ドコモとソフトバンクが自転車シェアリングで提携、ポート共用でエリア拡大へ。課題はオペレーション (石野純也)

テクノロジー Mobility
石野純也

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ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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 ライバルとして通信事業でしのぎを削るドコモとソフトバンクですが、その子会社のバイク(自転車)シェアリングサービスも競合関係にあります。

ドコモはドコモ・バイクシェア、ソフトバンクはOpenStreetという会社が、それぞれサービスを展開しています。

 ドコモ・バイクシェアは現在、累計利用回数が1億回を突破。トータルの走行距離は2億4000万kmに達しています。これに対し、OpenStreetが展開するHELLO CYCLINGは、走行距離で1億5000万kmとドコモ・バイクシェアを追い上げています。

このようにバチバチの争いを繰り広げていると思われがちな2社ですが、この2社が7月10日に業務提携を行うことを発表しました。

(▲画像:ドコモ・バイクシェアは2億4000万km、OpenStreetは1億5000万kmで、利用距離は事業開始が早かったぶん、ドコモがリードしている)

 具体的には、お互いのポート(OpenStreetはステーションと呼ぶ)をシェアリングする内容。25年度からの展開を予定しており、実現すれば、ドコモ・バイクシェアで借りた自転車をHELLO CYCLINGのステーションに返したり、逆にHELLO CYCLINGの自転車をドコモ・バイクシェアのポートに返したりといったことが可能になります。

 また、ドコモ・バイクシェアのポートに停められているHELLO CYCLINGの自転車は、通常のサービスのように、HELLO CYCLINGのユーザーが利用できるようになります。逆も同様。

つまり、どちらか一方のポート or ステーションしかない場所に関しては、お互いのサービスを通じてエリアが広がるような形になります。モバイルのローミングに近いイメージで、相互にインフラを活用し合うというわけです。

(▲画像:写真はあくまでイメージだが、このようにポート or ステーションを共有していくことになる)

 これが可能なのは、ドコモ・バイクシェアとHELLO CYCLINGのエリアがあまり被っていないため。マップを見ると一目瞭然で、例えばドコモ・バイクシェアは東京都だと23区内で圧倒的な密度を誇るのに対し、HELLO CYCLINGは23区内が薄い一方で、郊外まで広くエリアを取っています。

 23区内で暮らしているとドコモ・バイクシェアの赤い自転車を見かけることが多く、実際に筆者も乗る機会が多いため、ドコモの圧勝かと思いきや、エリアによってはその力関係が大きく変わってくると言えるでしょう。

横浜も同様で、ドコモ・バイクシェアは横浜駅周辺やみなとみらいなどのある臨海都市部に強いのに対し、HELLO CYCLINGは北部と南部が中心です。

(▲画像:都市部に高密度で展開するドコモ・バイクシェアに対し、OpenStreetはどちらかといえば広くエリアを取っている。モバイルネットワークと逆なのが興味深い)

 日本の自転車シェアリングサービスは、停車のためのポートを設ける仕組みのために、行政とタッグを組んで展開するケースが一般的。

そのため1社が入ると、ほかが入りづらい場所もあり、自然と住み分けが進んできたと言えるでしょう。もちろん、2社、3社がかぶるエリアもありますが、全体として見れば手を組みやすい環境にあったというわけです。

 もっとも、この住み分けのために、例えば国や都道府県をまたがった利用が難しくなるという問題がありました。河を超えたら別の会社のポート or ステーションしかなく、返したくても返せないということが起こっています。

往復で借りて帰りも利用すれば済むものの、機動性が落ちてしまうのが難点。停車中も料金がかかってしまうため、お財布にも優しくありません。2社の業務提携は、この問題を解決するための策になると言えるでしょう。

(▲画像:用地確保が難しかったり、行政と連携していたりする関係もあり、住み分けが図られていった。これによって相互利用ができないことが、ユーザーの不便になっていた格好だ)

 もっとも、一気にすべてのポート or ステーションが利用できるようになるわけではありません。ドコモ・バイクシェアの武岡雅則氏は、「最初がどこかはまだ決まっていないが、まずは1つのエリアを1年ぐらいしっかり磨き上げる感覚」だといいます。

その後は様子を見て、徐々に広げていくか、比較的スムーズだったら一気に広げる可能性もあるとしています。

 なぜここまで慎重なのかというと、そこにはオペレーションの問題があります。システムに関してはお互いが自転車やポートの空きを参照するだけで済みますが、電動アシスト自転車には充電やメンテナンスの作業が必要になります。

また、各社とも、ポートに停車する台数が極端にバラつくことがないよう、トラックに積み込んで移動させることで偏りを調整しています。

(▲画像:再配置やバッテリー交換といったオペレーションをどう連携していくかが課題になるという)

 2社にサービスがまたがってしまうと、このオペレーションをどうやっていくかが課題になるといいます。武岡氏は、「システム連携や双方が開発さえすればできるが、オペレーションはどう分担するのか。バッテリー交換も双方でやるので、OpenStreetのバッテリーをうちで充電するのか、バッテリーをうちで持つのか」と、詳細が決まり切っていないことを明かしました。

 このオペレーションを、AIを活用するなどして効率化し、ギリギリのバランスでコストを抑えているだけに、それが崩れたとき、「それぞれが採算性を取れるところまでやれるのかは未経験」(同)だといいます。武岡氏は「私の感覚だと、最初の1エリアには1年ぐらいかかる」と見込んでいる様子。これが当たっているとすると、2エリア目に展開するのは26年ごろになる可能性があり、拡大には時間がかかります。

(▲画像:提携でシステム連携も行うが、こちらの方が難易度は低いという)

 もっとも、「半年でバランスが見つかる可能性もある」(同)といい、あくまでやってみてからの判断になるそうです。

やや慎重な姿勢を示したドコモ・バイクシェアに対し、OpenStreetの代表取締役社長CEOの工藤智彰氏はもう少し楽観的。「行けると思ったらガンガン進めていきたい」と話しており、若干ですが温度差もあるように見受けられました。

ユーザーにとっては利便性が高い取り組みなだけに、オペレーションがうまく回ることを期待しています。



《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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