このところ、AIを使った簡単プログラミング環境の進化が著しいです。Claude Artifacts、ChatGPT-Artifacts、Poe Previews。そこに大元のClaudeが、「Publish Artifact」という新機能を投入してきました。
Publish Artifactとは? その前にいったん昔話に入ります。17年前に遡ります。
2007年に初代iPhoneが出てしばらくすると、App Storeが一般に開放されるという話が出てきました。初代iPhoneを手に入れていた筆者はとあるソフトウェアデベロッパーと「俺たちもやってみるか」という話になり、iPhoneアプリをいくつか考えました。
最終的にはツイスターを指でやるゲームで、二人プレイができるから相手と仲良くなれるのでは、というアプリを公開できたのですが、その過程で他のアイデアもたくさん生まれました。
その一つが、「パチンコやピンボールのピン・釘みたいなものにボールが当たると音の高さが変わっていく音楽プログラム」でした。
これ、ひょっとして、Claude 3.5 SonnetとArtifactsで実装できるんじゃない?
そう考えるきっかけとなったのは、IAMASの赤松正行教授の「量子の囁き」というプログラム。Webブラウザで実行できる現代音楽をClaude Artifactsに作らせたそうです。
赤松教授はセカイカメラの生みの親であり、iPhone App Store誕生前(JailBreak時代)からiPhoneアプリを作っていたという人です。新しいプラットフォームが生まれるときには必ずそこで予言的な行動をとっている方だと認識しています。
そういえば台北当代芸術館で開催されたAIアート展覧会「Hello World」でご一緒したライゾマティクスの真鍋大度さんから、真部さんは赤松先生の研究室にいたという話を伺ってました。
■Claude Artifactsに17年前のアイデアを投げてみた
AIとアートとプログラミングが繋がったところで、Claude Artifactsにこの17年前のアイデアを投げてみました。
ブラウザで動く音楽プログラム。画面上にランダムに配置されたピンには音の高さを加減する機能がある。射出されたボールは最初は440hzの音を出しているが、ピンに当たるとプラスマイナスされた音高になり、別の方向に向かっていく。ボールは音の高さによって波紋の色が変化する。
そしたらすぐにプログラムができて、確認できました。
これは、ピンに当たっても何も起きず、画面からはみ出したら戻ってこない代物でしたが、これを土台に機能を追加・改良していき。ようやく満足のいくものができました。
名前もつけました。「Sub Yearn」。パチンコの釘から発想したもので。
背景を黒にして、ピンを少しずつ動くようにし、色を変えるようにすると、星のようになりました。それなら流れていくボールも星に見立てて、寿命を持たせようと考えました。
終末期には膨張してホワイトノイズを残して消えていく。そんな設定です。
一応、ここまではできたのですが、その後はClaudeの利用制限に引っかかり、進めていません。音色にピアノを追加したり、リバーブをつけたりといったアイデアはあるのですが。
そんなときにPoeがPreviewsを出してきました。Claudeだけでなく、Gemini 1.5 ProやGPT-4oでもArtifacts的なことができるという万能系Artifactsです。
■Publishというボタンができていた
しかし、Claude側も黙ってはいません。今朝プロジェクトを開いてみたら、画面の右下に「Publish」というボタンが。
コードをクリップボードにコピーする、ファイルをダウンロードする、その右にあるPublishボタンは、生成したプログラムを実行できる個別のURLをClaudeが提供するという仕組みです。
開発中のチャットでのやり取りは表には出さず、実行画面だけを公開できます。これをPublishすると、リンクのURLをコピーできます。
「Sub Yearn」の実行可能なプログラムを公開してみました。リンクはこちら。
公開されたページに行くと、これはArtifactsで作られたコンテンツであり、安全ではない可能性がありますという警告が出ます。Claude Artifactsで作られたコンテンツをArtifactと呼んでいるんですね。
同意すると、そのプログラムをプレイできるページに進めます。
iPhoneでこのページにアクセスすると、スマートフォンビューになりました。ちゃんと動作しています。
問題があった場合に報告するReportと、Remix Artifactというボタンがあります。
■リミックスができる!
リミックスできる!
リミックスするにはClaudeのアカウントが必要です。
このプログラムにClaudeのプロンプトで改良を命じれば、まさに音楽のリミックスのように、自分テイストにできるのです。
まずはセルフリミックスしてみました。元のコードを再現するところから始めて、従来のClaude Artifactsと同様にチャットで追加命令を出せます。
GitHubなどとはステージの違う、新しい開発文化となりそうですね。
筆者の「Sub Yearn」も新しいアイデアでどんどん面白いものにしてもらえると嬉しいです。
(▲フルスクリーンモードもある)