実業家のイーロン・マスク氏によるTwitter社の買収は、紆余曲折あった後にようやく成立しました。報道陣が集まるTwitter本社の前では、段ボール箱を抱えて「たったいまクビにされたソフトウェアエンジニア」と語る二人組が現れ、Bloomberg や CNBC といった大手メディアの記者達から取材を受ける姿がありました。
しかしこの2人組、実はTwitterに務めた形跡がないイタズラであったことが明らかとなっています。
先週にはTwitter従業員の75%を解雇する計画とのうわさが流れたものの、マスク氏はそんなつもりはないと否定。しかしアグラワルCEOやCFOが退職しており、Twitterの従業員にとっては安心できない状況が続いていた経緯があります。
さて問題の2人の男性は、27日(米現地時間)夜に正式に会社を引き継いだマスク氏に解雇されたと主張。米国では前ぶれなくクビにされすぐに退去するように求められた従業員が、私物をまとめたダンボール箱を抱えて歩く姿は珍しくなく、またTwitter本社の入ったビルの入口から出てきたため、待ち受けていた記者たちは話を聞く気になったようです。
しかし、この2人が記者団に語った内容は不自然と指摘を受けています。まずひとつは、男性の1人が「Rahul Ligma」と名乗ったこと。Twitter は執筆時点でこの件について直接コメントはしていないものの、The Vergeが確認したところ、そのような名前はTwitter社のSlackやメールシステムには存在せず、LinkedInにもその名前の社員がいたという証拠は見つかっていません。
そもそも「Ligma」というキーワード自体が「Lick my ~」という、品のないネタの前フリに使われるスラングであり、ふざけて名乗ったサインの可能性が疑われます。もうひとりの男性は「Daniel Johnson」と名乗っていますが、ジョンソンは一般的な名前であると同時にスラングとして別の意味があり、Ligmaと並べばそのままま文が完成します。
BloombergやCNBCなど複数の米メディアは二人組にインタビューした様子を報道したのち、記事を訂正して「この二人がTwitterの従業員でなかった可能性がある」と但し書きを追記しています。
「Ligma」氏が記者に語った内容は、民主主義の将来を懸念するとしつつ「セレブの後見人問題の今後」とブリトニー・スピアーズの話をしはじめたり、ミシェル・オバマの写真を掲げて「イーロン・マスクがTwitterを所有していればこうはならなかった」、「イーロン・マスクがTwitterのオーナーでなければ、2008年のオバマ(の大統領選の勝利)もなかった」(言い間違い?)など、要領を得ない内容。
この二人組の話題を受けて、マスク氏本人も「Ligma Johnsonは自業自得」と冗談めかしたツイートをしています。