1週間の気になる生成AI技術・研究をいくつかピックアップして解説する連載「生成AIウィークリー」から、特に興味深いAI技術や研究にスポットライトを当てる生成AIクローズアップ。
今回は、国際数学オリンピックで金メダル相当のパフォーマンスを達成したモデルを提示する論文「Gold-medalist Performance in Solving Olympiad Geometry with AlphaGeometry2」に注目します。
Google DeepMindが開発したAIシステム「AlphaGeometry2」(AG2)は、国際数学オリンピック(IMO)の幾何学問題において画期的な成果を上げました。2000年から2024年までのIMO幾何学問題の84%(以前はAG1で54%)を解決し、平均的な金メダリストの成績を上回る性能を示しました。
なお、AG2は2024年7月のIMOで銀メダル水準を達成したシステムの一部でもあります。
AG2は前バージョンのAG1と比べて、いくつかの重要な改良が施されています。まず、Geminiをベースとした、より強力な言語モデルを採用しました。このモデルは、約3億個の定理からなる大規模なデータセットで訓練されています。また、記号処理エンジンを大幅に改良し、処理速度を約300倍に向上させました。
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▲前バージョンAG1と比較したAG2のトレーニングデータ分布
幾何学の専門言語も拡張され、より多くの概念を扱えるようになりました。例えば、点の移動や角度、比率の線形方程式など、以前のバージョンでは扱えなかった概念を新たに導入しました。これにより、IMO問題の88%(以前は66%)を言語として表現できるようになりました。
また、複数の探索木を組み合わせた新しい探索アルゴリズム「SKEST」を開発しました。このアルゴリズムでは、異なる設定の探索木が並行して動作し、発見した知識を共有しながら解を探索します。これにより、より効率的に解を見つけることが可能になりました。
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▲探索アルゴリズムの概要
AG2の特筆すべき点は、人間の数学者も驚くような創造的な解法を見出せることです。
例えば2024年のIMO問題4では、わずか30秒で解答を導き出し、満点の7点を獲得しました。
この問題では通常、三角関数や複素数を使う解法が一般的ですが、AG2は1つの補助点(下画像のE点)を追加するだけのエレガントな幾何学的解法を発見しました。
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▲IMO2024問題4において、AG2の補助構造付きの回答