店のMediamarktを訪問しました。

ドイツの家電量販店で販売されているスマートフォンのメーカーは、アップル、サムスンはもちろんですが、シャオミ、HONORなどの中国メーカー、また、モトローラも意外とたくさんのモデルを出しています。

ところが、スマートフォンコーナーで特別なスタンドを設置してがんばっているメーカーがありました。それがこちら。

そう、ZTEです。ZTEがドイツでは結構がんばってスマートフォンを売っているのですね。

ラインナップは低価格なものが中心。価格は150ユーロ以下、100ユーロを切るモデルも複数あります。日本円で1万円台ですね。

傘下のnubiaのスマートフォンも販売されていました。

nubiaのラインナップもカメラフォンのZシリーズやゲーミングモデルのREDMAGICではなく、ミドルレンジのカメラ端末などが中心。

異色の存在としてただし折りたたみ初代モデルの「nubia Flip」も売っていました。こちらは価格は、ほかの端末と比べて高いのですが、nubiaの「顔」としてカメラやスペックがいい、ではなくて折りたたみであることをアピールするのは悪くないやり方です。

ZTEがこうして販売に力を入れているのは、手軽に買える価格帯のスマートフォンがドイツではよく売れているからです。もちろん、その価格帯の端末はサムスンの「Galaxy Aシリーズ」、シャオミの「Redmi」、さらにHONORもモトローラも様々な機種を出しています。

最新モデルを低価格で購入できる(ただし、後から返却するので実態はレンタルに近い)日本とは違って、ドイツではキャリア販売の割引があるとしても、毎月の基本料金が高くなってしまいます。プリペイドユーザーにとっては新品のiPhoneには手が出ず、代わりに定価で価格の安い端末に人気が集まるわけです。
この傾向は他のヨーロッパ諸国でも同じですが、他国では見かけるメーカーの製品がドイツでは販売されていません。この写真はイタリア・ミラノで撮影したもの。スペインなどでもおなじみのこれがドイツでは売っていないのです。

そのメーカーとはOPPO、OnePlus、realmeの3社。3社は姉妹企業でもあり、そろってドイツ市場から事実上の撤退状態になっています。ノキアネットワークスとの特許訴訟に2022年に敗れ、ドイツでの販売ができなくなりました。その後2024年1月にノキアとOPPOは和解しましたが、それから1年以上が過ぎてもまだドイツではOPPOの端末が見られないのです。
ZTEが存在感を示そうとしているのも、OPPO、OnePlus、realmeのお手軽端末が市場に不在のうちに、シェアを伸ばそうと考えているのでしょう。ドイツの家電量販店でおなじみのワゴンセールでも、訪問したMediamarktではZTEの端末が複数扱われていました。

とはいえNothingが3シリーズでは「a」モデルを先に出してきたように、値ごろ感のあるモデルのラインナップを強化するメーカーが増えています。ZTEも価格が安いだけでは勝負になりません。まあだからこそ「nubia Focus」のようにカメラと本体デザインに特徴のあるモデルを出しているわけです。

ZTEは2月にバルセロナで行われたMWC 2025でカメラのベゼルのリングを回してズーム操作ができる「nubia focus 2 Ultra 5G」を発表しています。このように特徴のある適価なモデルを増やしていけば、ZTEもトップメーカーに並ぶ脚光を浴びるようになるでしょう。
