一度はTwitterを買収する契約を結んだものの、その後一方的にその契約を破棄しようとしていたイーロン・マスク氏が、今月17日に迫る裁判を前に、再びTwitterに対して買収を申し出ました。
CNBCが関係者から得た情報として伝えたところでは、マスク氏は当初の条件だった1株あたり54.2ドルで再びTwitterに対して買収を提案し、またSECへの提出書類によると、マスク氏は月曜日にTwitterに書簡を送り、現在裁判所が進行中の訴訟に関連する「裁判およびその他のすべての手続きを延期する」のなら、4月25日に合意し公表した取引を進める意向であると通知したとのこと。
この取引は早ければ今週金曜日にも行われる可能性があるとされています。Bloombergが一報を出した直後からTwitterの株価は22%も上昇しました。
Twitterはマスク氏からふたたび買収を提案する書簡を受け取ったことを認め「われわれの意図は1株あたり54.2ドルで取り引きを成立させることにある」とこれまでの主張を繰り返しました。
マスク氏がTwitter買収の約束を破棄しようとした際に主張したのは、Twitter上のサービス上のスパムまたはボットアカウントの割合が実際に比べ少ないというものでした。そして証券取引委員会(SEC)への提出書類でも、やはりTwitterが事実と異なる数字によって投資家をだましていると主張しました。
これに対してTwitterは、マスク氏の主張は正しくなく、SNS上のボットやスパム・フェイクアカウントの集計方法についてマスク氏は誤解していると反論、スパムやボットに関する必要なデータを提供しなかったというマスク氏の主張も否定し、マスク氏が取り引きから手を引こうとしたのは、市場全体の株安によって、Twitterの株価も下落し、54.2ドル/株での買収が魅力的でなくなったからだとしています。
その後もマスク氏は、一貫してスパムやボットの数に固執して取り引きを拒んでいるものの、具体的に集計した数字を出すことはないまま双方は平行線をたどり、10月17日にデラウエア州衝平法裁判所での裁判開始を待つ流れとなっていました。
状況を打開したいマスク氏は裁判所に対して公判の延期を求めもしましたが、裁判所は延期によってTwitterがさらに「回復できないほどの損害」を被る可能性があるとしてこれを認めませんでした。さらに先週開かれた公判前の公聴会では、マスク氏に不利なテキストメッセージの記録が明らかになり、スパムやフェイクアカウントの数についても、マスク氏が5つの企業を雇ってTwitterのデータを解析したにもかかわらず、決定的な証拠を得ることができなかったことが明らかになっています。
今回、マスク氏が突然の心変わりをしたはっきりした理由はわかりません。ただ、マスク氏としては今回、1株あたり54.2ドルで買収する条件として裁判の開始とその他の手続きをすべて延期することを求めています。裁判の延期は、Twitterに提訴されてからマスク氏が望んでいたことでもあります。Twitterが有利と予想される裁判が行われ、予想どおりの決着をみれば、マスク氏が支払う額は1株あたり54.2ドルに加えて、その他の費用の負担などでさらに支払額が膨れる可能性も考えられます。
マスク氏は火曜日の夜、Twitterを買収する考えに再び興味を持ったかのようなツイートを投稿し「Twitter を買収することは、万能アプリ(everything app)である X の開発を促進する」と、よくわからないことを述べています。
なお、Twitterにしても、これまでのマスク氏の行動から、提案の裏になにか他の意図が潜む可能性を検討することが予想されます。そのため提案に応じるかどうかは1日~数日おいてから決定するとの見方もあるようです。