eVTOLベンチャーのAlef Aeronauticsが、最初の製品となる「Model A」を発表し、2025年第4四半期に納入を開始する予定であることを明らかにしました。
ここ数年、数々のベンチャー企業が次世代の交通手段としてeVTOL(電動垂直離着陸機)を開発しています。多くはフライングカー、フライングタクシーなどと呼ばれるものの、それは「空のタクシー」的な意味合いで、道路を走行する機能を持たないものがほとんど。
なかにはKleinVisionのように、本当に空を飛ぶクルマを作っているところもありますが、これはこれで自動車が飛行機に変形するしくみのもので、VTOLでもありません。そのため離着陸は空港でしかできないというデメリットがあります。
その点、Model Aは垂直離着陸が可能であるため、現状では法律の問題で空港での離着陸が必要ではあるものの、将来的に規制が緩和されれば、制限区域でなければどこでも自由に離着陸できるようになると、Alefの幹部らは考えています。
たとえば、土砂崩れで道路が寸断された状況に出くわしたとしても、路上から空中へと舞い上がり、塞がれた道路の向こう側へ降りることができます。
Model Aは、前後左右から見た限りではレトロなスポーツカーのような形状をしたバッテリー式の電気自動車ですが、上から見下ろす視点では、そのボディがメッシュ状になっていて下が透けて見えるのがわかります。
そして、メッシュのボディの下には直径60cmほどのローターが8枚あり、これが回転することで空へ舞い上がることが可能になっています。
面白いのは、このeVTOLは空を飛ぶときは運転席が90度横を向き、その方向を正面として飛行するところ。飛行速度を上げていくと機体がどんどん傾いて、ある時点からサイドパネルが複葉機のように、翼として揚力を発生するようになります。このときキャビン部分はジンバルによって水平を維持します。
翼の機能を説明するために複葉機というレトロなイメージの言葉を用いたものの、運転(操縦)席に座って飛ぶ感覚は、映画『スター・ウォーズ』に登場するTIEファイターに乗っているように思えるかもしれません。
話が逸れましたが、翼による飛行モードになれば、マルチコプター式よりも効率良い飛行ができるため、原理的には航続距離を伸ばすことが可能です。Model Aはキャビンに搭載する都合上、それほど大きなバッテリーを搭載していないものの、約177kmの飛行、322kmの道路走行が可能としています。
Alefは2019年から原寸大のプロトタイプで飛行試験を重ねており、投資家に対してもデモンストレーションを実施済みとのこと。ただしCnetはパイロットが搭乗した状態で、完全に水平状態で巡航飛行することは試していないと伝えています。
Model Aについて考えられる問題は、メッシュ状にして軽量に作った機体が、自動車の衝突安全基準を満たせているのかというところかもしれません。しかしAlefはModel Aの公道走行時の最高速度を約40kmに制限し、ゴルフカートなどと同じ「小型低速車」に分類させることで、安全基準の問題をクリアしました。
AlefはModel Aの予約受け付けをすでに開始しており、価格は30万ドルに設定しています。またAlefはこの機体が、(米国内では)筆記試験だけで取得できるFAA Part 107ドローン免許で操縦可能になると考えているものの、それ以外にもパイロットとしての何らかの免許が必要になる可能性もあるとしています。2035年までには4~6人が乗れる「Model Z」を作るという長期的な計画もすでに用意しています。