楽天悲願のプラチナバンド、三木谷社長が発射。Sub6 5Gも出力向上で年内にエリア最大1.6倍へ (石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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 楽天モバイルは6月27日に、商用環境のプラチナバンドを発射しました。代表取締役社長、矢澤俊介氏によると、同日、1局目が開通したばかりとのこと。

今後は、「お客様の満足度を最大限向上できるよう、反応を見ながら拡大していきたい」としています。6月27日には、二子玉川にある楽天本社でセレモニーも開催。楽天グループの会長兼社長、三木谷浩史氏が発射ボタンを押し、電波が発射されました。

▲画像:セレモニーでは、三木谷氏が発射ボタンを押した

 おさらいしておくと、楽天モバイルにプラチナバンドの700MHz帯が割り当てられたのは、昨年の10月のこと。

元々同社は、ドコモ、KDDI,ソフトバンクから5MHz幅ずつ周波数帯を奪ってくる方針を示していました。一方で、この方法だと10年単位で時間がかかってしまううえ、コストも膨大になります。すでに運用中の周波数帯のため、ユーザーにも何らか影響がおよびます。

 ここで助け舟を出したのが、ドコモ。同社は特定ラジオマイクや高度道路交通システム(ITS)で使われる周波数帯に空きを発見しました。この空きは、周波数の干渉を防ぐための「ガードバンド」でしたが、もっと切り詰めればプラチナバンドを捻出できるとしたのがドコモ案です。

結果として、検討が急ピッチで進み、3MHz幅を携帯電話用として利用できるようになりました。

▲画像:楽天モバイルに割り当てられたのは、700MHz帯の3MHz幅。元々使われていたガードバンドを削って捻出した

 敵に塩を送った形になったドコモですが、動きとしてはかなり戦略的。このまま黙っていたら、5MHzを楽天モバイルに奪われてしまうおそれがあったため、自ら進んで周波数の空きを見つけて提案したというわけです。

ただ、捻出しただけに、帯域幅は3MHzと狭く、ユーザーを収容できる数には限界もあります。

 そのため、楽天モバイルはプラチナバンドを使ってエリアを広げつつも、「都市部のカバレッジホール(エリアの穴)には引き続き1.7GHz帯を使い、ベストミックスでというのが基本的なポリシー」(常務執行役員 副CTO兼モバイルネットワーク本部長 竹下紘氏)になります。

逆に、既存の1.7GHz帯ではどうしても届きにくいところをプラチナバンドでカバーしていく方針と言えるでしょう。

▲画像:既存の1.7GHz帯に加えて700MHz帯を使うことで、エリアの穴をなくしていく。ただし、混雑エリアではその効果は限定的

 例えば渋谷のように人が集まる場所では、プラチナバンドを打つことで、それなりに人のいる屋内などに電波が飛び過ぎてしまい、周波数がひっ迫してしまうおそれすらあります。

実際、ドコモはそれが原因でパケ詰まりが起こった結果、複数の周波数帯を束ねるキャリアアグリゲーションをあえて解除し、プラチナバンドをつかみすぎないようなチューニングをせざるをえなくなっています。

 こうした失敗が起きないよう、「他社の事例も見ながら我々の知見も生かしてファインチューニングをかけていきたい」(竹下氏)というのが楽天モバイルの方針。KDDIのローミングまだ活用できるため、当面は自社と他社のプラチナバンドは併存させていく形になります。

 また、プラチナバンドはあくまでエリアの穴を埋めていくための運用で、トラフィックをさばくのはやはり5Gです。こうした方針もあり、楽天モバイルはプラチナバンドのサービス開始日に、5Gのエリア拡大に関するお知らせも出しています。

▲画像:Sub6は出力を上げ、年内に1.6倍までエリアを拡大する見込み

 4月ごろに衛星事業者の地上局が移転し、関東でSub6の一部周波数帯との干渉条件が緩和されたため、キャリア側は出力を上げやすくなっています。実際、KDDIは出力増加やチルト角の変更によって、わずか2カ月程度で関東地方のエリアを2.8倍にまで拡大しています。

 この条件は、楽天モバイルも同じ。同社もまた、Sub6の出力を上げた結果、6月末には、1月比で1.6倍に東京の5Gエリアを拡大できるとしています。エリアが拡大したのに伴い、5Gに接続する端末が増え、トラフィックは2.3倍に。

さらに、基地局側のソフトウェアをアップデートすることで、ユーザー数や平均速度もそれぞれ向上するとしています。

▲画像:ソフトウェアアップデートで5Gの品質も向上した

 5Gを拡大すると、エリアの端で電波を離さず、そのまま通信が止まってしまう問題が発生しやすくなります。三木谷氏も、「4Gと5Gの共存がなかなか難しい」と語ります。一方で、楽天モバイルはグループの楽天シンフォニーが基地局のソフトウェアを開発しており、その「アドバンテージを生かし、ハンドオーバーがかなりスムーズになった」(三木谷氏)といいます。

▲画像:4G、5Gのハンドオーバーをスムーズいするソフトウェアアップデートを施したという

 5G基地局の機能向上や、スムーズなハンドオーバー実現など、同社が基地局開発にも力を入れていたからこその強みが発揮されつつあると言えるでしょう。

保有している周波数帯が比較的少なく、キャリアアグリゲーションなども現時点で行っていないシンプルなネットワーク構成になっているのも、品質を上げるためには有利になりそうです。

 もっとも、プラチナバンドはまだ1局目が開通したばかり。当初の予定からは前倒しで進んではいますが、全国展開などの時期などは明言されませんでした。

他社の場合、地方では鉄塔にプラチナバンドのアンテナを設置し、高い場所から広いエリアを作っていますが、こうした対応をするのかどうかも語られていません。ことプラチナバンドに関しては、まだ第一歩を踏み出したばかり。今後の展開にも注目しておきたいところです。

▲画像:プラチナバンドは1局目から電波を発射したばかり。主要都市に順次展開していくというが、そのペースや地方での展開は明かされなかった

《石野純也》

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ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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