カメラバーよ、さらば。Pixel 9aは『買い』か? Proと比較して見えた実力(Google Tales)

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佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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3月19日に発表された後、発売日がしばらく発表されずにどきどきしていた「Pixel 9a」が、日本では4月9日に発売されました。 今回のGoogle Talesは、ずっとハイエンドのPixelシリーズをメインに使っているユーザーによるファーストインプレッションです。

筆者は普段、Pixelシリーズのフラッグシップである「Pixel 9 Pro」をメインで使っています。今回のPixel 9aを実際に触ったのはまだ数日ですが、正直なところ、9 Proと比べてものすごく劣っていると感じることはありませんでした。

まず見た目。筐体の素材は、昨年の8aから採用されているマット仕上げのプラスチックです。ガラスではないので、価格(8万円切り)を抑えるのに貢献していそうです。

でも、決して安っぽさは感じさせません。パッと見ただけでは、Pixel 9 Proのマット仕上げガラスとの区別は難しいほどです(触るとガラスの方が少し滑らかな感触です)。全体として、とても8万円を切るデバイス(128GBモデルは7万9900円)とは思えない、高級感のある仕上がりだと感じました。

Pixel 6から続いた、Pixelの特徴の1つであった背面の「カメラバー」がほぼ姿を消しました。代わりに、Pixel Watchと同様に水滴からインスピレーションを得たという、少しだけ盛り上がった黒い楕円形デザインに2つのカメラが収まっています。

▲カメラバーではなく、水滴っぽい枠に

個人的には、あのカメラバーが結構好きだったので、これは少し寂しいポイントです。カメラバーがあると、平面に仰向けに置いたとき、本体が少し浮いてピックアップしやすかったんです。10月に出ると思われるPixel 10シリーズでも、カメラバーはなくなるんでしょうか……。

▲仰向けのPixel 9a(左)とPixel 9。9aはぺったり寝そべってます

機能面で、普段使いで困ることはほぼありませんでした。フラッグシップのPixel 9 Proとの違いをリストアップすると、おおよそ以下のようになります。(このコラムの最後に、Pixel 8aとPixel 9も加えた4台の比較表も用意しました)

価格は、128GBモデルでは9 Proの約半分ですが、性能は半分では全然なく、バッテリー容量にいたっては9 Pro以上です。

▲Pixel 9aとPixel 9 Proのスペック上の違うところだけ抜粋

aシリーズで初めて「マクロフォーカス」が可能に

パッと見て最も大きな違いは、背面カメラでしょう。aシリーズはいつもですが、センサーは2つしかありません。画素数も低い。望遠がないので、光学ズームもありません。でも、広角でデジタル8倍ズームができます。

デジタル8倍ズームは、ちょっと白っぽいですが、素人目には9 Proに遜色ないです。こうなると、9 Proで自慢できるのはデジタル30倍だけかも?

▲左から、Pixel 9aの等倍、8倍デジタルズーム、Pixel 9 Proの8倍デジタルズーム、Pixel 9 Proの30倍デジタルズーム(しまった、9 Proの光学5倍ズームの写真がない~)

ただ、正直なところ、Pixel 9 Proの30倍ズームは、鳥などのいきものが被写体だと不自然になりがちで、実用的なのは8倍くらいまでかな、と感じています。そう考えると、Pixel 9aの8倍デジタルズームでも十分満足できるシーンは多いかもしれません。

さらに驚いたのが、これまでハイエンドPixelの特権だった「マクロフォーカス」機能が、aシリーズで初めて利用可能になったことです。被写体にグッと寄って撮影できるマクロ撮影機能ですね。これまではマクロフォーカスに切り替わると画面に黄色い花のアイコンが表示されましたが、Pixel 9aでは画面左上に控えめに花のアイコンが表示されるだけになっています。

また、9aのマクロフォーカスは被写体に近づき過ぎるとすぐ「被写体から離れてください」と叱られます。9 Proだと、花びらにレンズがくっつくほど寄っても撮影できますが、9aはピントの合う範囲が少し狭いようです。

▲左:Pixel 9aのマクロフォーカス画面(叱られてるところ)、右:Pixel 9 Proのマクロフォーカス画面

なので、マクロフォーカスはちょっと慣れが必要です。撮影までにしばらくレンズを近づけたり遠ざけたりしちゃいました。

▲9aのマクロフォーカス、Proより少しコツがいるかも

カメラ関連のAI機能も、ほとんどのものが利用可能です。CMで三笘薫選手がサッカーボールを桃に変えて「はは」と笑っている「イマジネーション」も、集合写真に後から撮影者を追加できる「一緒に写る」も、目をつぶっちゃった人の顔を後から差し替える「ベストテイク」も、もちろん編集マジックも使えます。これらはすべてオンデバイスAIのお仕事です。

