いよいよ出荷が始まる手のひらAIデバイス「Humane Ai Pin」のやっておくことリスト

テクノロジー AI
五島正浩

シリコンバレーのIT企業でエンジニアとして働きながら、最新のシリコンバレーの話題を紹介しています。

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出荷間近となったAIデバイス「Ai Pin」。日本ではソフトバンクが取り扱うことが発表され、注目を浴びています。いち早く米国で購入した著者が、購入前の各種手続きについて解説します。



米サンフランシスコのスタートアップHumaneが開発する「Ai Pin」はキーボードもディスプレイもないバッジ型AIウェアラブルデバイスです。これを胸に取り付けるだけで、クラウド上のAIプラットフォームと連携した対話型AIサービスを簡単に利用できることから、画期的なデバイスとして注目されています。

タップしながら音声入力を行ったり、対象物を内蔵カメラで撮影することでAIサービスへの問い合わせが可能になります。さらにデバイスに組み込まれているプロジェクタを使って手のひらにユーザーインターフェースを投影することで、様々な操作が行えるようになっています。これまでにない革新的なデバイスと言えるでしょう。

HumaneのAi Pinは長らくステルスモードで開発が進められてきましたが、昨年11月から販売が始まりました。現在、購入者はプロダクトの出荷を待っている状態です。最近になり少し動きがあり、いよいよ出荷目前となってきました。今回はこのHumane Ai Pinの最新状況についてレポートします。

なおHumaneのAi Pinの販売は現在アメリカのみとなっています。アメリカ在住である筆者は昨年11月の先行販売を通じてAi Pinの注文しました。本記事はアメリカでのこの購入体験に基づいて記述しています。日本ではまだ発売されていませんが、今年2月下旬にバルセロナで開催されたMobile World Congressにおいて、Humaneはソフトバンクとのパートナーシップをアナウンスしています。今後日本での展開が始まることが期待されます。

先行販売から出荷に向けた道のり

昨年11月にHumaneのサイトからAi Pinを注文した時は、出荷時期は2024年初頭となっていました。


曖昧な表現が気になりましたが、年明けの1月か2月頃には手元に届いて未来のAI体験ができるだろうと楽観的に考えていました。しかし、しばらくすると3月から出荷開始予定と具体的な時期が正式アナウンスされました。スタートアップによる初めてのハードウェア製品の出荷なので多少時間がかかるのは仕方ないと思いますが、注文後4カ月待ちとなると少し長く感じます。

Humane側もこのような状況を理解しているのでしょう。2月下旬になると、Humaneのメディア担当で人気インフルエンサーでもあるSam Shefferが、購入者に対して3カ月分のサブスクリプションと送料を無料にするとSNSとDiscordを通じて発表しました。ハードウェアの購入費とは別に毎月支払う必要があるサブスクリプションは月24ドルと安くはないので、3カ月無料はありがたいです。送料は11月の注文時に支払い済みでしたが、この発表後に返金されました。

3月上旬にはHumaneからメッセージカードが添えられたステッカーが郵送されてきました。製品の出荷を待っている人たちに対して、早期のサポーターとなってくれたことへの感謝とまもなく出荷が始まることを知らせることが目的です。Humaneは発売開始前からDiscordでコミュニティを作っていて、既に多くの人が参加しています。こうしたアーリーアダプターのサポーターを大切に考え、オープンにコミュニケーションを取るHumaneの姿勢にはとても好感が持てます。

▲Humaneから郵送されてきた限定ステッカー

続いて3月20日にはHumaneの創業者であるImran ChaudhriとBethany Bongiornoの動画が公開されました。

この動画の中で3月末に工場から出荷され、先行販売のものは優先して4月11日から配送が始まり、一般販売分は4月中になると発表されました。また出荷される製品版のハードウェアとソフトウェアを使ったAi Pinの機能紹介もあり、プロダクトは既に完成していて予定通り3月に出荷を開始することをアピールする内容となっていました。

