アップルは新型iPad 10.9インチで何を重視し、変化させたか。先行レビューで見えた2つの問題

テクノロジー Science
村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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iPadのスタンダードモデルは、2010年に我々の前に現われて、大きなインパクトを与えてくれた。

以来、12年。AirやProなどの上位モデルが登場するたびに、格下げになってきたような気もするけれど、この「iPad」とだけ記されるデバイスは、多くの人にとって初めてのデバイスだったり、学生や子供向けだったり、いろんな意味で思い入れ深い存在であるはずだ。たぶん、アップルにとってもそうなんだと思う。

その、大事な「iPad」が、10世代目になって、大きな変貌を遂げた。

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あの「ヘソ」のようなルーツの証であるホームボタンを排し、上位モデルと同じようなスクエアなボディデザインになったのだ。この切り立ったエッジに向けて、コーナーが丸くなったディスプレイを配するデザインを、アップルは「Liquid Retina」と呼ぶ。

つまり、スタンダードのiPadも、ついにLiquid Retinaディスプレイ装備となったのだ。

本体サイズはほぼiPad Pro 11インチ、iPad Air 10.9インチと同じ。価格が安くなるごとに少しずつ厚みが増し、フチが太くなるというあんばいだ。

ディスプレイサイズは10.9インチ、2,360×1,640ピクセルということで、iPad Airと完全に同一だが、フルラミネートディスプレイ、反射防止コーティング、P3色域などは省略される。つまり、グレードとしてはiPad(第9世代)と同じで、サイズはiPad Airと同じというわけだ。

チップセットはiPad(第9世代)から、1世代進化して、iPhone 12シリーズに搭載されていたA14 Bionic。性能的には、一般用途には何不自由ないが、iPad Airに搭載されるM1とはスペック的にはだいぶ差がある。

外側のカメラは、iPad(第9世代)の800万画素から性能アップして、iPad Airと同等の1,200万画素になった。

Apple Pencil(Lightning)とコネクター(USB-C)問題

さて、問題のApple Pencilだ。

なんと、なぜだか、対応機種がApple Pencil(第1世代)なのだ。それゆえ、Lightningコネクター経由で充電しなけばならない。しかし、本機のポートはUSB-Cポート。

つまり、Apple Pencilを充電するために、USB-Cケーブルに加えて、USB-C - Lightningのアダプターが要る。「これはいかにも面倒ではないか? 少なくとも美しいデザインを追求するアップルらしからぬ不細工さ」ということでネットで話題になったのだ。

筆者も、資料だけ読んだ時はそう思った。

しかし、実際に使ってみるとそれほど面倒ではなかった。むしろ、これまでの「本体にブッ挿す」という仕組みの方が奇妙だったような気もする。

USB-Cケーブルに、アダプターを繋ぎ、Apple Pencilを接続する。それだけだ。たしかにアダプターを紛失するリスクはあるかもしれないが、そもそもそれほど充電頻度の高いものではないので、家などにひとつ置いておき、たまに充電しておけば良いような気がする。これで問題ない。

FaceTimeカメラの配置問題

なぜ、こんなことになったかというと、おそらくアップルがFaceTimeカメラを本体長辺の中央に配置しようとしたからだ。ここだと、Apple Pencil(第2世代)の充電マグネットと位置がカブってしまう。

FaceTimeはもともと縦持ち前提だったのだが、昨今、Smart Keyboardに接続したままビデオ会議に出るというような状況が増えてきている。カメラが短辺の横にあると、キーボードを接続して横置きにしている時に斜めから撮影するような事態になる。

ちなみに、試しにカメラが長辺中央にある新しいiPad(第10世代)と(左)、左側短辺中央にあるiPad Air(右)で、それぞれFaceTimeに写ってみた。筆者は普段Macでしかビデオ会議に出ないので、気付いていなかったが、なるほど、これは奇妙だ。常によそ見している人のように見えてしまう。

これを見てみると、アップルが、Apple Pencilの充電よりも、FaceTimeカメラの位置の変更を優先したのもよく分かる。

しかしこれが正しいとなると、今後、iPad AirやiPad Proはどうなるのだろうか?

Smart Keyboardは背面を支える部分と、キーボード部分の2分割になった。キーボードを取り外して、スタンドとしてだけ使って映画を見たりすることもできる。

そのために、スマートコネクターは本体背面から、側面に移動させられた。この変更があるため、iPad ProやiPad Airと本体サイズは似通っているが、Smart Keyboardなどとの互換性はなくなってしまっている。

文教関係の学校への大量導入など、安価なiPadが必要なシーンはまだまだあって、当分の間はiPad(第9世代)も併売されるようだ。子供や不慣れなユーザーのために「とにかく安いiPadが欲しい!」という向きにはiPad(第9世代)が必要だ。

一方、自分が購入するのであれば、価格とパフォーマンスを考えると、M1チップを搭載したiPad Airの魅力に勝てなさそうな気がする。しかし、今後、このLiquid Retinaディスプレイを装備した10.9インチモデルが、iPadシリーズの中核機種になることは間違いない。今のところ円安の関係で、高く見えるのも不利なところ。モデルチェンジを重ねていけば、コストパフォーマンス的にも魅力的なマシンに成長していくはずだ。


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《村上タクタ》
村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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