Galaxy Ringで、健康以外の利用価値を考える(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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Galaxyシリーズ初の指輪型デバイスとして注目を集めている「Galaxy Ring」が、ついに日本に上陸しました。

発売に先立ち、筆者もこのデバイスを試用することができたので、そのレポートをお届けします。日本では、サムスン電子が直接販売するほか、一部サイズ限定でKDDIやソフトバンクでも販売されます。

▲1週間、ほぼつけっぱなしにしていたGalaxy Ring

Galaxy Ringは、指輪の内側に各種センサーを備えたセンシングデバイスという位置づけで、そこから得られた情報を元に、ユーザーの健康状態を可視化します。スマートウォッチに実装されている機能の一部を取り出し、より身に着けやすい指輪の形にダウンサイジングしたものと言えるでしょう。

▲本体内側に、センサーが密集。センサーが手のひら側にくるよう、Galaxy Ringの外側には小さな突起がある

ペアリングできる端末の要件は、Android 11以降で1.5GB以上のメモリを搭載していること。サブスクリプションのような形での支払いは必要ありません。筆者は、普段使いの「Galaxy Z Fold6」に紐づけて使ってみました。できることの1つ目は、歩数や消費カロリーなどの計測。あらかじめ設定した目標を達成しているかどうかは、ハート形のリングで確認することができます。

スマートウォッチに比べるとコンパクトなため、精度はどの程度なのかをApple Watchと両方身に着けて比べてみましたが、ほぼほぼ結果は同じに。例えば、2月13日の18時19分時点で、Galaxy Ringが8474歩だったのに対し、Apple Watchは8551歩と表示されています。200歩弱の差はありますが、誤差の範囲。小型ながらも、精度は高いことが分かります。

▲Galaxy Ringで計測した歩数。18時19分時点で、8474歩になっていた

▲こちらはApple Watchで測った歩数。8551歩になっており、結果はほぼ同じだ

睡眠の状態を計測することも可能。寝ている間の心拍数や呼吸数、皮膚温度などを記録し、それをAIで解析することで、「レム睡眠」「浅い睡眠」「深い睡眠」「非睡眠状態」を仕分けます。それぞれの比率や睡眠時間などを元に、「睡眠スコア」を算出。前夜、きちんと寝て体力回復や精神回復ができていたのかを示してくれます。

睡眠の計測はGalaxy Ringをつけているだけで自動的に始まりますが、これもなかなか正確。筆者は睡眠中にたびたび目を覚まし、一服してまたすぐに眠るということが多々ありますが、記憶にあった覚醒時間はきちんと記録されていました。睡眠スコアは7日分測ってみましたが、寝ていたのにデータに残っていなかったことは1回、約2時間ぶんしかありませんでした。

▲睡眠の質を分析、自動的に「レム睡眠」「浅い睡眠」「深い睡眠」が仕分けられ、標準範囲と比較できる

逆に、頭痛が酷くなってきた際に休憩し、1時間半ほど机に突っ伏して仮眠したときの状態も“昼寝”として記録されていたのには驚きました。ただし、昼寝は睡眠時間にはカウントされるものの、睡眠スコアを向上させる効果はないそうです。

▲昼寝も勝手に記録されていた。昼寝というが夜寝だが、通常の睡眠時間以外の睡眠も、このように記録される

また、これらの睡眠データや前日の活動状況を使って「エナジースコア」を算出。これは、体力のようなもので、当日どのぐらい頑張れるかを示す指標です。数値が低いと、休息を促されることもあります。アドバイスは生成AIを使って出力しています。

▲睡眠状態や前日の活動などを元に、エナジースコアが算出される。休息が必要な場合には、その旨が表示される

もう1つ驚いたのは、前日の夜、飲みに行っていたことがバレていたこと(笑)。Galaxy Ringのデータを表示するSamsung Healthには、飲食したものを入力する機能もありますが、面倒だったのでこれはスルーしていました。

ところが、本稿執筆時に表示されたアドバイスには、連夜の飲酒や夜食を避けるような記載がありました。心拍や皮膚温度の変化、継続時間などや、スマホ側の位置情報から、飲酒の事実を読み取ったのかもしれませんが、ここまで分かってしまうとは……。AIおそるべし、という感想が頭に浮かびました。

▲前夜に飲んでいたこともバレてしまい、2月13日ぶんの数値は低くなった

改めて可視化された筆者の睡眠状態や健康状態ですが、予想通り、スコアは低め。ちゃんと寝て、疲れを取った方がいいとGalaxy Ringに諭されてしまいました。特に深い眠りが足りず、エナジースコアがなかなか貯まらない傾向があります。ただ、これについては自覚症状もあったので、6万円を超えるGalaxy Ringを使ってまで計測するべきものなのか……と思うところもあります。

指輪としては少々厚め、かつ、チタンを使っているものの塗装をしているためか、金属っぽさがあまり感じられない質感も、値段を正当化できない要素。普段つけているシルバーやプラチナの指輪と比べると、アクセサリーとしての安っぽさが目立ちます。身に着けるものだけに、後継機では、質感の向上に期待したいところです。

一方で、気軽に身に着けられるメリットは大きく、特に睡眠の計測がしやすさに関してはスマートウォッチを上回っています。圧迫感が少ないバンドに付け替えたり、バッテリー残量を気にしたりと、何かと準備が必要なスマートウォッチに対し、Galaxy Ringなら指にはめるだけでOK。24時間身に着けやすいため、体の状態を余さず記録できる点はこの形状の利点と言えます。

▲7日目の朝時点でのバッテリー残量。丸々6日間、電池が持った。Galaxy Watchと併用することで、計測を分担でき、よりバッテリーが持つようになるという

また、はめている指と別の指を2回トントンとぶつけるとことで、スマホのカメラのシャッターを切ることもできます。この機能が、フォルダブルスマホであるGalaxy Z Fold6と相性抜群。本体を置きっぱなしにしたままシャッターを切っていけるのは便利です。S Pen Proでも同様のことはできますが、常時身に着けているため、すぐに使えるのはGalaxy Ringならでは。

▲指をトントンと軽くぶつけると、シャッターを切ることができる

このようなスマホを制御するような機能がもっと増えれば、Galaxy Ringの利用価値はもっと高まるかもしれません。欲を言えば、これで決済もしたい。Galaxy Ringをはめた手をかざすだけで改札を通過できれば、毎日身に着けるデバイスとしての価値がもっと出たかもしれません。

スマートウォッチ並みの価格をつけるのであれば、健康管理以外の機能面をどう強化していくかも、今後の課題と言えそうです。

《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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