加えてこの動画の中では現在開発中の機能と今後のビジョンについても語られていました。今年後半からSDKを段階的に提供することや、Ai PinのOSであるCosmosを他のデバイスでも動かせるようにする考えがあることなど新しい情報が含まれていました。製品の出荷準備が進む一方、Humaneの開発チームは次のステップに向けて動き始めていることがひしひしと伝わってきます。

出荷前の最後のステップ

3月末を目前に控えた3月27日のことです。Humaneから「Ai Pin出荷前の最後のステップ」と題したメールが届きました。Ai Pinのオンボーディングに関するもので、HumaneのサイトからAi Pinを使用開始前に必要となる設定を完了するようにと書かれていました。このステップを終えた購入者に対して出荷処理を始めると説明しています。

早速11月の注文時に作成したアカウントを使ってHumaneのサイトにログインすると、最初はAi PinのOSであるCosmosの利用規約への同意、次に毎月のサブスクリプションの支払い方法の登録が求められました。サブスクリプションにはT-Mobileのモバイルサービス、クラウドストレージ、AIサービスの利用料などが含まれます。このオーダー処理によりモバイル回線を提供するT-Mobile側で加入者情報が作成され、開封直後からネットワークに繋がるようになると思われます。

続いてはAi Pinをアンロックするために必要な4桁のパスコードの事前設定が求められました。到着後、開封時から必要になるそうです。Ai Pinはキーボードがないのでどうやって入力するのでしょうか? つい最近公開になったAi Pinのビデオハンドブックによると、手のひらに内蔵プロジェクタで数字を表示させてジェスチャで選択します。

手のひらを前後することで数字が変わり、親指と人差し指をくっつけることでその数字を選択するらしいです。どんな体験になるのか早く使ってみたくなります。

▲パスコードの入力は手のひらで。Humane公式YouTube動画から

連絡先のインポートと追加サービスの設定

次の設定は連絡先(コンタクト情報)のインポートです。Google、Apple、Microsoftの中から選ぶようになっていたので、私は普段使っているAppleにしました。インポートするにはHumane側から私のApple IDを使ってiCloudにアクセスすることになるため、設定途中でApple側でアプリ用パスワードを新規に生成する必要がありました。

連絡先をインポートした後は、通知を必要とするコンタクトの選択です。選んだコンタクトからメッセージや通話を受信した時だけ通知が行われます。通知のサウンドが鳴ったら手をかざすと手のひらに相手の名前が表示され、ジェスチャーで通話するか拒否するかを選べるそうです。

 ▲連絡先のインポート先を選択する必要がある

最後は追加サービスの設定です。ここでは高品質音楽配信サービスTidalとGoogle Photoの連携ができるようになっていました。Tidalは元Twitter CEOのジャック・ドーシーが経営するBlockが2021年に過半数の株を買収したことで知られています。新規に加入すると90日間無料で使えるプロモーションもついていました。Ai PinはBluetoothでヘッドセットと接続することができるので、そうした利用シーンを想定しているのでしょう。Google Photoは目的が不明だったので現段階では選択しませんでした。Ai Pinの内蔵カメラで撮影した写真や動画はHumaneのサイトに保存されるはずなので、Google Photoの利用シーンを正しく理解してから追加する予定です。

以上で全ての事前設定が完了しました。あとは4月中旬にAi Pinが手元に届くのを待つだけです。今回、出荷前の事前設定を行ったり最近公開された動画などを見ていくことで、デモの中の存在だったHumaneのAi Pinがようやく現実のものになってきた感じがします。また慣れ親しんでいるiPhoneやそれと連動して動くApple Watchとは全く異なるものと考えて、設定や操作を行う必要があると改めて思いました。

ディスプレイもキーボードも無いデバイスの操作はどんな体験になるのか、Ai Pinによる対話型AIサービスが生活にどのような変化をもたらすのか、そしてHumaneのAi Pinの登場によってAIの未来がどのように変わるのか、興味が尽きません。引き続きAi Pinのことをレポートしていく予定です。

《五島正浩》

五島正浩

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