MVNOたたんだDMMがモバイルサービス再参入。povoに溶け込むその仕組みとは?(石野純也)

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石野純也

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ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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映像サービスなどでおなじみのDMMが、昨年12月24日に新たなモバイルサービスを発表しました。「DMMモバイルPlus」が、それです。

DMMと言えば、かつてはMVNOとしてDMM mobileを展開。その後、同サービスは楽天モバイルに事業を継承。楽天モバイルが自身でキャリアとして参入して以降、サービスは徐々に縮小しています。DMMモバイルPlus発表の翌日からは、楽天ポイントの付与もなくなりました。

▲12月24日にスタートしたDMMモバイルPlus。DMM経由でpovoを新規契約可能なほか、特別なトッピングを購入できる

いったんはMVNOをたたんだ格好のDMMですが、DMMモバイルPlusは、それとは少々事業の性格が異なっています。

同サービスはKDDI Digital Life(KDL)のpovoを組み込んだサービス。通信サービスの提供主体もpovo。つまり、ユーザーが契約を結ぶのはpovoということになります。

DMM側は、KDLの用意した「povo SDK」を使い、自社のサービスを組み込んだトッピングを提供しています。

面白いのは、DMM側のサイトからpovoの新規契約ができたり、DMMでしか購入できないトッピングが用意されているところです。

DMMモバイルPlus限定の初回購入限定トッピングになっているのは、「DMM動画見放題/24時間」と0.3GBのデータ容量をセットにしたもの。

ここでの見放題は、サービス料が無料になるのではなく、ゼロレーティングで通信量をカウントしないことを意味しています。

▲DMM(やFANZA)の動画を見た際に、データ容量が減らないトッピングを用意する。DMMポイントとデータ容量のセットも

DMM動画と言いつつも、データ通信量のカウント対象外になるサービスには、別会社のはずのFANZA TVやFANZA月額動画まで含まれているので、あんな動画やこんな動画を見たい人にも安心(?)。

7日間のDMM動画見放題と0.5GBのデータ追加がセットになったトッピングや、30日間のDMM動画見放題と2GBがセットになったトッピングも販売されています。これらは、通常のpovoアプリからは購入できません。

ちなみに、新規契約はデータプラン限定。これは、本人確認を省略するためで、音声通話付きの回線のように、マイナンバーカードや運転免許証といった身分証明書をアップロードする手間がかかりません。

DMMのユーザーが回線を使いたいと思ったとき、すぐに追加してeSIMとして端末に組み込める形になります。

▲回線を持っていない場合、DMMモバイルPlusから直接povoを新規契約できる。契約できるのはデータプランのみ

どちらかと言えば、DMM側がやっているのはpovoの集客に近く、同社の動画を視聴するユーザーに対し、特典をセットにしたpovoの回線を提供しているような形です。

通信でガンガン儲けようという意思があれば別ですが、自社のユーザーに足回りとなるネットワークを提供するという目的であれば、MVNOをやるよりも低リスクと言えるでしょう。

他社のサービスに溶け込み、それを支えるネットワークを提供するというのがpovoの目指す姿。先に挙げたpovo SDKは、そのために開発されたものです。

現時点では、DMMのほか、同じ動画サービスを主力にするAbemaTVもこれを利用しており、ABEMAのデータ通信量がカウントされない特別なトッピングを「ABEMA限定プラン」として販売しています。

▲動画サービスでは、AbemaTVともタッグを組んでいる

また、11月に開始されたローソンの「povo Data Oasis」も、povo SDKを使い、特設サイトからpovoの契約状況を見られるようになっています。

KDLは、こうした他社とのコラボレーションを通じて、2.0のpovoを3.0にアップデートしていく方針を示していました。現状ではまだ2.0のままですが、取り組みが広がった時点で3.0になる可能性もありそうです。

▲ローソンのpovo Data Oasisも、povo SDKを使った取り組みの1つ

DMMモバイルPlusでは、よりコラボレーション相手に溶け込んでいる様子も見て取れます。

ABEMA限定プランやローソンのケースはpovo色も前面に出ており、ロゴもしっかり入っていますが、DMMモバイルPlusはDMM TVからきちんとリンクが張られており、サービス名称も「Powered by povo2.0」という表記になっていて、より裏方に回っている印象を強くしています。KDLが紹介していたpovo3.0のコンセプトに近いのも、こちらです。

▲povoは、他社とのコラボレーションを通じて3.0へアップデートしていく計画だ

一方で、こうした取り組みがどこまで広がるのかは未知数な部分があります。

ローソンはどちらかと言えばpovoを使った来店施策に近く、それを除くと現状では動画サービスが中心。サービスとデータ使い放題などとの相性がいいのは確かですが、それだけだとワンパターンになってしまうのも事実です。

通信事業者との新たなタッグの組み方が、2025年にどう広がるのかには注目しておきたいポイント。その場ですぐに契約できたり、トッピングで商品まで購入できたりするのは、リアルな店舗とも相性がよさそうなだけに、オンラインサービスだけでない驚きのあるコラボレーションにも期待しています。

《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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