iPhoneがMacのウェブカメラになる連携カメラ・Metal 3でゲームグラフィック大幅強化。macOS Ventura注目の新機能

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Munenori Taniguchi

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アップルは、6月7日に開催した開発者向けカンファレンスWWDC 22のキーノートで、macOSの13番目となる最新バージョン「macOS Ventura」を発表しました。

主な新機能としては、起動中のアプリウィンドウを自動的に整理してくれるステージマネージャ機能、iPhoneをウェブカメラ化する連係カメラ機能などがあり、既存機能の改良点としてはFaceTimeが通話をiPhoneなど他のデバイスに引き継げるHandoffに対応、iMessageやメールアプリの改善、そしてApple SiliconとMetal 3の新しいゲーミング体験などが挙げられます。

さらに、iOS 16と同様のiCloud共有写真ライブラリやSafariの共有タブ機能および既存のID/パスワード方式を置き換える認証機構であるPasskey(パスキー)機能なども盛り込まれています。

ステージマネージャ

ステージマネージャ機能は、複数のアプリを使って次々と切り替えて作業するユーザーにとって、より作業に集中できる環境を整えてくれる機能と言えます。この機能を使えば、メインで作業しているアプリケーションをデスクトップの中央最前列に配置し、他のアプリケーションは画面のサイドにいつでもアクセスできるように整列して配置します。アプリケーションやウィンドウはグループにしておけるので、自信の作業内容にあわせてセットアップしておけばさらに効率が上がりそうです。

連係カメラ

MacBookシリーズやiMacにはFaceTimeカメラが搭載されていますが、多くのMacユーザーの手もとにはすでに高性能なカメラを備えるiPhoneがあるはず。だったら、これをFaceTime用に使おうというのが連係カメラ機能。macOS Venturaでは、Macの近くにあるiPhone XR以降を自動的に認識、無線接続し(有線でも利用可能)、ウェブカメラとして使えるようにします。iPhoneはスタンドで画面上部に設置でき、快適なビデオ通話を可能にします。またマイクもiPhoneのものが使用されます。

連係カメラ機能では、ポートレートモード、センターステージ、スタジオライトといった効果にくわえ、iPhoneの超広角レンズを利用して机上にあるものを見下ろすアングルのデスクビューが提供されます。

そのほか、Macで開始した通話をiPhoneなど他のデバイスに引き継いで継続できるHandoffが追加され、会話の途中で移動する必要が生じてもそのまま話を続けることができます。

メッセージ

メッセージは見た目の大きな変更はないものの、Twitter界隈では数年来の議論になっている送信直後の再編集機能が搭載されます。送信後最大15分までのあいだなら、送った内容を適宜修正できます。この機能は吹き出しの背景色が青色の相手の場合に有効で、緑色すなわちSMSでは使えません。またやりとりをしている相手がVentura以降か、iOS 16以降などアップルの最新のOSである必要があります。

また、削除したメッセージを復元する機能も追加されます。こちらは最大30日間有効で、削除したメッセージの中に、重要な情報があったことに後で気づいても30日以内なら元に戻すことができます。そのほか、一度目を通したメッセージを未読状態に戻す機能も追加されます。

メッセージアプリにはFaceTimeと同様にSharePlay機能に対応しました。これにより、SharePlayで動画や音楽、ゲームを家族などとともに楽しんだり、トレーニングなども共有できます。

Safariブラウザーとパスキーによる認証

macOS Mobntereyで追加されたタブグループ機能が、他のユーザーと共有可能な共有タブグループに進化しました。タブの追加操作はどのユーザーでも可能で、誰かが追加すれば他のユーザにもすぐに反映されます。さらに、共有スタートページでブックマークのリストを作ったり、Safariからメッセージアプリで会話を開始したり、FaceTime通話もできます。

セキュリティ面では、Safariでのウェブブラウジングをさらに安全にすべく、ID/パスワードによる認証に代わる新しい認証機構のパスキー(Passkey)に対応します。パスキーはiOS 16、iPadOS 16、tvOS 16でも対応し、アカウントへのアクセスを目的としたフィッシング、マルウェアやその他の攻撃からユーザーを保護します。

