カリフォルニアに拠点を置くMojo Vision社が、AR(拡張現実)機能をコンタクトレンズに搭載した、スマートコンタクトレンズ「Mojo Lens」の装着テストを開始したと発表しました。
ARヘッドセットやARメガネは、ユーザーが見ている現実の風景に、テキストやオブジェクト、キャラクターといった情報を、あたかもそこに存在するかのように表示するアイテムです。しかしヘッドセットの場合は髪型やメイクが乱れてしまいがちで、一方のメガネ型デバイスも、デザイン的に気に入らなかったり、コスト的な面でTPOにあわせて取り替えるといった使い方が難しい面があります。
Mojo Visionは、AR機能をコンタクトレンズに搭載した、スマートコンタクトレンズ「Mojo Lens」を数年前から開発しています。スマートコンタクトレンズは、機能的にはARヘッドセットやARメガネと同じように、使用者の視界に何らかの情報やグラフィックを表示します。このスマートコンタクトレンズの開発進捗はこれまでに何度か発表されており、今年4月には単色ディスプレイによる情報表示やセンサーによるアイトラッキング機能などが追加されていました。
最新のMojo Lensはディスプレイ機能を向上させ、解像度は1インチあたり1万4000ピクセル、直径0.02インチ(0.5mm)のマイクロLEDディスプレイを備えます。プロセッサーには小型のArm Cortex M0を搭載し、使用者の視界にARコンテンツを表示します。使用者は加速度計、ジャイロスコープ、磁力計を組み合わせて実現するアイトラッキング機能で操作ができるようになっているとのこと。
初の装着試験に至るまでの最後のハードルは、レンズへの電力供給と無線通信を可能にすることでしたが、現在はレンズ内に医療用の小型バッテリーを備え、5GHzの短距離無線通信機能でコンテンツデータの送受信が可能になっているとのこと。Cnetによれば、Mojo Lensは「研究のために眼球運動データを追跡するコンピュータに情報を送り返す」こともできると伝えています。
今回の発表によると、Mojo VisionのDrew Perkins CEOは、自身でこのMojo Lensを装着し「完全な機能を備えた拡張現実型スマートコンタクトレンズの装着デモ」を初めて体験したとのこと。Perkins氏はコンタクトを通した視界にAR表示されるコンパスの方位や、テキスト情報を表示するARテレプロンプター機能を見ることができたと述べています。
今回の装着試験は片方の目だけで行われましたが、Mojo Visionは将来的に、ユーザーが両目にMojo Lensを装着して、視界に3DでARオブジェクトを見られるようにすることを考えているとCnetは伝えています。そして、視線を動かしてもARによる情報が見え続けるようにすることも課題のひとつだとしました。
Mojo Lensは目に装着可能になったものの、まだまだプロトタイプの段階の品であり、動作させるためにはスマートコンタクトレンズと通信する「Relay Accessory」と呼ばれる小箱を首もとに装着しなければなりません。さらに、通信状態を安定させるため、アンテナを取り付けた帽子もかぶる必要があるとのことです。
今後Mojo Lensを実用化するためには、これらのアクセサリー部分のさらなる小型化もしくは省略が必要になるはずです。最終的に市場での販売を可能にするため、米食品医薬品局(FDA)からの認可も得なければなりません。Perkins氏は「そのための臨床研究をいくつか行う予定だとしました。
Mojo VisionはMojo Lensのようなスマートコンタクトレンズを、たとえばアスリートが使えば、リアルタイムに情報を得ることで今よりも高度なトレーニングが可能になるなど、わかりやすくその用途の一例を示しています。
最近はメタバースという、それが何を示すのかがいまひとつピンとこない言葉が、あたかも世の中を変えるかのように言われています。ただ、メタバースにはヘッドセットを通じて没入してしまうVR空間だけでなく、現実世界に根ざしつつ、インターネット技術の拡張により人々に役立つ情報を提供するARの世界も含まれます。とすれば、将来AR寄りのメタバースが普及すれば、ARスマートコンタクトレンズは生活に欠かせないデバイスになっているのかもしれません。
Source:Mojo Vision
via:Cnet
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