『Apex Legends』強制チート付与ハッカーDestroyer2009とは何者か。判明していることまとめ

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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先週、人気ゲーム『Apex Legends』のeSports世界大会の北米大会決勝戦で発生したハッキング問題は大きな話題になりました。

Apex Legendsでは、特に上位帯のランクマッチにおいては、こうした不正プログラムを使用する「チーター」が横行しており、それ自体は珍しくもありません。

しかし、公式の大会における、専用のコードを知らなければ入ることのできないカスタムマッチに侵入し、出場選手にチートとよばれる不正プログラムを強制使用させたという大胆不敵さは、これまでにないものでした。

そして、Apex Legendsのファンのなかにはハッキング被害に遭った選手のひとりの画面に「Destroyer2009」の名が表示されたとき、見覚えがあると思った人もいたことでしょう。

Destroyer2009のもっとも初期の活動の記録としては、ざっと調べたところでは昨年12月とされる動画クリップがX(Twitter)に投稿されています。

ここではPCではなく、ゲーム機(CS)のアカウントとして[FFM]destroyer2009の名で現れ、高速移動(スピードハック)および自動照準(オートエイム)のチートを使用し、チャンピオンを獲得している様子を見ることができます。

同じ時期、RedditにもDestroyer2009(REAL)という名のCSアカウントが、特に敵に狙いを定めずともすべての銃弾を敵にヒットさせ、次々と倒していく動画が投稿されています。

Check out the newest apex legends (playstation) ranked gameplay
byu/Dark_c4 inapexlegends

このほかにも2つ動画を昨年12月のRedditに見つけることができ、いずれもオートエイムで10人以上を倒しています。

とはいえ、この頃のDestroyer2009がやっていることは、上位ランクマッチで遭遇する他のチーターらとさほど変わるものではなく、大きく注目されることもありませんでした。

しかし今年に入った頃から、Destroyer2009の行動は次第に過激さを増し、特にImperialHalやGenburten、Mande、HisWattsonといった著名プレイヤーの周辺で出没するようになります。

この時期にはDestroyer2009の名前が知れ渡りはじめ、ゲームの運営元によるチーター除外措置(BAN)を受けてもすぐに復活することから、同じ名前を使用する模倣アカウントがいくつも存在するのではとも言われました。

特に1月20日にRedditに投稿されたクリップでは、CS(PlayStation)のみのプレイ環境で、最上位のプレデター帯のランクマッチにもかかわらず、高速移動とエイムボット、そしてスナイパーの高速連射といったチートを使い、44キルという、誰が見てもチーター以外にあり得ない暴れっぷりを披露しています。

This dude have some skills.. 44
byu/talalm5 inapexlegends

また翌日の日付にも、同じアカウントでランクマッチを行っている様子が中国のプレイヤーによってシェアされています。

いずれのクリップでもチーター報告されていますが、Respawn / EAの運営チームはDestroyer2009に対してアカウント特定~BAN対応ができていない模様です。

その後、Destroyer2009は他に類を見ないチートを使い始めます。そのひとつが、標的と定めたプレイヤーに対して、ゲーム内ガチャのApexパックを大量に送りつけるというものでした。

ImperialHal、Mande、Genburtenらは実際に、Destroyer2009から数千個ものApexパックを押しつけられていました。

さらに2月になると、特定のプレイヤーを標的として、そのプレイヤーが入ったマッチに40~50ものアカウントをボット化して送り込み、ゾンビの大群のようにプレイヤーを追いかけ回させるという、Apex Legendsのゲーム性をまるで無視するようなチートを使うようにもなりました。

(MUST WATCH) FURIA roster must’ve pissed somebody off bad😂
byu/realKeon inapexlegends

この大量ボットチートにはImperialHalやMandeも遭遇しており、Destroyer2009が高速移動やオートエイムといった、ありきたりのチートで相手を倒すことよりも、著名プレイヤーにちょっかいを出して楽しむ機会が増えてきたようにも思えます。

そして、3月18日のALGS北米大会における、前代未聞のハッキング行為へと至ります。


この事件はeSports界隈を驚かせ、瞬く間に大きな話題になりました。当初はPC版Apex Legendsのチート検知プログラムであるEAC(Easy Anti-Cheat)、もしくはApex Legendsのプログラム本体にリモートコード実行(RCE)の脆弱性があるのでは、と疑われましたが、EACはすぐにその可能性はないと否定。

Apex Legends開発元のRespawnはやや遅れて、ゲームプログラムに段階的なアップデートを適用し始めたと声明を出しました。ただし、この声明にはチートに関する説明はありませんでした。


これに対し、ゲームその他のセキュリティ関係の仕事に約20年以上携わってきたというPirateSoftwareのThorという人物は、MandeやImperialHalから話を聞き、問題の手口としてRCEが使われた可能性や、Destroyer2009がApex Legendsのサーバーに自由にアクセスできるといったうわさについて、その可能性が低いとの持論を展開しています。

ただ、これらの主張も理屈はわかるものの、決め手となる証拠はなく、どこまで正しいかはわれわれ素人には判断のしようもありません。

TechCrunchはDestroyer2009から直接話を聞くことに成功し、その記事を3月21日に公開しています。記事においてDestroyer2009は、ハッキング行為は単純に面白半分でやったと述べています。

しかし一方では、ALGS北米大会で使用したエクスプロイトを発見、使用したのが自分だったのは人々にとって幸運だったとも主張しました。もし悪意のある人物がこのエクスプロイトを使用すれば、標的とするApex Legendsのプロ選手をチーターに仕立て上げ、ゲームから追放させることもできたはずです。

また、チートを実行したのは、ハッキングした彼らのApex Legends上であり、サーバーには触っていないとも述べており、このあたりの話はPirateSoftwareのThorの推測に合致しています。


冒頭にも記しましたが、Apex Legendsの上位帯におけるランクマッチでは以前よりチーターが跋扈し、プロ選手や高いスキルを持つプレイヤーたちはフラストレーションのたまるプレイを強いられています。

Destroyer2009が公式のeSports大会でやったことは明らかな妨害行為であり全く許されるものではありませんが、大きな話題となったことで、結果的にはRespawnやEAに対しチート行為が蔓延した状態を改善するための強い動機を与えたと言えるかもしれません。

騒動の後、Destroyer2009本人がこのゲームにまた現れたという報告は、まだみつけることができません。


《Munenori Taniguchi》
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