天気の良い日の写真は以下のように大変美しいです。

▲Pixel 9aのマクロフォーカス

▲Pixel 9aのパノラマ

▲ちょっと暗い部屋で撮ったアプリコットパイ(左が9a、右は9 Pro)

メモリが半分だとAIはちょっと不便だけど

もう一つの大きな違いは、メモリサイズです。Pixel 9aは8GB一択。これは9 Proの半分にあたります(9 Proは16GB 一択)。これが何に影響するかというと、やはりGeminiをはじめとするAI機能でしょう。電源ボタン長押しでGeminiを起動できる点は同じですが、デバイス上で直接処理を行うAI機能、いわゆる「オンデバイスAI」の性能に関わってきます。

Googleからの公式発表はありませんが、海外メディアのArs Technicaなどが報じているように、Pixel 9aに搭載されるオンデバイスAIモデル「Gemini Nano」は、他のPixel 9シリーズが搭載する「XS」よりもさらに小さい「XXS」バージョンであるとGoogleも認めています。

とはいえ、クラウドベースのAI機能、例えばGemini Liveや、カメラで“見ている”ものについてGeminiと会話する機能(Project Astraでデモされたような機能)は利用可能です。

利用できない主な機能としては、「Pixel Screenshots」が挙げられます。これは、Pixel 9シリーズで利用可能になったAI機能で、スクリーンショットにリマインダーを設定したり、音声メモを追加したりできる便利な機能です(筆者もまだ使いこなせていませんが、いずれ詳しく紹介したいと思っています)。この機能はオフラインでも動作するため、オンデバイスAIの性能差が影響しているのかもしれません。

また、「通話メモ」機能も利用できませんが、こちらはまだ日本国内では提供されていないため、現時点でのデメリットとは言えないでしょう。

というわけで、メモリサイズの違いによる機能制限は、今のところ「ものすごく残念!」というほどではない、というのが正直な感想です。

ただし、スマートフォンでがんがんゲームをプレイするとか、Adobeのアプリで動画を編集するとか、そういう人にとってはメモリ不足が痛いようです。

謎のバッテリー大型化

少し謎なのがバッテリー容量。Pixel 9aは、現行Pixel 9シリーズの中で最大の5100mAhバッテリーを搭載しています。最も大きいPixel 9 Pro XLですら5060mAhなのに。実際に、朝から普通に使っていても、夜までバッテリー残量を心配することはほとんどありませんでした(ただし、ゲームや動画再生はあまり試していません)。

なのでまぁ、寝る前にPixel Standに置けば翌日は1日中使えるような感じではありますが、充電速度は9 Proより結構遅い(ワイヤレス充電で、9 Proは最大21W、9aは最大7.5W)ので、うっかりぎりぎりにならないよう気をつける必要がありそうです。

誰のためのスマートフォンなんでしょう

昨年のPixel 8aの際にも感じましたが、今回のPixel 9aの登場で、無印とaシリーズの棲み分けはどうなっているのかが、ますますわからなくなってきました。もはや「無印Pixel」の存在意義は、「最新のPixelの機能を手頃な価格で、aシリーズより数カ月早く手に入れられること」くらいになってしまうのでは? と感じます。先取りしたい気持ちがなければ、半年待った方がより高機能なPixelを数万円安く手に入ります。

もしそろそろスマートフォンを買い替えようかと思っている友人(特にAI機能をそこまで重視しない友人)に相談されたら、このPixel 9aを自信を持って推すことになりそうです。

御子息にはじめてのスマートフォンを買おうという親御さんにも勧めちゃうなぁ。ただし、JKなどはiPhoneじゃないとハブられるかもしれないので、そこは難しい。「iPhone 16e」は正規で9万9800円ですが、通信会社の期間限定キャンペーンなどを利用すれば6万5000円くらいで購入できる場合もありますし。

それでも、今後どんどんiPhoneが高くなっていくとすれば、今のうちにPixelに乗り換えるのはいい考えだと思います。それくらい、今回のPixel 9aは「ちょうどいい」完成度だと感じました。

最後に恒例のスペック比較表です。

▲8a、9a、9、9 Proの比較


《佐藤由紀子》

佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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