生まれた時にはこの世にいない「写真1枚だけの父親」がAIで動く姿を親父に見せた(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

父親の写真は1枚だけ。その写真がAIで動いた時、人がどんな反応をするのか、間近で体験しました。

今年90歳になった僕の父は、自分の父親の記憶がありません。生まれた時には亡くなっていたからです。僕の祖父にあたるその人は祖母のお腹の中にいた父を見ることなく病死。26歳だったそうです。唯一残されたのが、1枚の写真でした。

▲唯一残っている祖父の写真

22歳の時に、香川県の屋島(屋嶋)山頂にある談古巓(だんこれい)に登った記念写真です。誰が撮影してくれたのかは分かりません。

裏には、「昭和3年(1928年)9月14日。二十二歳。屋島登山記念。屋島山上にて。Matsuo」と本人の自筆らしきメモがあります。手がかりはそれだけ。

▲裏面のメモ

「当時、自分の名前をローマ字で書くとこなんかはモダンな人だったんだろうな」と、この唯一の写真から父は想像を膨らませていました。22歳としているけど、当時は数え年だったからおそらく21歳。結婚前のようです。

結婚相手である僕の祖母は祖父の死後に再婚。原爆に1.5kmの距離で授乳中に被曝して半身を焼かれましたが、106歳まで生きました。再婚相手は46歳で亡くなっています。

再婚したためでもあるのか、単に貧乏だったためか、結婚式のときの記録も残っていないようで、自分にとっても祖父は謎の人物です。

先日帰省した際、父から被爆時の様子を聞き取ったついでに、祖父の写真をiPhoneで撮影しました。

その場でReminiによる高精細化を施し、Runway Gen-3 Alpha TurboのImage to Videoを使って数十秒で動画にし、父親に見せました。

父は少し涙ぐんでいました。写真だけではわからなかったことも、動画にすると気付いたそうです。肋が浮き出るくらい痩せていたこと、思ったよりも若く見えるということ。

何度見たかわからない、すました顔ですが、角度が違う表情を見ることができたのが嬉しかったようです。

その場で何回か試して見せたら、「これがエーアイか」と驚いていました。いや、それはあなたの息子がやってることですよ。

妹にも見せたところ、「巓古談」の右側に表示されている文字を読み取ろうとしていました。これは、AIが勝手に解釈して生成する、いわゆる「謎文字」。実は僕も読み取ろうとしていました……。わかっていても、そこに意味を見出そうとしてしまう人間のサガですね。

東京に戻り、続きをやってみました。まずは写真のカラー化です。

Photoshopでノイズを除去しつつカラー化していったら、こんな感じになりました。まだ退色・劣化した部分は残っていますが、自分のスキルではこの辺が限界。

でも大丈夫。さらに自然なカラー化は、AI動画の方でやってくれます。このまま再びRunway Gen-3 Alpha TurboのImage to Videoにかけます。

AIが考えた、96年前の祖父の姿です。

▲Photoshopでカラー化した写真をAI動画にした

笑って話しかけてくるバージョンもできました。声は父と似てたんでしょうか。Vocoflexで僕と父の声をミックスすれば近くなったりするのかな?

いずれこちらのカラーバージョンの方も見てもらおうと思っています。

今回の帰省では、ちょうど息子夫婦と孫娘も実家を訪れ、4世代が一堂に会すことができました。この動画を間に合わせていれば5世代での記念撮影ができたのに、と少し後悔しています。

そういえばこれ、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」で取り上げてもらったときの、最初の事例に似ていますね。

Runway Gen-3 Alpha Turboは日本人のImage to Videoもかなり自然に動画にしてくれるようになっているので、大切な人の別の表情を見たいという人は、試してみるだけの価値はあると思います。


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