パスキーはFIDO Alianceが策定したWebAuthnというWebサービスにおける認証技術標準に基づいており、Googleやマイクロソフトを含むFIDO Allianceメンバーが相互に協力することで、アップルに限らず異なるメーカーのデバイスやプラットフォーム間でも使用できます。ウェブサービスとアカウント個々に一意の暗号化キーペアを使用して認証を行う仕組みで、公開鍵はサイト側、秘密鍵はユーザー手持ちの生体認証を備えたiPhoneやその他のデバイスに保持することで、ユーザーはiPhoneのFaceIDまたはTouch IDを使用してウェブサイトの認証作業を完了できます。パスキーはiCloudキーチェーンを使用し、2要素認証でさらに堅牢に保護され、ユーザーのすべてのデバイス間で同期されます。

Spotlight

macOSの検索機能Spotlightには、ファイルをすばやくプレビューできるクイックルックが搭載され、写真ライブラリのみならずシステム全体、インターネットまでを対象として画像を検索できるようになります。そして「テキスト認識表示」によって画像の中の文字を検索することも可能です。また、検索結果には画像だけでなく、映画や俳優、テレビ番組、ビジネス、スポーツ、アーティストなどに関する情報も含まれます。また、Spotlightからタイマーを開始させたり、ドキュメントの新規作成、ショートカットの実行なども可能になります。

iCloud共有写真ライブラリ

ユーザーは最大6人の家族メンバーととも共有の写真ライブラリを作り、それぞれが写真の追加、編集、お気に入り登録、キャプションの付与、削除まで自由に行えます。

誤って写真を共有してしまうのが心配なら、スマートセットアップルールと称する機能を利用すると良いでしょう。過去のすべての写真を共有するか、特定の開始日の写真だけを共有するかを選択できます。また家族や、特定の人だけを登録するような設定も可能です。

写真は共有ライブラリに自動的に追加できますが、iPhoneで新しく撮影した写真を登録するのに、Bluetoothを利用した近接判定に基づいて共有するというオプションもあります。

Metal 3によるゲーム体験

おそらく大半のMacユーザーがこれまで諦めていたジャンルとして、ゲームがあります。iPhoneではモバイルゲームがたくさんリリースされる一方、インテル製CPUを採用してきたMacでは、ゲームに要求される仕様を持つモデルとなるとAMDのGPUを搭載する高価なモデルしか選択肢がありませんでした。Mac向けのゲームタイトルも、なかには『Shadow of the Tomb Raider』のようなAAAタイトルもあるものの、多くはカジュアルなゲームだったと言えるでしょう。

しかし、Apple Siliconの登場によってMacにおけるゲームの可能性は大幅に変わり、高性能なGPUがMacBookシリーズのようなラップトップデバイスにも搭載されるようになりつつあります。最新のMacBook Proに搭載されるM1 Maxの内蔵GPUは、GeekBenchのテストによるとAMDのRadeon RX 5700 XTにも近い性能とされています。また、WWDC 22で新しく発表されたM2チップの内蔵GPUは最大10コアのGPUユニットを搭載し、さらに高性能になることが予想されています。

そして、macOSでは、この新しいApple Siliconとともに、強化されたゲーム向けAPIのMetal 3が発表されました。ベンチマークなどの情報がないため、その実力がどれほどかはまだわからないものの、発表でスクリーンに映し出されたHello Gamesの『No Man’s Sky』、カプコンの『バイオハザード ヴィレッジ』、EAの『GRID Legends』といった大作ゲームがこともなげに動作する様子を見ればその期待は膨らむばかりです。

なお、このような高画質ゲームを低負荷で動かすのに一役買っているのが、Metal 3 APIに含まれるMetalFX アップスケーリング技術。この技術は、NVIDIA RTXシリーズのDLSS、AMDのFidelityFX Super Resolution、インテルXeSSなどに類似するもので、実際のグラフィックスは低解像度で動かしつつ、高解像度ケーリングと時間的アンチエイリアシングを適用して表示します。また、Fast Resource Loading APIにより、高品質なテクスチャやジオメトリに簡単にアクセス可能になり、没入感のあるゲームプレイを体験できるようになります。

macOS Venturaは2017年以降のiMac、iMac Pro、MacBook Pro、Macbook、2018年以降のMacBook Air、Mac mini、2019年以降のMac Proにインストール可能。なお、インテルCPU搭載のMac製品では、FaceTimeを含むオーディオコンテンツへのライブキャプション機能やディクテーションモードでの絵文字の使用などがサポート対象外になるとのことです。

《Munenori Taniguchi》
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